受験生に肩こり対策!
気持ちはあせるが、手につかない。やることはいっぱいあるのに時間が足りない。睡眠時間を削って勉強しているのになかなか覚えられない。受験のときはたいへんです。この季節になると、首や肩のこりを訴えて受験生の皆さんがクリニックを訪れます。今回はくび肩を中心にお家でできるセルフケア対策をお教えしましょう。
1 どうして肩がこるのか?
体じゅうの筋肉には血管がつながっていて、血液から栄養と酸素をもらったり、老廃物を洗い流してもらっています。筋肉に力が入っているときは血液の流れが止まりますが、力を抜くと筋肉がゆるみ血液が流れます。筋肉が疲れをためずに元気でいるためには、筋肉に力が入ったり抜けたりすればいいのです。だから歩いたり走ったりのようにリズミカルに体を動かす運動はなかなか疲れにくく、筋肉のこりもおきづらいと言えます。
ところが、じっとしているときはこういった筋肉の動きがなくなるので、力の入った筋肉にはどんどん老廃物がたまり、栄養や酸素が足りなくなります。みなさんが机の前にすわって勉強をしているときが、ちょうどそんな感じになっています。
もうひとつ姿勢の問題もあります。頭からおしりまでの背骨を真横から眺めると全体がS字状にたわんでいて、頭の重みをクッションのように受け止めるようにできています。あたまが体の真上に来るように座ることができれば、くび、背中、腰の筋肉に負担をかけずに背骨だけで頭の重みを受け止めることができるのです。机の上で勉強しているとき、どうしても前かがみになり、頭の位置が体より前方に来てしまうと、骨だけで頭の重みを支えきれず、くびや背中の筋肉に過度な力が入り続けるため張ってきます。つまり姿勢が崩れることでより「こり」を感じやすくなるのです。
2 とりあえず、こりを感じたら
勉強に集中していると、何時間も同じ姿勢を続けるために、くびや背中がこったり痛くなります。頭が痛くなることもあり、ほとんどはくびの筋肉のこりが原因になっています。こんなときのためにテニスボールを二つ用意しておきます。二つとも靴下の中に入れて入り口を縛ります(図①)。あおむけに寝て、コリが強くて押すと痛いところにテニスボールを当てたまま力を抜き、数分待つと痛みが軽くなってきます。少しづつ場所をずらし、痛むところをどんどんと治していきます。くびの場合は図②のように頭と首の境い目あたり、背中では図③のようにせぼねの両脇にボールが当たるようにすると効果的です。
くびや肩がこる場合、せなか側だけでなく、くびの前よこ、胸や肩回りの筋肉もこっていることがあるので、とりあえず押すと痛みがある場所をみつけたら、マッサージをするとよいでしょう。自分でやるマッサージは気持ちいいかちょっと痛いくらいでやってください。ただし、血管の拍動を触れるところやびりっと響くところはさけましょう。
自分でマッサージをしてみると(こんなのでいいの?)と感じるかもしれませんが、いつでもどこでもできるのが自己マッサージの強みです。勉強の合間にまめにマッサージするだけでもけっこう楽になってくるはずです。
3 こらないカラダになる
姿勢はたしかに大事なものの、どんなに良い姿勢でいても長く座り続ければ体のあちこちがこってくるのはさけられません。小さな子供たちはじっとしているのが苦手ですが、おとなだってからだをこまめに動かしたほうが楽です。歩きながらできる勉強法~たとえば英語のヒアリングや単語の暗記など~をとり入れたり、まとめたノートを見返すときは寝転がってやるなど、からだを動かしながらできる方法を見つけるとよいでしょう。
こらないカラダになるためにだいじなのは睡眠です。徹夜の効果がほとんどないことは証明されていますから、いくら時間が押していても睡眠時間をできるだけ確保しましょう。ぐっすりと寝ているとき、こり固まった体中の筋肉がほぐれます。だから睡眠を削ると、こりにもよくありません。
