目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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06月

松ぼっくり通信 2019年 7月号

転ばずに動く!

転ぶ人がとても多い。最近のクリニックでの印象です。人間の赤ちゃんは生まれたとたんに歩くことができないので、1年以上かけて歩くことを学びます。このときに脳や神経が学習して体の動かし方を覚えるのです。記憶と同じように、覚えたことは忘れます。立ったり歩いたりは生まれつきの能力ではなく学んだことです。だから忘れたら、もう一回練習しなおす。そうすればまた歩く能力はよみがえってきます。

1 立ち上がりのひとふんばり

 赤ちゃんが始めて立ち上がった時を見てみましょう。それまでつかまって立っていたのに、はじめて立ち上がる時です。ゆっくりとお尻を持ち上げて膝を伸ばしながら、床に置いた手をそっとはなします。お尻の筋肉を使って用心深くからだをおこし、最後に背筋を伸ばします。こういう動きができるように、数ヶ月の間ハイハイをしたりつかまり立ちをしてお尻の筋肉を鍛えたり、バランス感覚を磨いてきました。

 そっと立ち上がる動きをするにはおしりの筋肉がしっかりしていることが必要です。ところが座り仕事が一般的になり、車や電車での移動が増えたためか殿筋が弱くなっている人が増えています。殿筋が弱いといざという時に踏ん張りが利かず、よろけて転んでしまいがちです。

そこでお尻を鍛えましょう。やることはとても簡単、ゆっくりと立ち上がるだけです。はじめのうちはどこかにつかまってかまいませんから、そうっとお尻を浮かして、椅子の座面から数センチ浮かしたまま踏ん張ってみましょう。慣れてくるに従い浮かしている時間を伸ばしていきます。これは等尺性筋収縮という効果的な筋トレ法です。毎日無理のない範囲で繰り返してみましょう。だんだんと立ち上がるときにからだがしっかりしてきたことに気がつくはずです。

2 もう一歩前へ

  よく転ぶという人たちの特徴の一つは、足を使う前につかまろうとすることです。短い時間ならつかまらないでも立っていられるが、つかまったほうが安定するのでつかまっている。こういう人ならつかまろうとして手がすべっても、つかまったものがぐらついても転ばないで済むでしょう。

 ところが文字通り体を支えるためにつかまろうとすると、手がすべったりつかまったものがぐらついてだけで転んでしまいます。これを避けるためには、いつももう一歩前に足を運んでからつかまるようにすることです。手を伸ばしてつかまろうとするのではなく、つかまるものに十分体を近づけてからつかまるようにしましょう。

3 足元から動く

 まだリモコンがなかった頃のテレビでは、チャンネルを変えるときにテレビのところまで歩いて行ってがちゃがちゃチャンネルを回していました。部屋の明かりはひもをひっぱって点灯していましたし、風呂を入れるときはガス釜のそばにしゃがみこみ火をつけていました。今から見るとずっと不便でしたが、家の中でいまより足をたくさん使っていました。今はリモコンやスイッチでいろいろなことができるようになりましたが、その分足腰を使う機会が減ってきています。

転びやすい人の別の特徴は足を動かさずに用を済まそうとすることです。すわったまま、上半身をひねって横や後ろにあるものを取ろうとします。椅子やベッドに座っていて転んだという人の話を伺うと、立ち上がってからだを動かす手間をはぶこうとしてバランスを崩していることが多いようです。

だから無精がらずに足をこまめに動かすことです。体の向きを変えるときは体をひねるのではなく、足元を動かして向きを変えましょう。

4 危なっかしいときは三点指示

 登山をしたことがある人はご存知と思いますが、ゴツゴツした岩場など危ないところを通る時には三点支持のテクニックを使います。三点支持とは合計4本の手足のうち必ず3本を地面や岩に置き、残りの一本だけを動かす方法で、たとえば左手・両足を固定したまま右手で上の石をつかみ、しっかりとつかめたら今度は他の手足のどれか一本を動かしていきます。

 つかんだ手がすべったり岩の上に置いた足が滑ったとしても、かならず残りの3本で体を支えているので危険なところでも安全に通ることができる方法です。

 この三点支持のやり方を家の中でも利用してみましょう。足腰の力が弱っている人がせまいところから物をとりだしたり玄関など段差のあるところを上り下りする際に、しっかりしたところを選んであちこちにつかまりながら移動してみましょう。がっちりつかめた、きっちり足で体を支えられたと確認してから別の手足を動かすようにすれば、怪我をする機会がぐっと減るはずです。

 

ねりまインクワイアラー 148 汚れたプラスチック

リサイクル資源として輸出されたプラスチックが「汚れている」とリサイクルできず、相手国にとても迷惑をかけています。では汚れたプラスチックとはどういうものなのか? 「資源プラスチックになるのは水でさっと洗う、簡単にふき取る程度で落ちるもの。水でさっと洗う、簡単にふき取る程度で落ちないものは、資源ごみとして出さないこと」だそうです。マヨネーズやケチャップの容器はだめかな。キムチの容器も危ないかもしれません。

松ぼっくり通信 2019年 6月号

どんな治療が効くのかな?

