コロナで激変!どう暮らすか
先日、ある学会でこれからのコロナ対策について講演を聞きました。コロナはこれからもまだまだ続くだろう、すっきりとおしまいにはならず、だんだんと風邪の一つになっていき、ワクチンは年一回になっていくのではないかというお話でした。わかってはいたものの、ちょっとがっかり、でも元気に暮らす方策が必要です。今回のお話です。
1 世の中のしくみが一変した
緊急事態宣言前の2020年2月、青梅マラソンに参加したとき、電車は超満員、だれもマスクは付けておらず、フツーに走ってフツーに帰ることができました。それからの出来事は皆さんもご存じのとおりです。もちろんランニング大会などのイベントは一切行われず、みんなが息をひそめて家でじっとしている状態が続きました。人々の行動形態がいっきに変わり、仕事、学校、家庭生活にものすごい影響が出ました。
2 ワクチンの意義
これまでにコロナワクチンを4回受け、近日中に5回目も接種予定ですが、正直うっとうしいです。まわりの医療関係者もよろこんで打っている人はまずいないです。仕事柄もあって、流行予防(軽減?)にワクチンが有効という情報を聞いているから、(まあしょうがないか)と考えている人が大半です。
新型コロナは変異性が強いため、新しい変異株が出ると急いでワクチンを作ります。RNAワクチンは比較的早く作ることができますが、理屈上先回りができないので、どうしても追いかけっこになるのが残念です。でも集団感染のスピードを抑えて死亡率を減少させることができますから、ワクチン接種を推進するのは意味があります。
一言でいうと、ワクチン接種は「世のため、人のため」になります。ただし、ワクチン接種がむずかしい方(副反応が強い人など)もいますから、心配な方は医師と相談して受けるかどうか決めてください。
3 若い人はどうする?
ある意味、コロナの影響を最も受けたのは若い人たちです。学校、友人関係、就活、キャリア形成など、一生でもっとも大事な時期に大きな波をかぶりました。たぶん100年で一回あるかという大きな転回点だと思います。先輩たちの経験や積み重ねられたデータが通用しなくなり、手探りで人生設計を考えざるを得なくなりました。
中世のペスト流行ではヨーロッパの人口の3分の2が亡くなり、社会のしくみが根底からゆすぶられました。極端な人手不足から農奴制が崩壊し、農業以外の産業が発達し、宗教にとらわれた価値観からはなれ自由にものを考える習慣が広まっていきました。当時の人たちも苦しい毎日を送っていたはずですが、長い目で見るとチャンスが広がる世の中に変わったともいえます。コロナ流行も同様だと私は考えています。
若い人たちへのアドバイスはシンプルです。日光を浴び体を動かして体力を養いましょう。あなたたちの時代はもうそこまで来ています。そしてワクチン接種を受けてみようかな?と考える人が増えてほしいと願っています。
4 年寄りは?
超高齢化社会にコロナ流行がかぶって、国の社会保障費が激増しています。年金受給年齢の繰り上げなど、ありがたくない話題も増えてきました。ここでは、自分たちができることに目を向けてみましょう。
● 必要以上に恐れない・・・動ける人は家にこもりきりを避けてください。街中でも人混みでなければマスクを外して歩くことができますが、お店、病院そのほかエチケット上マスクをつけた方がいい場所では付けましょう。コロナに感染した場合、もとからある病気(慢性疾患)が悪化して亡くなる人が増えています。運動不足は多くの慢性疾患の悪化を招きます。散歩をするならはじめから何歩までと決めず、疲れるまで歩きましょう。いつも同じところを歩かず、スピードに緩急をつけたり、坂や階段にもチャレンジしてください。バス・電車賃を持って物見遊山に出かけるのも手です。
● スマホ・パソコンをやろう・・・やると意外なくらいおもしろいし、意外なくらい簡単です。遠方の孫との会話も楽しめます。より年をとって足腰が弱ったとしても、遠くの家族・親戚や友人と歓談できます。自分の世界が広がりますよ。
●働くのもあり・・・長く患者さんを診ていて、ご高齢で働いている方はやっぱり違います。働くことのメリットは収入プラス人付き合い・頭の体操・運動不足の解消で大きいです。ボランティアだってすごくいいと思います。
ねりまインクワイアラー 188 あのころ、町に基地があった
所沢の航空公園のそばに広大な空き地をみつけ、調べたら米軍の通信基地でした。基地と言えば…立川にいたころ、まわりには米軍の外人ハウス(家族住宅)がいっぱい、基地の子たちと遊んだりけんかしたり。家に遊びに行くと広い芝生でパターゴルフをしたり。空ではゴーゴー飛行機が飛び交っていました。駅前には英語看板の店があちこちに。いろいろなことを思い出しました。