また細かいことをたくさん覚えるためには、一気に長い時間集中してやるよりも、間をおいて少量づつ繰り返し練習する分散学習法が優れていることがわかっています。頭が疲れたときは、軽い体操をしたり、ちょっとだけ散歩をしましょう。からだもアタマもリフレッシュするはずです。
4 試験の後は
結果が良くても悪くても頭を切り替えることです。受験は長丁場です。体力の回復のため、甘いものをとり、お風呂に入って体を温めましょう。スマホやパソコンは眠る時間の2・3時間前から使わないほうがぐっすり眠れます。眠る前は軽い復習をするのもよし、マンガや本で頭をほぐすのもいいでしょう。
ねりまインクワイアラー 142 これから求められるもの
アメリカのラストベルト(昔の工業地帯)では人手不足が目立つ一方、仕事が見つからない人が多いという雇用のミスマッチが起きています。今後世の中で求められる人材は、言われたことを行うのではなく、「なぜ?どのように?」と自分で問いを立て、ネットの情報を判別し、じょうずに使いこなせる人たちになるのでしょう。
けがを振り返って
私事ですが入院中にこれを書いています。ジョギング中に突然かかとに衝撃が走って歩けなくなり、骨折の診断で手術を受けたところです。治療として何をどんな理由でやるのかはわかっていますから、落ち着いていられると思ったら大間違い!するのとされるのでは全く違いますね。クリニックに来院された患者さんにはご迷惑をおかけします。入院中に思ったことを書いてみました。
1 なぜけがをしたのか
3年ほど前から右のアキレス腱の痛みがあり、走ったり走れなかったりという時期が続いていました。最近少し良くなってきたのでハイキングに出かけたり、ウォーキングの距離を伸ばしたり、短い距離のジョギングを繰り返したりで、秋のマラソン大会に備えていたのですが・・・後悔先に立たずとなってしまいました。自分ではやりすぎとは思っていなかったのですが、やはり自分のことを客観的に見ることは難しかったのでしょう。
反省すべき点は①年齢による影響を考えなかった。以前と同じことをしているのだから、それほどやり方を変えなくていいと漫然と考えていた②もう少し身体の状態をこまめにチェックすべきだった。自分には判断が甘くなったのかもしれません③どこかで「自分はだいじょうぶ」と思っていたふしがあります。
こうやって一つづつ挙げてみると、私が患者さんにふだんお話していることばかりでまったく恥ずかしいかぎりです。さて、これからどうするかというと、あきらめずにリハビリを続けて来年にはウォーキングあたりから再デビューを狙いたいです。ちょっとサイクリングもやってみようかな!
2 はじめて手術を受けました
整形外科医として人さまの身体にメスを入れ、麻酔のトレーニングも受けていたのに、やはりはじめての経験は不安でいっぱいでした。全身麻酔で患者さんが亡くなる確率は10万件に1件以下で、飛行機に乗って亡くなる確率より低いのは知っていましたが、いざ自分が受けるとなると(麻酔から覚めなかったらどうしよう?!)と心配になりました。浴衣のような青い上っぱりの下にオムツをつけさせられ、ガタゴト揺れるストレッチャーに身を横たえ、無影灯に照らされながら看護婦さんやドクターに上から覗かれます。マスクを被らされて深呼吸をするように言われ……気がついたら病室に戻るストレッチャーの上にいました。眠いねむい、何もする気がしない。病室に戻り2、3時間すると意識ははっきりしてきましたが、マスクをしている喉は乾くし、血圧計や心電図モニター、酸素分圧計、点滴台で寝返りもできません。ナースさんが来て必要なくなった装置を外してくれるまでの時間の長かったことと言ったら!
