高野台松本クリニックの院長、松本不二生(ふじお)先生が体にまつわるあれこれを書いた松ぼっくり通信。読めばカラダに役立つ、読むサプリです。
無理なくモミモミ、おうちマッサージ
マッサージというと、みなさんはどういうイメージを持つでしょうか?世間的には慰安的なマッサージやクイックマッサージのイメージが強いのではないでしょうか。私もそう思っていて、医者になってからも長い間その思いを払しょくできませんでした。
しかしながら、クリニックでたくさんの患者さんを診つづけているうちに考えが変わってきました。 腰痛や肩こりに限らず、ちょっとした体の痛みの相談のうち、かなりの数が筋肉に原因のある痛みであって、マッサージやストレッチで良くすることができるのを実感したからです。 でもクリニックで治療できる時間は限られますから、やり方を患者さんに覚えてもらって家でやってもらうと大変効果的なのです。
自分でするマッサージをセルフマッサージと呼びますが、力が弱かったり手の関節症があったりでやりづらい人もいます。そこで指の代わりにマッサージ用の道具を使ってみると便利です。使い勝手を見ていきましょう。
1 テニスボール
テニスボールを使った手製マッサージ器。左はテニスボール2個を並べて靴下に入れたもの(ここでは筒状包帯で代用)で、寝転がったまま背中のアチコチに置いて痛いところを指圧します。背骨の両側を同時にできるのが便利です。右はテニスボールをストッキングの先に入れたもの。使い方はこんな感じです。
ストッキングの取っ手を手で持って高さを調整すれば、上から下までマッサージが簡単にできます。足を使って体全体をゆらすように動かせば、ボールがゴロゴロ動いて本格的なマッサージができます。
セルフマッサージのコツはやりすぎないことです。え!これっぽっち?くらいがちょうどいいのです。そのかわりこまめに一日に何回かやることです。その場で効果を期待するのではなく、2、3日たってからちょっといいかな?と思うくらいでいいのです。毎日続ければ効果が積み上がり、すばらしい結果が生まれるかもしれません。
2 マッサージ棒
一見すると妙な形のマッサージ棒。杖の持ち手に似ていますが、実際に使ってみるとこの形が便利です。
三つの取っ手それぞれの形がちがっていて、真ん中あたりを手で握って押します。足裏など厚みのある部分にもシッカリと力をかけることができます。
指の関節に負担をかけることなくしっかりと力をかけることができるすぐれた道具だと言えます。指の痛い人や女性にもおすすめで、プロのセラピストで手を痛めた人はこのタイプのマッサージ棒を使うことを検討してみてはいかがでしょうか。
日用品にもマッサージに役立つものがあります。スクリュードライバーのグリップの部分、傘の取っ手、麺棒やスリコギなどですが、角がやや鋭角で使い方によっては皮膚を痛めるかもしれません。このように家にあるいろいろな道具もマッサージに使えますが、使い方にはこつがいるようです。 最後にだいじなことを一言。痛みを感じるところと、押して痛いところは一緒ではありません。押して痛いところは、自分が痛いと思うところよりやや近位(体の中心に近い場所)に見つかることが多いです。そこが痛みの原因部位なのです。マッサージをするときは押して痛いところに行いましょう。
ねりまインクワイアラー 154 誤った記憶
テレビ番組「料理の鉄人」の名セリフ、「私の記憶が正しければ・・・」は懐かしいですが、人の記憶ほどあやふやなものはないことが最近の研究でわかってきました。記憶とはユーチューブの動画みたいなものではなく、小さな記憶の断片で構成されています。言ってみればレゴのブロックのようなもので、あとから好きな形に脳が積み上げていきます。その時々の状況に合わせて組み立てるから、出来上がりも異なります。ですから、みなさん、「言った!」「言わなかった!」の口争いはやめましょう。自分が本気で正しいと思っていても、そもそも記憶は不確かなのですから。
医療のすきま
