目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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松ぼっくり通信電子版
高野台松本クリニックの院長、松本不二生(ふじお)先生が体にまつわるあれこれを書いた松ぼっくり通信。読めばカラダに役立つ、読むサプリです

高野台松本クリニック 177-0035 練馬区高野台1-3-7NFプラザⅡ三階 
℡03-5372-7773

(整形外科・リハビリテーション科・漢方外来

松ぼっくり通信

松ぼっくり通信 2019年 8月号

魔法の弾丸

先日、鍼や漢方を研究する学会に参加した時のことです。東洋医学特有の診察をして実際に鍼を打つデモンストレーションを見ていろいろ考えました。漢方は私も使っていますが、鍼にはまたちがった考え方があるようです。どんな治療法にも得手不得手があって、東洋医学も万能ではありませんが、ときにはすばらしい効果があることも知っています。と同時に、同じ症状を治療するなら西洋医学のほうがはるかにスピーディで確実に治せる場合があることも知っています。

独特の診断・治療法は世界中にたくさんありますが、ほかでは見落としている治癒のメカニズムを上手に使っている方法があるかもしれません。そういったすべてをかみわけて、「ワンストップで必ずベスト」の治療を提供できる病院(クリニック、接骨院、治療院、鍼灸院そのほか)はありえるのでしょうか?

1 ベストは魔法の弾丸

講演でひざの痛みに灸をしたり、くびが回らない人に鍼を打った症例などの説明がありましたが、(この症状ならマッサージのほうが効くのでは?)(これは薬のほうが絶対早いはず!)と内心思うケースもありました。でも、すべての治療の神髄を会得している人はいないのです。まったく逆に、(この例だったら鍼が絶対いい!)ということもあるでしょう。

最高の治療とは、「年齢・体質など個人の特質に関係なく、副作用もなく、一発で、苦痛もまったくなく、100パーセント症状が消えて、再発などのあとくされもない治療」のことです。パッと飲んだらあっという間に治るクスリという考えを魔法の弾丸と呼びますが、言い換えると「奇跡」が最高の治療であって、これはムリな相談です。では、今ある無数の治療法の中から、ある人にとって一番いい方法を見つけられる医師(治療家、ヒーラーあるいはコンピューター?)はいるのかな?これが気になります。

2 人は死ぬもの

 こういう仕事をしていると、根っこの部分ではいかに生きるか・死ぬかが問題だと感じています。永遠に生き続ける話(不老不死の伝説、手塚治虫さんの「火の鳥」など)は魅力的ですが、そんなに長く生きて楽しいのか考える必要はあるでしょう。

映画「永遠に美しく」のように、腹に向こうが見えるほどの大穴が開いてもアタマがちぎれても生き続けられたら恐ろしい気がします。SF小説「老人と宇宙」では、現役引退した年寄りたちが軍に入隊し、最新のテクノロジーで強化された新しい肉体を与えられてエイリアンと戦います。一度死んだようなものだから心おきなく戦えるし、ふだんはスーパーボディで好きなことをやり放題というわけで希望者が続出します。

映画「アンドリューNDR114」は人間そっくりのアンドロイドが主人公です。はじめはロボットっぽいのですが、しだいに改良されてほとんど人間と区別がつかなくなります。ところが一緒に暮らしている人間の家族はどんどん年を重ね、世代を交代していきますが、アンドリューはまったく年をとりません。かわいがっていた赤ちゃんが成人し、やがて年老いて亡くなっていくのを見たアンドリューは決心し、最新のテクノロジーを使って人間に生まれ変わります。人間になれば、自分も年をとって死んでいくことができるのですから。

3 AI(人工知能)ならできる?

さて、すべての診断・治療法に精通し、酸いも甘いもかみわけて、100パーセントもっともいい治療法を見つけられる診断法はできるのでしょうか?どんなに研鑽しても一人の人間には不可能だと思います。ではAIならどうでしょうか?