ねりまホンゾー No.306
プロトタキシーテス
地球上にまだ一本の木も生えていなかったころ、巨大なキノコが生えていました。キノコといっても笠はなく、ヘタだけですが高さはなんと9m(3階建てのビルなみ)もあったそうです。
その後、様々な制限が少しづつ緩和されてきましたが、コロナ前の生活に戻れることはないでしょう。わたしもマスクが苦手ですが、おそらく仕事の時はマスクをずっと付けることになるのでは?と予想しています。マラソンなどのイベントがやっと開かれるようになりましたが、感染対策のため運営がずいぶん変わりました。これも今後変わらないはずです。皆さんが感じている毎日の変化は、これからもずっと続き、日常の一部になっていく可能性が高いといえます。
関節を元気にしよう!!
20年ほど前、はじめてマラソンを走った時のことです。帰りがけ、膝が痛くて駅の階段が上がれず苦労しました。1週間は横断歩道をわたりきれず、車にクラクションを鳴らされました。その後走り慣れてくると痛みは軽くなり、しだいに痛みを意識せずに走れるようになってきました。ところが⁈ 今回のお話です。
1 むかしとった杵柄(きねずか)はありません
数年前に右足の骨折をしてからすべてが変わりました。細かい話は省きますが、アキレス腱の故障⇒骨折⇒手術をくぐりぬけた数年間で右脚の筋力がガタ落ちになりました。歩くのはOKでも、まともに走れません。感覚でいうと、マラソンを始める前、運動不足で体調を崩したころより悪くなった気がしました。
「ゼツボー!」と一瞬思いましたが、すごろくで振り出しに戻ったのと同じ、またやるしかないと思いました。それからまた数年がたち、なんとか格好がついてきました。年を取った分スピードは出ませんが、これからも楽しんで走っていきたいと考えています。
むかしスポーツをしていて、久しぶりに同じことをやろうとすると、気持ちは同じでもからだが全くついていかない。みんなはじめはそうなのですよ。でも気を取り直して続けていけば、またちょっとずつ上手になっていくのです。
2 軟骨のせいばかりにしないで
軟骨がすり減ったから、ひざ(股関節そのほか)が痛いのだと考えていませんか?そう書いてある本や、お医者さんの説明があったかもしれません。医学生のころ、軟骨についてイの一番に学んだのは「軟骨には神経が存在しない」ことでした。神経が通っていないところは痛みを感じません。だから、お医者さんたちも(軟骨が痛みの直接の原因でない)ことは知っているのですが、いまでも関節痛の原因をクリアに説明できていないので、「軟骨がすり減っている」で話を終わりにしがちなのです。
そこで関節に関係がありそうなことをぜんぶ調べていくのです。ひざ一つとっても、軟骨以外に骨、筋肉、じん帯、血管、神経そのほか細かな組織が縦横無尽につながっていて、ひざから離れたところまでたどって調べることが必要です。そして離れたところに原因が見つかることがしばしばあります。
マラソン練習中の関節の痛みは大半が筋肉性でした。骨やじん帯の痛みもありました。神経痛もたっぷり経験しましたが、いまでもたまにぶり返します。痛みとの付き合い方をお話ししましょう。
3 痛みとつきあう
痛み=絶対悪ではありません。温感・冷感・触感などと同じようにからだに必要な情報です。だから痛みと相談しながら体を動かしましょう。動き始めは痛いけれど、だんだん軽くなるようだったらとりあえず動いていいでしょう。反対に動けば動くほど痛みが強くなるようだったら、運動を休止するのが安全です。
経過を見るのも大事です。週~月単位で痛みが軽くなっているのなら、とりあえず運動を続けてみてください。一瞬顔をしかめるような痛みがあっても、そのあと痛みが消えているときは大丈夫なことがほとんどです。うずくような痛みが長く続いたり、夜間睡眠を妨げるような痛みが出るときは運動を休止し、お医者さんに相談してみてください。
筋肉が弱ってくると痛みが出やすくなります。運動不足の人は少しづつ運動量を増やしていくといいでしょう。急に運動量を増やすと、あちこちの故障を招きがちです。
4 関節を元気にするひけつ
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軟骨はざぶとん・・・お尻の下にざぶとんを敷くと楽になるように、骨にかかる衝撃を減らしてくれるのが軟骨です。軟骨を長持ちさせるには①適度な有酸素運動と休養のめりはりをつける②ミネラル・タンパク質に富んだ食事③長く座り続けず(背骨の軟骨=椎間板に良くない)こまめに動いてください。
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骨も重要・・・意外と骨の痛みが関節痛の原因だったりします。ビタミンD不足に注意!