何度もくりかえし読む本の一つにバーナード・ラウン博士の「医師はなぜ治せないのか」があります。現在AED(自動体外式除細動器)が病院や街のあちこちに設置され、突然の心停止からたくさんの人たちを助けられるようになってきました。そのもととなる体外除細動器を発明して、ノーベル医学賞をもらったのがラウン博士です。では、えらい学者先生の成功談の話かと思うとさにあらず、駆け出しのお医者さんが失敗を繰り返し、さまざまな問題にぶつかりながら「何が患者さんを良くしているのか」「治るきっかけとは何なのか」を探求していきます。本をのぞきながら考えたことをお話ししましょう。

1 名医の秘密

若きラウン医師の恩師レヴァイン博士は名医として有名な方でした。博士の回診では、患者さんと気軽に会話しながらちょっとしたヒントを見つけていきます。寝汗で枕が濡れている患者さんに気がつくと、枕を返して乾いたほうを上に向け「ほら、これで寝やすくなるよ!」と声をかけます。ちょっとした顔の表情や体の動きから重大な兆候を見つけ出し、まわりの医師にはなんだかわからないうちに診断を下し、さっと薬を出すとこれがまたよく効くのです。

ところがある若手の医師が「レヴァインの治療はいい加減で全然理論的じゃない」と言って、回診に参加しなくなりました。いっぽうラウン医師は(確かに診たてははっきりしないのに、なぜあんなに良く効くのだろう?)と不思議に思い、なんとかレヴァイン博士の診たての秘密を会得しようと週に六日回診に通うようになりました。

それから11年間、ラウン医師は足しげく博士のもとに通います。しだいに秘密がわかったラウン医師はなげきます。「なんと物分かりの悪かったことか!」

2 常識を乗り越える

そのころ心筋梗塞にかかった人たちはベッド上で何か月ものあいだ絶対安静を保つように指導されました。梗塞になった心筋に無理がかかれば心臓が破れて突然死をするのではないかと医師たちが恐れたためでした。

しかしラウン博士は考えます。ほんとうの急性期を過ぎたなら、むしろ体を動かして少しずつ心臓を鍛えなおし、心臓のポンプ作用を働かせたほうが患者は元気になるのでは?そこで急性期を過ぎた患者さんを慎重に動かし始めると、そのほうが早く確実に患者さんが元気になることを発見したのです。このやり方は、現在心臓リハビリテーションと呼ばれていて、心筋梗塞後の標準治療の中に組み込まれています。

3 その人を知る

病棟にひどい不整脈の患者さんが入院していました。ところが患者さんは腰痛にとても困っていて、これを何とかしてほしいと訴えていました。でも不整脈の治療で電気除細動を行う必要があったので、ラウン博士は患者さんに説明してみます。「それをやったら腰痛が治るの?」 ラウン「ええ治りますよ!」

聞いていた研修医が「そんなばかげた話は聞いたことがない!」と言いますが、博士は耳を貸さず除細動治療を行います。終わった後、患者さんは憤然としてこう言いました。「あの若い医者に言ってやがるんだ!バカなのはあんたのほうじゃないか!みごとに治ったよ!って。」

見るからにはかなげな若い女性が入院していました。ちょっと歩くだけでも苦しそうにしています。心臓弁の働きが悪く心臓が弱っていると診断されていました。細かく診察したのちに、博士はこう伝えます。「いろいろ調べた結果、だいじなことがわかりました。」 「なんでしょうか?」 「あなたの手がじっと汗ばんでいることです。それ以外は何ともありません。汗のことを気にせずに、握手のときは相手の手をしっかりと握り返しましょう。あなたの問題点はそれだけです。」入院して以来、患者さんは初めて微笑みます。そして1週間後、元気に退院していきました。

4 治癒力を発動するもの

「治せる医師・治せない医師」「医師はなぜ治せないのか」の2分冊が発刊されて20年以上たっていますが、今でも時折ページをめくっています。11年の間お師匠さんのもとに通いつめてラウン博士が会得した名医の秘密とは何だったのでしょうか?本のなかでははっきりと述べられていませんが、オリジナル英語版の表題は「失われし治癒の技~医療における思いやり(compassion)の実践」です。このcompassionという英語は、日本語の「思いやり」よりもずっと深い意味を持つと思います。相手の心にもう一人の心が響きあい、からだに本来備わっている治癒の力が発動される。こんな感じでしょうか。ラウン博士には及びませんが、思いがけない治療の経験は医師ならだれにでもあるのでは?と考えます。仕事に疲れたとき、読むと少し元気が出る本です。

 

ねりまインクワイアラー 147 本に興味を持った方へ

「医師はなぜ治せないのか」「治せる医師・治せない医師」は築地書館から出版されましたが、いまは中古本で入手可能です。オリジナルのThe Lost Art of Healingはアマゾンなどで購入できます。一般向けに書かれていますので、興味のある方は是非読んでください。年をとったラウン先生は、「いつもお元気ですね!」「お若いですね!」と言われると、オレはもうろくしたのか?と心配になるそうです。