今まで治療する側で冷静に患者さんに手術の説明をしたり、外来で手術を受けた患者さんの話を聞いていいましたが、自分が受けるのは全く別の経験だと言い切れます。医療をする側から見れば何気ない身振りやことば使いが患者さんに影響を与えることも実感できました。またやりたいとは思えませんが、ほんとうに貴重な体験でした。
3 疲労骨折のこと
今回の骨折は実は疲労骨折です。前からちょっと痛かったけれど、走れるから走っていたのです。ちょっとつまずきかけて足を強めについただけで折れたのですが、疲労骨折とはこういうものです。先日実業団の駅伝大会で下腿の激痛で走れなくなり300メートルを膝をついて進みたすきをつないだ選手の話がニュースになりました。この選手もレースの直前までしっかり走れていたのに、本番のレースで骨折を起こしたのです。疲労骨折とはこんなものなのです。
外来で診る患者さんの中にも疲労骨折を疑わせる症状の人は意外に多いです。明らかにスポーツのやり過ぎ(中高の部活生や私のように)のケース以外にも、一見まったく普通に暮らしているのに疲労骨折っぽい症状が出てくるケースがあります。普段やらない運動を始めた、職場が変わり長く歩くようになった、引っ越しして坂道の上下が増えたくらいでもなる人はなります。普段の生活スタイルが大きく変わった時、股関節〜足のどこかが痛くなってきたら疲労骨折の可能性があります。
4 疲労骨折の治療
手術をするのは例外中の例外で、ほとんどは原因になった運動を休止すれば治ります。ですが仕事や住居を変えるわけにはいかないので、無理のかかる作業を減らしたり、衝撃の少ない履物を使い歩き方を工夫することも必要です。スポーツが原因の場合、患部に負担のかからないトレーニングをすることは可能です。そうやって体力を維持しながらつらい時期を乗り越えていくのです。今の私の課題がこれです。
しかしながら治るのに時間がかかるのも事実です。軽くて1,2か月、長ければ半年以上かかります。その間、患者さんは(こんな調子で大丈夫なのかな?)(ほんとうに治るのかな)と不安でいっぱいなはずです。こんな時に「だいじょうぶだよ」と言ってあげられるように、もっと診察技術を上げていかなければいけないことを痛感しています。
ねりまインクワイアラー 141 ビル上の灯り
夜景を眺めると、煙突やビルの上にチカチカした明かりが見えます。これが航空障害灯で飛行機に危険を知らせるため設置されています。60mを超えると赤色、150m超えると白色ですが、高層ビルは四隅に赤色をつけるそうです。
心のわくを組みなおす
長いこと患者さんを診ていると、からだの故障そのものより、その人の故障に対する受け止め方・感じ方が気になることがあります。打ち身やすり傷なら短期間で治りますが、年がいってからの故障は治りがゆっくりで、気長に付き合わなければならないことも多いです。同じものを見ていても、心に写る風景が同じとは限りません。よい風景が見えれば自ずとやる気もわいてきます。今回は考え方を扱います。
1 年齢と正直に向き合う
若いときは体のことを気にしないし、少々の無理をしてもなんとかなるものですが、30・40代になるとどこかが痛くなったり不調を感じてくる人も多いようです。私自身も40代初めに体調を崩したときに、これを実感しました。でも、考えてみればいつまでも若い人はいないので、「今までこんなことはなかった」のは当たり前です。毎年毎年が人生で初めての経験なんですから。これを「あーあ私も年をとったんだ…」と考えて終わるより、「ここからはからだの手入れをしっかりしよう!」ととらえられれば、人生の大きな転機になります。むしろ早いうちに調子を崩したほうが、早いうちから体の手入れができるととらえましょう。
ではよりご高齢の方はどうでしょうか?いくつになってもからだの手入れをすると、はっきりと効果があることがわかっています。年のせいと決めつけず、いくつになってもからだに気を配ることです。
2 運動できないと決めつけない
手入れをするとは、運動、ストレッチのほか、食事・睡眠・アルコールやたばこの管理など生活全般を見直すことを指します。細かいことは省きますが、だいじなのは時間管理です。とくに体を動かす時間をどうやって捻出するかでしょう。「忙しくてそんな時間は取れない」とよく聞きますが、本当にまったく時間が取れないのか胸に手を当てて聞いてみましょう。