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筋肉はばね・・・ 縄跳びのようなはずむ動きを練習してください。関節にかかる負担をやわらげます。
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じん帯にスローな筋トレ・・・ゆっくりしたスクワットはひざのじん帯を強化します。回数よりも、ゆっくりやることが大切です。慣れたらウェイト(重し)を使って負荷をかけるといいでしょう。
栄養食品について・・・コラーゲンはタンパク質の一種で、皮膚・骨・筋肉などからだのすべてを形づくるもとになっています。コラーゲンそのものを口から摂取しても、消化管内でアミノ酸に分解され、もとのコラーゲンがそのまま体に入るわけではありません。現状では割高な栄養食品だと思った方がいいでしょう。スーパーで売っているゼラチンはコラーゲンの一種です。ゼリーを作って食べるのもいいですが、軟骨・牛すじ・煮こごりなどコラーゲンを多く含む食事をとるのが賢い方法だといえます。コンドロイチン・グルコサミンサプリについての最近の研究では、効果が疑問視されているようです。
ねりまインクワイアラー 187 10キロ歩こう
活発なライフスタイルを続けるために、10キロ歩くことを目標にしてみましょう。この辺からは池袋・所沢・小金井公園などが10キロ圏内です。2・3時間の行程ですから半日運動し、行った先で遊んでください。
ねりまホンゾー No.305
クリ
秋の味覚の代表ですが、日本産のクリは渋皮とりが面倒です。子供のころ、母親が買ってきたモンブランケーキを食べて「こんなにウマいものがあったのか!」と感動しました。以来、モンブランケーキは好物の一つです。生モンブランにも挑戦してみたいです。焼き甘栗もおいしいですね。
おうちエクササイズのめやす
2年ほどにわたるコロナ感染症の影響なのか、以前と比べ体力がめだって落ちた方をクリニックで診ることが増えました。こういうとき、だいじなのはふだんの暮らしの中で体を動かして、体力を上げていくことです。できるだけ安全に、でも効果的におうちエクササイズを行うためのアドバイスです。