世界中の研究機関、大学病院や学会から知識を集め、代替治療のみならずちょっと怪しいがひょっとしたら役に立つかもしれない治療法まで情報として飲み込み、思い込みや偏見などの人間くささとは無縁。でもアンドリューのように人間の弱さも理解して、ときにははげまし、ときには慰める。すべては電子世界のアルゴリズムで動いていても、限りなくかんぺきに近い未来の医師は、クラウドを使って世界中に現れるかもしれません。今はわかりませんが、案外近い将来にみなさんの街に来るかもしれませんよ。

 

ねりまインクワイアラー 149 ウォーキングは奇跡のクスリ

 海外からのメール通信、ハーバード大学医学校発の「ウォーキング:5つのおどろくべき効能」を紹介します。

1 毎日1時間しっかり歩くと、肥満遺伝子の働きが半分になる

2 毎日15分歩く習慣があると甘いものを欲しがる傾向が減る

3 週に7時間以上歩く人は乳がんの発症率が14%減少する

 週に少なくとも10キロ歩く人は変形性関節症の発症率が下がる

5 週に5日一日20分以上歩く人は感染症にかかる率が43%も下がる

 著者によれば、考えられる限り奇跡の治療に近いのはウォーキングだそうです。私としては、4番の関節症の話を強調したいです。レントゲンで変形があっても今それほど痛くない人たちに、ぜひウォーキングをお勧めします。もちろん10キロ以上歩いてもオーケーですよ。

松ぼっくり通信 2019年 7月号

転ばずに動く!

転ぶ人がとても多い。最近のクリニックでの印象です。人間の赤ちゃんは生まれたとたんに歩くことができないので、1年以上かけて歩くことを学びます。このときに脳や神経が学習して体の動かし方を覚えるのです。記憶と同じように、覚えたことは忘れます。立ったり歩いたりは生まれつきの能力ではなく学んだことです。だから忘れたら、もう一回練習しなおす。そうすればまた歩く能力はよみがえってきます。

1 立ち上がりのひとふんばり

 赤ちゃんが始めて立ち上がった時を見てみましょう。それまでつかまって立っていたのに、はじめて立ち上がる時です。ゆっくりとお尻を持ち上げて膝を伸ばしながら、床に置いた手をそっとはなします。お尻の筋肉を使って用心深くからだをおこし、最後に背筋を伸ばします。こういう動きができるように、数ヶ月の間ハイハイをしたりつかまり立ちをしてお尻の筋肉を鍛えたり、バランス感覚を磨いてきました。

 そっと立ち上がる動きをするにはおしりの筋肉がしっかりしていることが必要です。ところが座り仕事が一般的になり、車や電車での移動が増えたためか殿筋が弱くなっている人が増えています。殿筋が弱いといざという時に踏ん張りが利かず、よろけて転んでしまいがちです。

そこでお尻を鍛えましょう。やることはとても簡単、ゆっくりと立ち上がるだけです。はじめのうちはどこかにつかまってかまいませんから、そうっとお尻を浮かして、椅子の座面から数センチ浮かしたまま踏ん張ってみましょう。慣れてくるに従い浮かしている時間を伸ばしていきます。これは等尺性筋収縮という効果的な筋トレ法です。毎日無理のない範囲で繰り返してみましょう。だんだんと立ち上がるときにからだがしっかりしてきたことに気がつくはずです。

2 もう一歩前へ

  よく転ぶという人たちの特徴の一つは、足を使う前につかまろうとすることです。短い時間ならつかまらないでも立っていられるが、つかまったほうが安定するのでつかまっている。こういう人ならつかまろうとして手がすべっても、つかまったものがぐらついても転ばないで済むでしょう。

 ところが文字通り体を支えるためにつかまろうとすると、手がすべったりつかまったものがぐらついてだけで転んでしまいます。これを避けるためには、いつももう一歩前に足を運んでからつかまるようにすることです。手を伸ばしてつかまろうとするのではなく、つかまるものに十分体を近づけてからつかまるようにしましょう。

3 足元から動く

 まだリモコンがなかった頃のテレビでは、チャンネルを変えるときにテレビのところまで歩いて行ってがちゃがちゃチャンネルを回していました。部屋の明かりはひもをひっぱって点灯していましたし、風呂を入れるときはガス釜のそばにしゃがみこみ火をつけていました。今から見るとずっと不便でしたが、家の中でいまより足をたくさん使っていました。今はリモコンやスイッチでいろいろなことができるようになりましたが、その分足腰を使う機会が減ってきています。