少し早めに出て駅一個分歩くことはできないのでしょうか。会社内で階段を使うのは?休日に運動する時間はとれますか?早朝や帰宅後に10~20分あればストレッチや筋トレができます。お付き合いのパーティーや飲み会はほんとうに必要なのか、かわりにからだを動かしたほうがすっきりするのでは?と考えてみましょう。 子供が小さくて手がかかるから運動できない人は、夫婦で替わりばんこに30分ずつ運動する時間をとれないでしょうか?あるいは、家族で遠くの公園まで散歩するのはどうでしょうか。
お酒や甘いものでストレス解消するのもありですが、それで体調を崩してしまったら問題です。運動のストレス解消効果はバツグンですから、ぜひ試してみましょう。誰にとってもふだんやらないことをやるには勇気が必要で、はじめの一歩はなかなか出ないものです。はじめの一歩、そして2週間はがんばってみます。そうすれば後は楽に続けていくことができるでしょう。
3 自分ができることをみつける
けがや病気にかかった直後は、それ以上のダメージをおこさないように、また治癒力が十分にはたらくように安静にすることが必要です。少し良くなってきたら、今度は体のこわばりをとり、血液のうっ滞やむくみの改善のためにからだを動かすことが必要です。安静にしているあいだに弱くなってしまった筋肉を鍛えたり、固くなった関節をほぐすために運動が大事なのですが、動かすと痛むのもよくあることです。治してもらおうと思って病院に来たはずなのに、かえって痛いことをする!と感じるかもしれませんが、からだをすみずみまで自由に楽に動かせるようになるため、やることはやるしかありません。
病気、交通事故、労災事故やスポーツの事故など、故障するいきさつは様々です。事故の場合、心にわだかまりを抱える人がいますが、事情に関わらずリハビリでするべきことは同じです。縮まった筋肉をほぐし、固まった関節をやわらかくするために、患者さん自身が本気で参加してリハビリを乗り越えていくことが必要です。そうしないと時間がもったいないです。誰にとっても一生は一度限り、早く治る努力をおしまないことです。
4 フォーエバー・ヤング
ボストンマラソンで優勝を含む幾多の好勝負を繰り広げた伝説のランナー、ジョニー・ケリーは23歳から84歳まで計61回ボストンマラソンを完走しました。「フォーエバー・ヤング」は彼をたたえて作られた銅像で、27歳と84歳のケリーが手をつなぎながらゴールを切る姿をかたどっています。からだは年老いても心は若いことを、これほどよく表したものはないでしょう。
絶対的な体力は年齢とともに低下し、様々な故障や不調に見舞われるのはさけられません。「花も嵐も踏み越えて」と歌われたように、人生の試練にめげず毎日をきちんと生きて、振り返ればこんなところまで登ってきた、よくここまでがんばったと自分自身でほめられるような生き方をしたいものです。それがヤング・アット・ハート(心の若さ)であり、だれでもその気になりさえすれば得られるものだと思っています。
ねりまインクワイアラー 140 IPad(アイパッド)くび
IPadなどのタブレット端末を使ってくびを痛める人が増えています。なりやすい人は①女性②ひざにタブレットを置いて使う人だそうです。頭の重さは5キロぐらい、前こごみ姿勢で長時間使えば頭を支えるくびにかなりの負担がかかるからです。腕は疲れるけれど、タブレットを目の高さに上げて使うことがおすすめです。
ウォーカーになろう!
8月に栃木県で行われたウォーキング大会に参加してきました。荒川の源流域をふくむ40キロ強を9時間以内に歩きます。数キロごとにエイドステーションがあって、冷やしたあま酒、冷たいトマトやスイカ、おにぎり、ピザ、ぜんざい、里芋のコロッケ、牛ステーキ、かき氷やジュースをいただきました。道は舗装路が大部分ですが、一部林道や山道もありました。清冽な川の流れを眺め、湧水で冷やっとした水を飲み、ゴールした後は心地よい疲れを感じながら帰りました。ウォーキングにはランニングとはちがった楽しみがあります。今回は、ウォーキングのお話です。
1 ウォーキングは楽しい!
運動と言えば、ランニングのほうがやったぞ感がありますが、まわりの風景を眺め、風やにおいを感じ、ときには立ち止まって花や雲を眺めたり、ウォーキングのほうが楽しいと感じる時も多いです。ランニングだとついつい競争してしまいますが、ウォーキングでは自然に溶け込んで、よりゆったりと過ごせる気がします。
電車を使って移動する場合、駅前は見ても、駅から離れたところがどうなっているかは気が付きにくいでしょう。少し遠いと思っても、普段電車を使うところを代わりに歩いてみる。古い神社やお寺、昔のお地蔵さんや道祖神など、歩かなければ気が付かない景色を楽しむことができます。おいしそうな店があれば立ち寄るのもオーケー、スケジュールは自分で決めるので、どんどん変えていけばいい。飽きればバスや電車で帰ってもいいのです。