1 JABCとは?
ふだんの暮らしの中で実際にやっている動作(ADL)を分類したもので、介護保険などで実際に使われているものです。これを使うと、おおまかなその人のイメージが浮かんできます。
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J 外出できる人。ほぼ自由に動ける人と、ご近所ぐらいは動ける人に分かれます。
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A 家のなかでは動ける人。手助けがあれば外出もする人と、ほとんど家から出ない人に分かれます。
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B 屋内でも手助けが必要な人。車いすへ一人で乗り移れる人と手助けが必要な人に分かれます。
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C 一日ベッドで過ごす人。寝返りができる人とできない人に分かれます。
2 J(外出できる)の場合
キーワードは「忍耐・不屈・楽観的」です。おうちエクササイズが一番向いている人たちですが、そのぶん油断して気がつかないうちに体力を落としているかもしれません。歩くスピードが遅くなった、疲れやすくなった、急に年を取ったと人から言われた。こんな方は要注意です。
リハビリの結果はすぐに出ないようにみえますが、じつはやったらやっただけのことが返ってきます。歩くのがおそくなった⇒速く歩く練習をする、階段が疲れる⇒階段をこまめに登るのようにテーマを決めて動きましょう。しだいに速く、疲れずに歩き回れるようになってきます。
3 A(家の中では動けている)の場合
キーワードは「安全確保」です。つかまり歩きをしている人が多いので、家の中ならなんとかなるものの外に出ると、とたんに危なっかしくなります。歩行器やシルバーカー、つえは役立ちますが、つかまって動くことに慣れすぎて足が前に出なくなっているかもしれません。もう一歩前へ!を心がけて、つかまるのは念のため、あくまで足でしっかりと立つことを心がけましょう。
だんだんとつかまらずに動けるようになったら、外出の準備をしましょう。玄関で腰を下ろし、靴を履き、立ち上がる。ここが関門!バランスを崩して転ばないよう気をつけてください。
家の中では何かにつかまって(転ばないように)スクワットを繰り返します。手が滑ってケガしないようにおしりの下にいすを置いておくといいでしょう。何回やればいいのかというと、足が疲れたーと思うまでやってください。それまでは何回でも、何千回でもやってかまいません。できなくて困ることがあったら、遠慮なく介護保険などの公的サービスを利用しましょう。思ったよりもかんたんです。
4 B(屋内でも手助けが必要)C(一日ベッドで過ごす)の場合
キーワードは「本人・家族だけでかかえこまない」です。ご本人や家族のがんばりだけではどうにもならないことがいっぱいあるはずです。だれかの手助けをもとめることは恥でも何でもありません。ここまでくると外出まで持っていくのには相当の覚悟が必要です。外出時に車いす、ヘルパーさんの手助けや介護タクシーの利用などが必要です。日中ひとりにしてはかわいそうと思って、家族がずっと付き添っているケースがありますが、長い目で見るといろいろ無理が出てきます。公的サービス(介護保険など)を利用し、ケアマネさんや保健師さんに相談してみましょう。一人で悩むよりまず電話一本!区役所や出張所に相談してください。
本人ができることは?体は思うように動かなくても、手助けしてくれる人を手助けすることはできます。できることはする、けれどむりせずに。何もできなくても、「ありがとう」の一言でまわりもほっとするかもしれませんよ。
5 だいじなことは
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じっとしている=なにも変わらないではありません。じっとしているだけで体力はどんどん落ちていきます。プロペラを回していないと落っこちるヘリコプターのようなものと考えてください。コロナ禍でも外に出て歩きましょう。動きましょう。
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脚力がそうとうに低下しても、意外なくらい立って歩けます。けれどもつまずいたり、急によけたときが危ない。ふんばれず転んでしまいます。日ごろからスクワットをしたり、階段の上り下りをして脚力を鍛えておくことです。
落ちるのは筋肉だけではありません。骨も関節も肺や心臓も、おまけに脳だって落ちます。ひさしぶりに体を動かそうと思っても、足が重く、息が切れ、すぐに疲れる。出だしはそんなものです。あきらめずに続けていくこと。これがいちばん大切です。
ねりまインクワイアラー 186 カンゾー先生