転びやすい人の別の特徴は足を動かさずに用を済まそうとすることです。すわったまま、上半身をひねって横や後ろにあるものを取ろうとします。椅子やベッドに座っていて転んだという人の話を伺うと、立ち上がってからだを動かす手間をはぶこうとしてバランスを崩していることが多いようです。

だから無精がらずに足をこまめに動かすことです。体の向きを変えるときは体をひねるのではなく、足元を動かして向きを変えましょう。

4 危なっかしいときは三点指示

 登山をしたことがある人はご存知と思いますが、ゴツゴツした岩場など危ないところを通る時には三点支持のテクニックを使います。三点支持とは合計4本の手足のうち必ず3本を地面や岩に置き、残りの一本だけを動かす方法で、たとえば左手・両足を固定したまま右手で上の石をつかみ、しっかりとつかめたら今度は他の手足のどれか一本を動かしていきます。

 つかんだ手がすべったり岩の上に置いた足が滑ったとしても、かならず残りの3本で体を支えているので危険なところでも安全に通ることができる方法です。

 この三点支持のやり方を家の中でも利用してみましょう。足腰の力が弱っている人がせまいところから物をとりだしたり玄関など段差のあるところを上り下りする際に、しっかりしたところを選んであちこちにつかまりながら移動してみましょう。がっちりつかめた、きっちり足で体を支えられたと確認してから別の手足を動かすようにすれば、怪我をする機会がぐっと減るはずです。

 

ねりまインクワイアラー 148 汚れたプラスチック

リサイクル資源として輸出されたプラスチックが「汚れている」とリサイクルできず、相手国にとても迷惑をかけています。では汚れたプラスチックとはどういうものなのか? 「資源プラスチックになるのは水でさっと洗う、簡単にふき取る程度で落ちるもの。水でさっと洗う、簡単にふき取る程度で落ちないものは、資源ごみとして出さないこと」だそうです。マヨネーズやケチャップの容器はだめかな。キムチの容器も危ないかもしれません。

松ぼっくり通信 2019年 6月号

どんな治療が効くのかな?

何度もくりかえし読む本の一つにバーナード・ラウン博士の「医師はなぜ治せないのか」があります。現在AED(自動体外式除細動器)が病院や街のあちこちに設置され、突然の心停止からたくさんの人たちを助けられるようになってきました。そのもととなる体外除細動器を発明して、ノーベル医学賞をもらったのがラウン博士です。では、えらい学者先生の成功談の話かと思うとさにあらず、駆け出しのお医者さんが失敗を繰り返し、さまざまな問題にぶつかりながら「何が患者さんを良くしているのか」「治るきっかけとは何なのか」を探求していきます。本をのぞきながら考えたことをお話ししましょう。

1 名医の秘密

若きラウン医師の恩師レヴァイン博士は名医として有名な方でした。博士の回診では、患者さんと気軽に会話しながらちょっとしたヒントを見つけていきます。寝汗で枕が濡れている患者さんに気がつくと、枕を返して乾いたほうを上に向け「ほら、これで寝やすくなるよ!」と声をかけます。ちょっとした顔の表情や体の動きから重大な兆候を見つけ出し、まわりの医師にはなんだかわからないうちに診断を下し、さっと薬を出すとこれがまたよく効くのです。

ところがある若手の医師が「レヴァインの治療はいい加減で全然理論的じゃない」と言って、回診に参加しなくなりました。いっぽうラウン医師は(確かに診たてははっきりしないのに、なぜあんなに良く効くのだろう?)と不思議に思い、なんとかレヴァイン博士の診たての秘密を会得しようと週に六日回診に通うようになりました。

それから11年間、ラウン医師は足しげく博士のもとに通います。しだいに秘密がわかったラウン医師はなげきます。「なんと物分かりの悪かったことか!」

2 常識を乗り越える

そのころ心筋梗塞にかかった人たちはベッド上で何か月ものあいだ絶対安静を保つように指導されました。梗塞になった心筋に無理がかかれば心臓が破れて突然死をするのではないかと医師たちが恐れたためでした。

しかしラウン博士は考えます。ほんとうの急性期を過ぎたなら、むしろ体を動かして少しずつ心臓を鍛えなおし、心臓のポンプ作用を働かせたほうが患者は元気になるのでは?そこで急性期を過ぎた患者さんを慎重に動かし始めると、そのほうが早く確実に患者さんが元気になることを発見したのです。このやり方は、現在心臓リハビリテーションと呼ばれていて、心筋梗塞後の標準治療の中に組み込まれています。