お医者さんの専門は内科、外科、小児科、産婦人科などに分かれていますが、最近ではさらに細かく分かれて聞きなれない専門がどんどんできてきました。医療がどんどん精密になり、一人のお医者さんがすべてをカバーしきれなくなったためですが、それがいいこともあればこれは?と思うこともあります。今回は若かったころの経験をもとに少しだけお話ししましょう。
1 もとは全部一つだった
朝9時から夜6時まで昼休みを除き、びっちり授業。これが基本で、実験や実習があれば完了するまでなので、夜8時過ぎまでかかることも。夏休み冬休みは小学生なみ。それも補習や追試で削られます。解剖実習の追い込み時は徹夜する猛者もいました。これが6年間続くのが当時の医学生の生活で、今はもっときつくなっているはずです。とにかく覚えることが多いのが医学部の特徴です。知識はどんどん増えるのに、人間の能力は以前のままです。むかしは一人のドクターがあらゆる病気を診ていたのが、今の高い医療水準をたもつためには分担が必要になってきたのです。
2 話を聴く
いまとちがって研修医はほぼ無給、そのため夜間救急のバイト代で暮らしていました。診療技術はおぼつかなく、できる検査も限られひやひやの毎日で、腹痛や胸の痛みを訴える患者さんが来ると大変、あわてて当直室で医学書のページをめくります。
そんな中でひとつ学んだことがありました。よく聴くと患者さんの話にヒントが隠れているのです。だから外来では話を注意深く聴くことを心がけました。
ある日背中の痛みを繰り返し訴える年配の女性の話を聴いているとき、身動きに関係なく痛みが出ることに気がつきました。内科に相談するも戻され、また相談しては戻され…最後に膵臓の病気が見つかりました。
腰下肢痛で診るもじつは大動脈瘤、股関節痛の原因が特殊な腸ヘルニアだったなど、問診・触診で運よく診断できた経験が続いたので、しだいに診断学にのめりこむようになりました。なかでも痛みを扱うぶ厚い医学書に出会ったことが大きな転機となりました。
3 びっくりの経験
外科医のトレーニングや研究とは別に、触診や手を使う診断治療を扱う本を少しづつ読み始めました。そこには一般の医学書とはちょっとちがう世界が広がっていて、ほんとにこんなことがあるのかな?と思うような経験例が多数書かれていて、半信半疑ながら興味をもって読み込んでいきました。
そんなある日、大学病院の外来に内科入院中の患者さんが廻ってきて、たまたま私が診ることになりました。右のわき腹痛で半年の間入院している方でしたが、当時考えられる検査をすべて行っても痛みの原因が突き止められませんでした。そこでほとんど期待せずにまあ整形外科にも診させておこうということになったようです。
よくわからないがとにかく触診が大事!と思った私が胸のある場所を軽く押すと、患者さんが「痛い」と言います。そこでもう一回押したとたん、ぼこん!と衝撃がして患者さんが「ぎゃ!」と叫びました・・・意図せずに行ったこの一押しで患者さんの痛みは全快し、内科のドクターも私もよくわからないまま患者さんは無事退院しました。
4 医療のすきま
これは決定的な出来事で、難しい手術をこなす有名なドクターになるという野心がなくもなかったのが、地味にこつこつ患者さんを診る今のスタイルを求めていくきっかけとなりました。テレビドラマに出るようなすごい病気やけがを扱う世界は(それほど劇的ではないにせよ)実際に存在します。しかし、一般の外来では、有名な病気と病気のはざまに名前もつかない小さな故障があって、意外な症状が現れることも知ってもらいたいのです。
そして小さな故障は小さいだけにみつけにくいです。命にかかわる故障ではありませんが、症状から深刻な病気と見誤ることがあります。とくに痛みの診たてには小さな故障が混じっていて、診断が混乱しがちです。こういう小さな故障は医師の専門の中心ではなく隅っこのほうにありますから、どうしても注目されにくく、ときに忘れられがちです。たとえば整形外科では骨折、スポーツ医学、骨粗しょう症や骨腫瘍は専門の中心ですが、病名のつきづらい腰痛や肩こりははじっこのほうと言えるでしょう。顎関節痛にいたってはどの科のお医者さんも専門と思っていない節があります。同じことが医療のすきまのあちこちで起きているかもしれません。すきまの診療はたいへん地味なのですが、やってみると結構おもしろく、それなりに技量も必要です。もっと多くのドクターに関心を持ってもらいたい。そう願っています。