誰を診ても「カンゾーが悪い!」と言ったカンゾー先生は、坂口安吾の小説、榎本明さん主演の映画で有名となりました。実際には、地元伊東で有名な名医だったそうです。
人間だから・・・みんなくせがある
だれでも考え方に個人の性向(くせ)があって、その人の持ち味になっています。今回はそのなかで、いくつか気になるくせについて書いてみました。
1 既定路線で走ってしまう
今までこうやってきて、まちがったことはなかった。だから今回もうまくいくだろう。人はどうしてもこんなふうに考えがちです。たしかに十のうち九は、百のうち九十九はそうかもしれませんが、そうでないことも起こります。
マヤ文明の滅亡の理由はおどろきです。もともと雨の少ない土地だったのですが、貯水池などの工夫で農業を行い長らく繁栄してきました。ある年、雨が長く降らないときもマヤの人たちは(またなんとかなるだろう)と楽観視していました。ところが想像を上回る長期の干ばつが続き、農業システムが崩壊して住民が町から逃げ出した結果、マヤ文明は数年で滅んでしまったのです。
街角の小さなクリニックですが、はたからみると同じようなぎっくり腰や五十肩を相手にしているように見えるかもしれません。でもみんな違うし、なかにはむずかしい病気がまぎれこんでくることもあり、既定路線で仕事をしないように気を付けています(でもむずかしい・・・ときもありますね)。
2 聞きたいように聞いてしまう
あれ!そんなこと言ってないのに?いいえ、そう言ったよ!よくある口げんかですよね。じつは会話のとき、わたしたちは厳密にあいてのことばを聞いているわけではありません。言葉をいくつか拾って、そのときの状況とか過去の似たような会話体験を参照しながら記憶しています。だから、話し手の意図とはちがう形で相手が記憶するのは普通にあることです。
おどろくのは文章のようにしっかりと形が残るものであっても、読んだ人の解釈の仕方で意味が変わってしまうことです。ときには書いた人が言いたかったことを、読んだ人がまるっきり反対に解釈する場合もあり、文学的な内容であるほどあやふや、不確かになる気がします。
医療の世界も例外ではなく、「インフォームド・コンセント」(説明にもとづく合意)で、お医者さんと患者さんがきちんと理解しあえているかは?のケースがあるかもしれません。まずはわからないときに遠慮なく質問することで、少しでもギャップを縮めてみましょう。
3 自分基準がきつすぎる
医者の側から見るとそうとうに良くなっているのに、患者さんは不満げということはよくあります。こまかく聞いてみると、たしかに完ぺきでないかもしれない。でも、仕事も運動も問題なくできていて、薬を飲む必要もないとなればOKと考えてみてはいかがでしょうか。
中高年の人と話して、「治る=20歳のからだにもどる」と思っている人が意外と多いのです。だれでも年を取ればくたびれます。あちこちすり減ります。それでもきちんと手入れをすれば元気に暮らせます。あとは気持ちの問題、からだが完ぺきだから楽しいのではなく、じぶんのからだを自分なりにせいいっぱい使っているから楽しいのだと考えましょう。
完ぺきであることと、幸せは別です。ときにはおおらかであることも大切ですよ。
4 物事の道理をわきまえている(ほんとう?)
たしかに年をとれば経験が深まりますが、経験が足かせにもなることははじめにも書きました。わたしたちの判断力は、自分で考えているほど合理的ではないことが認知科学の研究からわかっています。自分があたりまえだと思っていることを、ほかの人はどうしてあたりまえと考えていないのかというと、だれにとってもあたりまえのことなどこの世に存在しないからです。
今はやりの「多様性」でも、多様性を認めるということは、「おまえの意見などくそっくらえだ!」という人も認めるということなのです。あなたの道理はほかの人の道理ではない。このことを自覚して、意見が異なるからコミュニケーションが必要なのだと思ってください。
自分がやらないと決めていることがほんとうはあなたに向いているかもしれません。たとえば料理や家事はからだもあたまも使います。トライしてみては?興味ないと思っていたことでも、やってみたら意外と肌に合うかも?なにごともゼロベースで、もっと心をひろく、柔らかく使ってみ
ねりまインクワイアラー 185 ダンスの勃興
わたしがもっとも遠い世界のことだと思っていること。それはダンスです。子どものころからこまかな動きをするのは苦手でした。でも最近のインスタグラムやフェイスブックを見てびっくり!こんなにいろいろなダンスがあるのに驚きです。アラブのはげしい身をたたくような動き、中央アジアのダンスでは女性の空中をすべるような動きに魅了されました。アイリッシュ・ダンスのリズミカルな足の動きはちょっとまねしたい気が・・。ネイティブアメリカン(インデアンと呼ばれていた)のダンスを見ると、遠い昔のアジアとのつながりが見える気がしました。こうして見てみると、日本の踊り(なかでも阿波踊り)もなかなか魅力的ですね。