3 その人を知る

病棟にひどい不整脈の患者さんが入院していました。ところが患者さんは腰痛にとても困っていて、これを何とかしてほしいと訴えていました。でも不整脈の治療で電気除細動を行う必要があったので、ラウン博士は患者さんに説明してみます。「それをやったら腰痛が治るの?」 ラウン「ええ治りますよ!」

聞いていた研修医が「そんなばかげた話は聞いたことがない!」と言いますが、博士は耳を貸さず除細動治療を行います。終わった後、患者さんは憤然としてこう言いました。「あの若い医者に言ってやがるんだ!バカなのはあんたのほうじゃないか!みごとに治ったよ!って。」

見るからにはかなげな若い女性が入院していました。ちょっと歩くだけでも苦しそうにしています。心臓弁の働きが悪く心臓が弱っていると診断されていました。細かく診察したのちに、博士はこう伝えます。「いろいろ調べた結果、だいじなことがわかりました。」 「なんでしょうか?」 「あなたの手がじっと汗ばんでいることです。それ以外は何ともありません。汗のことを気にせずに、握手のときは相手の手をしっかりと握り返しましょう。あなたの問題点はそれだけです。」入院して以来、患者さんは初めて微笑みます。そして1週間後、元気に退院していきました。

4 治癒力を発動するもの

「治せる医師・治せない医師」「医師はなぜ治せないのか」の2分冊が発刊されて20年以上たっていますが、今でも時折ページをめくっています。11年の間お師匠さんのもとに通いつめてラウン博士が会得した名医の秘密とは何だったのでしょうか?本のなかでははっきりと述べられていませんが、オリジナル英語版の表題は「失われし治癒の技~医療における思いやり(compassion)の実践」です。このcompassionという英語は、日本語の「思いやり」よりもずっと深い意味を持つと思います。相手の心にもう一人の心が響きあい、からだに本来備わっている治癒の力が発動される。こんな感じでしょうか。ラウン博士には及びませんが、思いがけない治療の経験は医師ならだれにでもあるのでは?と考えます。仕事に疲れたとき、読むと少し元気が出る本です。

 

ねりまインクワイアラー 147 本に興味を持った方へ

「医師はなぜ治せないのか」「治せる医師・治せない医師」は築地書館から出版されましたが、いまは中古本で入手可能です。オリジナルのThe Lost Art of Healingはアマゾンなどで購入できます。一般向けに書かれていますので、興味のある方は是非読んでください。年をとったラウン先生は、「いつもお元気ですね!」「お若いですね!」と言われると、オレはもうろくしたのか?と心配になるそうです。

松ぼっくり通信 2019年 5月号

なんでもないからタイヘンなのだ!

  からだの不調を感じ始めたけれど、何が原因なのかさっぱりわからない。こんなときは不安になるものです。思い当たるフシがないので何かわるい病気になったのではと心配する人もいるでしょう。でもちょっと落ち着いて考えると、一見何もないように見えるところに理由が見つかるかもしれません。

1 やりすぎ君の場合

 やりすぎ君は真面目な性格で、締め切りに合わせて残業することもままあります。残業が続くと疲れを感じることもありますが、休日の家族サービスもできるだけやっています。忙しいけれど、まわりも同じくらい忙しいので、とくに気をとめていませんでした。

 あるとき同僚が突然退職し、忙しい時期に重なったため、仕事量が急に増えて連日の残業が続きました。持ち前の几帳面さで仕事をこなしていましたが、肩や背中が張って、頭痛を感じ、しだいに腕が痺れてきました。病院でははっきりしたことはわからず、症状はなかなかスッキリしません。いったいオレの体はどうなっているのだろう?と心配になってきました。

2 のんびりさんの場合

 のんびりさんは定年退職し、朝起きたらゆっくりとご飯を食べて新聞をじっくりと読み、ごろっと寝転がって過ごしていました。最近用事があって街中に出かけたときに、からだが重苦しく足が疲れやすいことに気がつきました。散歩をしてみると、ふらつきを感じ、腰が重だるくなります。何かの病気かな?と心配になってきました。