ねりまインクワイアラー 153 ねりまちてくてくサプリ
スマートフォンにいれるアプリの一つです。スマホを持ち歩くだけで一日の歩数をカウントしてカレンダーにのせてくれます。キャンペーンを行っている期間、目標歩数に達すると賞品をもらえるみたいなので、今度やってみようと思います。ちょっとウォーキングでもしようと思っている方は試してみるといいですよ。
力を抜く
数十年ぶりの強さの台風で家にこもっているので、ちょっとむずかしいことを書いてみましょう。表題のように余計な力を抜くことはとても大事です。うまく力が抜けているだけで痛みが消えてしまうこともあり、そもそも体が故障しにくいのです。でも、力を抜くということはほんとうに難しい。私の体験談を交えてお話しします。
1 「力をぬく」ことは脱力ではない。
脱力発作という特殊なてんかんでは崩れ落ちるように倒れてしまうのですが、普通の人はここまで脱力することはできません。神経系には姿勢や動作をコントロールしている無数のシステムが働いています。車を運転する人はハンドルとアクセル・ブレーキだけ意識していても、現在のコンピューター化した車では複雑な制御が行われているのと同じです。すなわち「力を抜く」とは、なめらかにハンドルを回し、絶妙のタイミングでアクセル・ブレーキを踏むことと考えるとわかりやすいと思います。最高の動きをするためには不必要な筋肉の緊張を取り去るが、なおかつスムーズに力を抜いたり入れたりすることが「力を抜く」意味だと考えてください。
2 技を磨くということ
私の経験をお話しします。あるとき何気なくネットを見ていると、一輪車のブログを見つけました。50歳を超えると一輪車に乗れないと書いてあったので、「?」と思ってさらに調べると70歳で乗れるようになった人もいることがわかりました。
それならということで一輪車を購入したのですが、いざやってみるとサドルにまたがるのも大変で、手すりに両手で必死につかまり、なんとかペダルに足をかけたものの前後左右にぐらぐら動いて手を放すどころではありませんでした。そんな状態から始めて雨の日も風の日も手すり磨きをつづけたある日のことです。手を放してペダルを回すことがほんの2,3メートルだけどできました!そこからだんだんと距離が延び、電柱一本ぐらいの距離は走れるようになったものの、今度は息が上がって続きません。疲れてそれ以上は進めませんでした。
そんなある日、ふっと体が軽くなる感じがして、息が上がらずに50メートルくらい走れました。そこからは順調、長い距離も平気、楽に曲がり、坂を上り下り、軽くジャンプもできるようになったのです。ここまで来てやっとわかったのは、それまではがちがちに力が入っていて、ずっと息をつめた状態だったのですね。最初からリラックスしていればもっと早くから乗れたのに…と思いましたが、あとの祭り。いきなり力を抜くことはできないようです。
最近のことです。競歩を数年前から続けて最低限の動きはできるようになったものの、速く歩くと息が上がって続きません。ある日、ユーチューブを見ていたら競歩しながら笑ったり話をしている人がいるぞ!と気付きました。そんなことができるのなら、もっと楽をしてもいいんじゃないか!そう思ったのです。じゃあタコのようにやわらかくなって、お尻をフリフリ歩いてやろう。思いっきりくねくね変な格好で歩いてみました。あれ?この感じ、これなら長く歩けそう。街のウインドウに映る姿は意外にも悪くない。競歩っぽい。この感じがわかって、かなり歩くのが楽になってきました。
3 力を抜くじゃまをするものと対策
自分の経験、スポーツ医学やボディワークの知識から力を抜くさまたげになることをあげてみました。
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からだができていない 一輪車になかなか乗れなかったのは、体幹の筋力が弱かったことが一番の理由です。私たちの筋力はごく普通の生活をしているだけで落ちていき、とくに体幹の衰えは著しいです。年をとったら筋トレは必要です。