ウォーキングの大会もおもしろいです。年配の人だけでなく、若い人や子供たちもたくさん参加します。制限時間はありますが、日ごろから歩きなれている人ならば完歩できるはずです。コンビニや自販機も使えますから、軽めのリュックに着替えや傘を入れておけば準備完了です。Tシャツやタオルなどを参加賞で渡されることが多いし、地元の名産品をお土産にして帰ることもできます。
ウォーキングでは物足りないという人は、ウルトラウォークはいかがでしょうか。100キロ以上の距離を歩く大会が全国各地で開催されています。これを完歩するにはかなりのトレーニングが必要です。もっと突っ込んでみるなら競歩にチャレンジしてみては?ランニングが全身の筋肉の70%を使うのに対し、競歩では97%を使うと言われています。はっきりした歩き方の規則があるので、初めての人は失格しないでゴールするだけでも大変です。トレーニングを積んだ人なら、走りとさほど変わらないスピードで歩くことだってできるのです。
2 ウォーキングのコツ
難しいことを考えず、のんびりと歩き、心とからだをときほぐす。これでいいのですが、慣れてきたら少し刺激を入れるのもいいでしょう。電柱1,2本ぶんを大股で腕を大きく振って歩きましょう。さらに慣れてきたら、3分間ゆっくり歩き、3分間できるだけ速く歩くのを繰り返すインターバル速歩に挑戦してみましょう。筋肉や心臓によく効き、老化防止に役立ちます。
かかとから着地し、親指に体重が抜けるように歩きます。姿勢はまっすぐが基本ですが、年齢によるせぼねの変化がある場合、すこし前かがみのほうが歩きやすいかもしれません。肘を曲げ、軽く手を握り、肩はリラックスしたまま振り子のように腕を振ります。両腕を振る方向は、胸の真正面30センチぐらいにこぶしが来るようにします。スピードを上げるときは、両腕を速く大きく振ることを意識するとよいでしょう。
3 安全性は?
ウォーキングはとても安全なスポーツですが、転べばけがをしますし、肉ばなれをおこすこともあります。とくに動き始めは関節や筋肉が固くなっていますから、必ず準備運動をしましょう。先日のウォーキング大会ではラジオ体操が準備運動でした。子供のころより体が硬くなったせいかもしれませんが、けっこういい運動になりました。真冬の風の強い日にジョギング中、突然バタンと転んだことがありますが、あまりの寒さで体が冷えて足が上がらなくなったせいでした。気温が低いときは、からだが温まるぐらい運動してから歩き始めたほうが故障も起きにくいです。アキレス腱断裂などの筋腱障害は休憩直後に起こりやすいのですが、汗冷えが原因の一つになっています。吸湿速乾性のウェアを選び、気候に合わせてこまめに衣類を脱ぎ着して調節してください。
4 健康への効果
ウォーキングは軽めの有酸素運動ですから、健康維持・増進を計りたい人にとって理想的な運動です。それこそ頭のてっぺんからつま先までのからだ全身に適度な刺激が入りますから、思いつく限りどんなことにも効果があると言ってよいでしょう。
ただしどこかに痛みがあったり故障がある人の場合、お医者さんやトレーナーさんなど専門家に一度相談してみることをお勧めします。症状によってウォーキングをつづけながら様子を見るか、一回休んだほうがいいのかアドバイスをくれるはずです。
ねりまインクワイアラー 139 サンマ豊漁
今年はサンマが豊漁で、お店にも新物が出回り始めています。去年は著しい不漁だったのでうれしいことですが、中国・台湾の漁船が大量に捕獲することが問題になっています。マグロのように国際的な生物資源保護の取り決めが必要になるかもしれません。ちょっと心配ですが、まずは秋の味覚を楽しみたいです。
東洋医学・手技療法との出会い
私たちはビルの3階にある小さなクリニックですが、ちょっとだけほかの診療所と違うかな~と思うのが漢方を使うことと、手を使った治療を重視することの二つです。ある雑誌から小文を依頼されたので、やや内容をかみ砕きながら紹介します。
1 東洋医学との出会い
医者になって2年目、大学病院で診療を行っていた時、杖をついた年配の外国人女性を診察したことがあります。腰下肢痛の相談である病院を訪れ、勧められて手術を受けたこと、手術後も痛みが続き、他にも色々とあたってみたが治らずにこの病院にやってきたという話を伺いました。手術はきちんとやったようだし、有名な先生が執刀医だし、ろくな経験もない若造だから、話を聞く他はありませんでした。治療でやれそうなことはすでにやっているし、心の病気だと言われ精神科に回されたという話を聞いて気の毒だと思いましたが、何をしたらいいかさっぱりわかりません。苦しまぎれに当帰芍薬散という漢方薬を処方して、とりあえず帰ってもらうことにしました。