3 いっぱいさんの場合

 いっぱいさんは会社を経営しています。売り上げは着実に伸びていますが、安泰とは言えず、あちこちを駆け回る毎日です。家庭にじゅうぶんな時間を割けないので家族には申し訳なく思っています。ところが、田舎の父が急に病気で倒れてしまいました。一命は保てたものの、父の生活をどうするか、田舎は行くだけでもたいへん、妻にも負担をかけているし、会社は忙しい時期にさしかかっています。

 そんなある日、突然息苦しくなって目が回り、口のまわりや指先が痺れて救急車で病院に運ばれてしまいます。検査でおかしな点は見つからなかったものの、実は深刻な病気が隠れているでは?と心配です。

 さて、三人には何が起きたのでしょうか?

4 理由は「なんでもない毎日」にあり

 やりすぎ君は仕事を多く抱えていて、じゅうぶんな休養ができていません。現在ほとんどの仕事は、からだ全身を使うよりも一部分だけを繰り返し使う作業が大部分を占めています。とくに手を使う仕事、なかでもパソコン作業では1日何千回とキーを叩いたりクリックするので、腕の筋肉の疲労は著しい一方、くび・肩はじっと固めて動かさないためコリがひどくなります。これを毎日続けると累積疲労でくびから肩・腕にかけて痛みや痺れが生じてきます。本人にしてみれば「普通に働いているだけ」なのに困った症状が出てくるので、原因がわからないと考えてしまいがちです。

 反対にのんびりさんは急に体を動かさなくなったのが原因です。仕事に出かけることでそれなりに体を動かしていたのが、退職後のんびりとしている間に著しく体力・筋力が落ちてしまったのです。このパターンの相談はけっこう多いです。

 いっぱいさんの場合は、ストレスが問題です。ふだんからストレスレベルは上限ギリギリだったのに、親の病気というひと押しで心の救難信号が灯り、神経系のバランスを崩してしまったのです。

5 メリハリのある暮らしをしよう

 やりすぎ君のように、いつも同じ暮らしをしていても、疲労が積み重なれば体の故障が起きます。がんばるときはがんばるけれど、休養をしっかりとって、スポーツや遊びで体にちがう刺激を入れることが大切です。のんびりさんは楽をし過ぎたために、普通の暮らしをするにも困るくらい体力が低下してしまいました。すぐに疲れてあちこちが痛くなりますが、気を持ち直して体を使い始めればしだいに体力が戻り、痛みも軽くなってきます。

 いっぱいさんのようなストレスの問題は、現代人の生活にあまねく存在すると言っていいでしょう。ストレスはありすぎてもなさすぎても問題で、ちょうどいいレベルで負担がかかっているときに体・心にはりが生まれ、元気に暮らすことができます。ときには生活を見直して、もっとゆったりとした生活に変えていくことも必要です。

外来にこういった相談で訪れる方は決して珍しくありません。薬・リハビリだけでの解決はむりなので、患者さんと相談しながら、生活の組み直しをお手伝いできればと考えています。

 

ねりまインクワイアラー 146 腹診(ふくしん)

 漢方を習い始めたころ、とまどったことの一つが腹診です。お腹をさわって、かたく張ったり押して痛いところを探します。これを虎の巻で調べると、あら不思議!その人に向いたクスリがみつかるのです。ところがどうしてそうなるかがわかりません。「昔から伝わっているから、とにかく信用しなさい」と言われているようで気がかりでした。

 でも最近、神経のつながりで説明できるという研究が増えてきました。これなら納得できそうです。

松ぼっくり通信 2019年 4月号

自分マッサージをやってみよう!

クリニックで仕事をしているスタッフや私も、時間があるときにおたがいを治療することがあります。「便利でうらやましい」と声が聞こえそうですが、それはちがいます。家でくつろいでいる落語家さんに「落語を聞かせろ!」と要求するのと同じで、そこには節度が求められます。ほんとうに困ったときにはちゃんとお金を払って治療を受けますし、できるだけ自分で体のケアを行っています。そんな時に役立つのが「自分マッサージ」、今回のお話です。

1 なでさすりは自然にできるもの

  だれかが苦しがっているとき、そばにいる人が思わず手を伸ばし、痛いところをさする。これは私たちに生まれつき備わった性質の一つです。仲間に手を触れてもらうと安心し、それだけでも緊張がゆるみ、痛みも軽く感じるようになります。これはサルの毛づくろいと全く同じで、私たちがご先祖様から受けついだものです。