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早く結果を出そうとする はじめから速く歩こうとしたのがいけませんでした。じっくり歩型を身につけるよう教わったのに、忍耐心がなさすぎです。こういった余裕のなさも力みの原因になります。またそれぞれのスポーツで筋肉の使い方もちがいます。筋力だけでなく神経系を慣らしていく練習が必要です。
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姿勢メーターの目盛りが狂う 一輪車・競歩ともに姿勢はまっすぐがいいのに、実際は背中が反り気味になっていたようです。からだを積極的に動かさなくなると、位置感覚の目盛りが少しづつ狂ってきます。まっすぐ立っているつもりでねこぜやそり腰になっている人は珍しくありません。鏡やビデオを利用して修正しましょう。
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人の目が気になる 気にしないようでも気になっているものです。対策としては、まずあまり人気のないところで練習し、上手にできるようになったら人の目に触れて場数をこなすといったところでしょうか。競歩の場合、ランニングマシン上で目をつぶると歩きに集中できました。ほかの競技でも基礎トレやシャドウ・トレーニングのときに応用できそうです。
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思い込みを消す なんとなくこうあるべきだと決めつけていることがあるはずです。ためしに真逆のことをやってみるのも手です。競歩でもがんばって歩くという思い込みを消すことが必要だったのです。
ねりまインクワイアラー 152 マッサージ棒を使おう
自分でするマッサージはおすすめなのですが力が弱かったり、指の関節痛があったりで難しい人もいます。そんなとき、スクリュードライバーの頭、かさのとって、すりこぎなどつかみやすく先が丸くなったものを使ってマッサージするといい感じです。自分でやるから痛みの加減ができて安全です。もう少しいいものが欲しいと思ったら、市販のマッサージ棒を使ってみましょう。ネットで検索するとたくさんみつかります。
ヒトのトリセツ
いろいろな道具や機械を買うと、取扱説明書がついてきます。書かれたとおりに使えば壊れにくく、長持ちするのですからだいじな情報です。私たちのカラダにもトリセツがあったら、どんなふうなのかな?とチャレンジしてみました。
ヒト(ホモ・サピエンス)現行型 取扱説明書
このたびは当社の製品をご購入いただきありがとうございました。末永くご愛用頂けるように、以下、使用上の注意点をお守りください。
1 毎日の使用が必要です
本製品は毎日の使用を前提として設計されています。使用せずに放置しておくと各部に廻る血流量が減少し、老廃物が蓄積されがちです。むくみ・関節のこわばり・腰痛・肩こり・便秘などさまざまな不調の原因になりますので、手足のすみ
ずみまで一日に何回か動かすことをおすすめします。
2 週に数回しっかりと動かしましょう
本製品には自動調整機能が内蔵されています。使用率が比較的少なく、低い負荷で使い続けた場合、自動調整機能により心臓・血管・筋肉・じん帯そのほか動作に関わる組織が弱くなり、強めの運動や緊急の際に故障することがあります。毎日の使用とは別に、週に数回やや強めに体を動かす時間を作りましょう。
3 長時間の連続運転は×
本製品には自動回復機構が組み込まれており、これを十分に活用することで、長期にわたるメンテナンスフリーを可能にしています。回復メカニズムはおもに夜間に働きますから、一日7・8時間程度睡眠をとる必要があります。やむを得ず連続使用した場合は、十分な休養・回復期間を置くことをお勧めします。
4 集中制御装置(脳)について