1週間後、患者さんを拝見しました。恐る恐る様子をうかがうと、なんと!持っていたはずの杖がない!患者さんがニコニコしている!ぼうっとして後のことはよく覚えていないけれど、「ユーアーソー、カインド」(あなたは親切ね)と言われたことはしっかり記憶しています。
これが私の東洋医学との出会いです。その後、妻の母親が薬剤師で生薬の研究をしていたこともあり、漢方の勉強を始めました。漢方の診断は独特で、あいまいに見えるのですが、ときにはとても役に立つ治療法になるのです。ふつうのクスリでは効果がないとき、どう対応していいのかわからないとき、漢方を勉強してよかったなと実感します。
2 手技療法を発見する
大学病院に研修医として配属されたときおどろいたのは、いきなり患者さんを診させられたことです。学生のころに聴診器の当て方や打腱器の使い方を習ったとはいえ、大学ならではの高度な診察法を苦労しながら会得するものだと思っていたので、医者とはいえ素人に毛が生えたくらいの自分が患者さんを診ていいのか大いに迷いました。難しい患者さんは偉い先生や先輩たちが診ますし、必要なら診察を換わってもらうことができるのですが、実際に手を使った診察法はほとんど教わることがありませんでした。レントゲンなどの画像検査や血液検査の読み方は厳しく指導され勉強になりましたが、患者さんの顔を見て、話を聞き、体を触る診察は各自が見よう見まねで覚えるばかりだったと思います。そんな中で腰痛や肩こりなどよくある相談に対する一般的なアプローチに疑問を持つようになり、手技療法が気になり始めました。ふだんの仕事とは別にいろいろ調べて、民間の治療法の中にも教わるものがあることを知った一方、非科学的・独断的で危険な方法があることも分かりました。海外では手技療法に一定の評価があり、ふつうに医療の中に組み込まれたり、協力関係ができていることも知りました。そこで、外国から本を取り寄せては読み続け、少しづつ自分の診療に取り入れていきました。
3 開業する
医師となり10年、それなりに手術もできるようになり、いくつかの資格もとることができました。しかし依然として整形外科の診断治療法には問題があると感じていて、なんとかできないかと思うようになりました。たしかに手技療法は効果的だが、どんな場合にも「効く」わけではありません。くすりや注射は対症療法だと言われるが、症例を選べば即効的で良い治療法になります。手術も同じで、つまるところ適否をしっかり知ることがだいじなのです。そこでいろいろと考えた末、漢方と手技療法を主体とするクリニックを開くことになりました。
それから20年当地で開業していますが、仕事が楽しくできているのは漢方と手技療法を知ったおかげと感じています。一見全くちがう治療法のように思えますが、どちらも大まかな検査ではとらえきれないわずかなからだの変化を見極めるノウハウがあり、これを自分なりに整理して使うことで、どんな時にどの治療法がいいのか、あるいは治療よりもじっと様子を見るだけだったり、体操やストレッチを行ってもらうほうが良い場合があることもわかるようになってきました。少し専門的に説明するなら、筋肉や関節などレントゲンに写らない軟部組織の評価をきちんと行わない限り、どのような治療法も危険になり得るので、触診による評価をもっと精巧に行う必要があるのです。
4 この先は
ところで、はじめての漢方治療が奏効したのはどうしてでしょうか?じつは手技療法でも、漢方ではない薬でも、びっくりするような効果を経験したことが何回かあります。予想される効能をはるかに超えて効く事があるのはなぜなのでしょうか?明快な答えはできませんが、あのとき患者さんに「あなたは親切ね」と言われたことが忘れられず、仕事が忙しく、話が長い患者さんと接して気がせくときに、いつもその言葉を噛みしめるようにしています。相手を理解したい、治せなくても少しは楽にしてあげたい。小さいクリニックなりにできることをしたい、そういう気持ちをこれからも忘れないようにしたいです。そしてもうひとつ、軟部組織の評価法をさらに工夫して、広めていくことができるといいなと考えています。
ねりまインクワイアラー 138 活性汚泥
東京都1300万人の一日の排泄物の大部分は下水処理場に行き、様々な処理を経て活性汚泥になり最後は焼却されて埋め立てられます。むかしの「汲み取り→肥として利用」のほうがずっとエコっぽい気がしますが、江戸時代とは量もけた違い、衛生管理や農業の近代化からみればやむを得ない方法です。地域によってはブロックや代替セメントとして再利用する試みもされています。