 触っただけで安心させ、触ってもらっただけで安心できる。マッサージのやり方を考える前に、このことをまず押さえておきましょう。これからお話しする自分マッサージでも、自分がいやになるようなやり方をする必要はありません。少しづつ、毎日続けられるように。これが自分マッサージのやり方です。

2 トリガーポイントのことを知ろう

 トリガーポイントは、約60年前にアメリカの医師ジャネット・トラベルさんが命名したもので、筋肉の中に痛いしこりができたものを指します。やはり医師であったお父さんのがんこな肩の痛みを治そうとしていろいろな治療を試み、その結果トリガーポイントを見つけて注射をすれば痛みがなくなることを発見したのです。

 のちにジャネットさん自身も肩痛で大好きなテニスができなくなり、今度はお父さんに治してもらいました。この知識を生かし、二人はいろいろな患者さんの痛みの治療にも成功するようになりました。しだいに評判が高まってきたある日のことです。当時のアメリカ大統領ケネディ氏から相談があり、ジャネットさんはケネディ氏の頑固な痛みを診療して治しました。以来大統領付きの医師となったジャネットさんは共同研究者のサイモン博士といっしょに、今までの経験をもとにして有名な「トリガーポイント・マニュアル」を書きあげます。

 トラベルさん自身はおもに注射でトリガーポイントを治していたのですが、大きな筋肉や届きにくいところにある筋肉は注射だけで治すのが難しいことも気づいていました。著書の中では注射のほかにマッサージやストレッチも書かれており、原因や予防法にも触れています。注射だとお医者さんしかできませんが、マッサージなら患者さんが自分でできる方法です。

3 自分マッサージはむずかしくない

 そこで自分マッサージをお勧めしたいのです。むずかしい技術はなく、誰でもできる方法です。プロの代わりにはなれなくても、自分のカラダだから痛さの調節もできます。痛みに強い人はそれなりに、弱い人はとても軽いマッサージから始めればいいのです。

 はじめは上手にできず、こんな感じでいいの?と思うかもしれません。しかし、いつでもできるのが強みです。「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」とことわざにあるように、小まめにやれば(あれ、ちょっといいかな?)と思うときがきます。そして練習していけば、だんだんと上手になっていきます。

 重要なポイントは、繰り返しちょこっとづつマッサージすることです。からだはすぐには変化しません。血の巡りが改善し、老廃物が洗い流され、筋肉の新陳代謝が活発になり、縮んでいた筋線維がゆるみ・・・というように、順調に回復する場合でも変化は数日~数週間かかるものです。たくさんの筋に故障があり、長く患っているケースならばなおさらです。ここに自分マッサージの強みがあります。自分でできるのですから、ちょっとした時間を利用して繰り返し治療してみましょう。

4 自分のからだをチェックする

 ただし、『痛みの原因である』筋肉をみつけるのが意外と難しいことも知っておきましょう。トラベルさんやお父さんも、痛いと感じるところに注射をしていたわけではありません。痛みの「原因部位」と「感じる部位」はちがうことが多いのです。クリニックでは患者さんに原因部位をマッサージするように指導していますが、患者さん自身が思ったところとほとんどちがうので、始めはとまどうかもしれません。さらに細かいことを知りたい方は、スマホやパソコンで「トリガーポイント」と検索してみるといろいろ情報が見つかるはずです。

 また、トリガーポイントは再発することも多いのです。仕事や生活上の負担、ストレス、栄養や睡眠の問題などで発症しますから、トリガーポイントができやすい筋肉を定期的に触れて、(ちょっと痛くなってきたぞ)と感じたら自分マッサージをし、からだにも気を配る。という風にいけばベストです。

 

ねりまインクワイアラー 145 エスカレーター右側

 けがをして3か月間松葉杖で過ごしました。エスカレーターでは右側に立ちたいけれど、右に立つと迷惑だし…と困りました。先日話題になったように、エスカレーターの左側に立ちづらい人たちがいます。右手でつかまらないとからだが不安定になるためです。いまは松葉づえも取れましたが、これからはできるだけ右側を歩かず、右側に立っている人を心配させないようエスカレーターを使うつもりです。