本製品はスーパー・コンピューター・システム(脳)を搭載しています。脳の機能維持のため、からだの各部分と同様上記1~3の項目をお守りください。また経年変化を受けやすい部分ですので、強い負荷や連続運転はできるだけ避けることをお勧めします。
5 燃料について
本製品はさまざまなエネルギーに対応しています。ほぼ地球上のすべての地域でエネルギー供給が可能となっています。エネルギーとなる生物資源(動植物)の詳細については各地のユーザー情報を参考にしてください。またオーダーメード製品ですので、最適の燃料構成にはばらつきがあることをご承知ください。
6 毎日のお手入れ法
・適度に汗をかくことは肌の保湿・バリア形成に重要です。適度な運動をお勧めします。
・運動は腸の機能に重要です。腸の機能維持のためにも毎日運動してください。
・皮膚にビタミンD合成機能を搭載しています。毎日20~30分の日光浴が必要です。骨・免疫・脳機能維持のためこまめに太陽に当ててください。
7 故障かと思ったら
・何らかの不調が見つかった場合、上記1~3の手順を繰り返してください。それでも改善しない場合はサービスショップにご連絡ください。
・ときどきコンピューター(脳)のオーバーホールを行ってください。通常運転をいったん休止し、デバグやファイルの管理、不必要なプログラムの整理を行ってください。友人とのチャット、旅行、新しい冒険、お笑いなどのリカバリープログラムを実行してください。
ゴッド&ネイチャー・コーポレーション
ねりまインクワイアラー 151 キャッシュレス社会
現金(キャッシュ)を持たないで暮らしができる?そんな生活が現実味を帯びてきました。最近JRが発行するSUICAカードをスマホに移し替えて、モバイルSUICAを使い始めました。駅の売店や自販機でスマホを機械にあてるとあら不思議!お金を払わなくても物が買えます。いや、正確にいうとお金を払っているのですが、すべてが電子世界の中で取引されて、最終的に銀行の預金口座から差し引かれるのです。
ICカードやスマホを持ち歩けば都市近郊なら現金なしでも生活できます。でも田舎では?小さな街のお店では?スマホの電池が切れたらどうする?停電したら?まだまだ問題点は多く、お金の出番はそう簡単には消えないでしょう。それと電子マネーの会社がどうやって利益を出しているのか不思議です。クレジットカードの場合、加盟店から手数料をとっていますが、現在盛んに宣伝しているペイペイ、LINEペイは今のところ手数料をとっていません。顧客獲得競争を勝ち抜けばいろいろな商売のタネがみつかりそうですが、それまでは体力勝負の消耗戦が続きそうです。
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筋肉のことをもっと知ろう
35年前、医者になりたてのころと比べると、一番ちがうのは筋肉の見方が変わったことです。筋肉と言えば肉離れや打ち身ぐらいしか思いつかなかったのが、今では体中の痛みやしびれの原因を探るときに筋肉の故障を調べるのが必須だと考えています。今回は筋肉のお話です。
1 肩こりや筋肉痛は医学部で教えない
日本だけでなく世界の医学書を調べても、肩こりや筋肉痛を細かく書いている本はありません。医学がダイナミックに役立つようになったのはほんの最近で、これまでの専門書は「いかに命を助けるか」について書かれていました。栄養状態が改善し、病気で亡くなる人が減って長生きが当たり前になった現在では、「死ぬようなことはないが、なってみると不快でつらいからだの故障」が増えてきました。その一つが筋肉に原因があって起きる様々な不調(痛み・しびれ・まひなど)で、よくある症状なのですが、本人も筋肉が原因とは思わず、診断でも見誤りやすいものです。
運動不足の人が急に体をいっぱい使うと「筋肉痛」になりますが、ここで言う筋肉の故障は別物です。きつい運動や打ち身などの外傷をきっかけとして起きることもありますが、多くの場合、仕事で行う繰り返しの作業、日常生活で行っているしぐさやくせ、疲労の蓄積や睡眠時間の不足、栄養のアンバランスなどが合わさって故障します。まれに自分で触って痛い筋肉を見つける人がいますが、ほとんどの人はさわって痛む場所を自覚せず、神経痛や関節痛、ときには内臓の病気と誤解されていることもしばしばです。
2 さわらないかぎりわからない
ほかの病気と見誤りやすい最大の理由が「さわらないとわからない」ことです。MRIという診断装置が現れたとき、何日もかけて検査をしていたことがわずか数十分でわかるようになってショックを受けました。しかし、筋肉のどこかにまわりよりも固いこわばりがあり、押すと痛む場所があることを明示してくれる装置は残念ながら今でも存在しません。
また、患者さんが痛いと自覚している部位の直下に原因となる筋肉があることはまれで、少し離れたところにみつかることが多いのです。筋肉の端には起始停止という2か所の付着部があって、ここに痛みを感じることが多い一方、故障そのものは筋腹(筋の真ん中)に多いのが一つの説明です。さらに全身にはりつめられた神経の仕組みによって遠く離れたところに痛みを感じることがあります。こういったわかりづらさがあり、一見するとなんだか適当に説明をつけているようだし、画像診断のようにはっきりわかる証拠(データ)もなく、「押して痛いから、ここが原因」と言われても…ちょっと納得しずらいかな?と思う気持ちはよくわかります。
3 例を挙げると…
手首が痛いという相談では前腕筋の故障が理由のことがとても多いです。五十肩の大半は腱板という肩口の筋群に故障がありますが、患者さんが自分でもんだりシップを張っている部位はほぼ「はずして」いることが多いですね。
腰痛は一つの病気ではなく、脊椎やその周りにあるたくさんの付属構造物に「何かが起きている」ときに感じる症状です。筋肉はその原因の一つなのですが、痛みの原因部位(筋)と自覚症状の部位(腰痛)がけっこう離れていることが多いです。何年も痛いという相談でも、実態は「筋肉の故障」だったことはめずらしくはありません。
股関節痛、膝の痛み、下腿・足の痛み、坐骨神経痛。こういった相談でも筋肉の故障が隠れていることがあります。骨や関節の故障に付随して起きていたり、単独でおきていることもあります。ながらく神経痛、関節痛だと思っていたらじつは筋肉が原因と言われてびっくり!ということがあります。その反対もありますから、レントゲンなどの検査と触診などの診察を組み合わせて診ることがとても大切です。
4 セイケイゲカはバックカントリー
バックカントリーとは整備されていない自然状態の野山のことです。都会を離れて観光地に行くと「やっぱり自然はいいなあ!」と思ったりしますが、ほんとうの自然は過酷で何が起きるかわかりません。道もなく、毒虫も蛇もいます。ルールがないのであらゆることを想定して準備しなければ、入ることが危険です。
整形外科医として長年過ごしてみると、循環器科、消化器科のような内科系の診断学は整然としてきれいに見えます。先人たちの努力があってそこまで来たことはわかっていますが、それに比べると整形外科の世界はワイルドです。ホネ、カンセツ、シンケイ、キンニクそのほかなんでもあり!道はありますが、舗装路以外に農道・林道、それどころかシングルトラックの山道があり、けものみちと間違えそうなところもあります。整然とした都会の町並みは美しく見えますが、私としては山道に入ると楽しいのです。何でもありだから、役に立つことなら何でも試してみる。危ないと思ったら、引き返す。崖から落ちたりせず、道迷いもせずになんとかゴール(山の頂上)に着いたらきっと楽しいはず。そう思って仕事をしています。
ねりまインクワイアラー 150 水耕栽培ビジネス
土を使わず、循環水を用いて根から栄養素を吸収させる水耕栽培。未来型の農業ビジネスとしてブームになりましたが、なかなか利益が出ませんでした。ブレークスルーとなったのは、なんとLED!。LEDは明るいうえに熱があまり出ないので、建物内で多段式に栽培できるようになりました。また、できた野菜の品質が安定しており、病害虫がつかず、衛生的で安全性が高いのが特徴です。コンビニやスーパーで売られるお弁当やサンドイッチに最適です。食べてみるとみずみずしく柔らかい。値段がもうちょっと安くなれば最高です。