整形外科・漢方の使い方
まだ医者になりたてのころ、苦しまぎれに漢方を出したらびっくりするくらい良くなった経験があります。それからまじめに勉強をして漢方の資格を取り、いまでも漢方を愛用しています。
1 冷えをとる
思い出の処方第1号は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)という冷えをとるくすりでした。イメージで言うとやせて色が白く疲れやすい人向けです。女性によく使われる処方ですが、当時はまったくそんなことは知りませんでした。後で出てくるお血体質があって全体に新陳代謝が落ちているときに奏功します。
冷えをとるという言い方は漢方の世界ではしょっちゅう出てきますが、じつは冷えをとることを目的としたくすりは漢方薬にしかないのです。そのほかの薬はどちらかというと冷えを作る薬です。代表は鎮痛剤(鎮痛消炎剤)で、悪いところをやっつける(炎症を押さえつける)作用があり、急場に役立つ薬です。でも長く使うとからだの新陳代謝を抑え、いろいろな副作用が出やすい薬でもあります。強健な体質の人では影響が出にくいけれど、体力に自信のない人では逆効果になることもあります。
こんなときに、まずは新陳代謝を上げて、病に打ち勝つ体力を養う。いっけん遠回りに見えても、治るからだにもどしてあげればおのずと治ってくる。漢方を知るまでは、そんな考え方をしたこともなく、学校や病院でも聞いたことがありませんでしたから、とても新鮮に感じました。
2 痛みなのに「イライラ」をとる
漢方の世界では、いっけん症状に関係のなさそうな薬を出して著効することがあります。仕事がら痛みの相談が多く、漢方を利用する機会が多いです。
ここのところ面白いと感じているのが抑肝散(よくかんさん)というくすりです。本来はイライラして気持ちがたかぶりよく眠れないという人に使いますが、神経痛がなかなか取れないと訴える方に奏功することがあります。ご本人の感覚では「痛みが取れないからイライラするんだ!」となるのですが、抑肝散を処方して効いてくると、顔の表情が変わります。全体に表情が硬く、目が怖い印象だった人がやさしい顔になります。家族から見ても同じ印象のようです。
けっして安定剤や睡眠剤は入っていませんが、研究により生薬成分が脳の働きを整えてくれることがわかってきました。痛みが生じるメカニズムの中で、脳の影響がとても強いことがわかっていますから、これはうなずける話です。実際にはプレガバリンという神経痛のくすりと併用することで効果が高まるようです。
また、抑肝散は認知症の方で落ち着きがなく怒りっぽくなった方にもよく効きます。副作用がないので使いやすい薬です。
3 血の巡りを良くする
脂っこい食事、冷房の効きすぎるオフィスで座りっぱなしの仕事。運動不足で、汗を思いっきりかく機会も少ない。睡眠不足で疲れが抜けきらない。思い当たる方はいませんか?現代の生活スタイルは血の巡りを悪くするようにできています。以前「ヒトのトリセツ」でも書いたように、木の根っこを掘ったり草の実をとったり、いのししを追いかけたり追いかけられたりするように人間の体はできているので、じっと座りっぱなしでいれば調子が悪くなるのは当然です。
血液の流れが滞り、栄養や酸素がすみずみまで行きわたりにくい。よどんだ川のように老廃物がたまり、体が重くあちこちが痛い。内臓の働きが悪くなり、さまざまな不調が出る。調子が悪くて動かなくなれば、悪循環でさらに調子をくずす。
こんな状態を漢方では「お血」と呼びます。お血は万病の元と言ってよいかもしれません。先ほどの当帰芍薬散や有名どころでは桂枝茯苓丸、桃核承気湯などがお血の薬です。お血の有無は顔や手足の色、舌の色や腹部の圧痛などで調べますが、あとは体質に合わせて処方すればいろいろな症状に効果的です。
4 くすりに期待しすぎない
漢方もしょせんはクスリ、クスリですべてが解決できるわけではありません。当帰芍薬散のお話では、ちょうど時間が空いた時の受診だったため、いつもよりゆっくりと話が聞けたのがよかったかもしれません。いままでの治療のいきさつや困ったこと(かなり同情して伺いました)をはじめてちゃんと聞いてくれたお医者さん(ただの新米?)だったそうですから、それで気持ちがほどけたのかも?もしかしたらクスリは二の次だったのかな?と思っています。
そのほかの場合でも、たとえば神経痛では症状の治りやすい姿勢や寝方を指導して少しでも快方に向かえるようにしています。在宅ワークで運動不足になっている方には、まめに動く、「なんちゃって通勤」(通勤だと思って朝晩運動すること)などをおすすめしています。
くすりも治療の一部ですからだいじに思っていますが、くすりで解決できないこともいっぱいあります。くすりですぱっと治してほしい!という期待に困った!という経験もまた多いのです。
ねりまインクワイアラー184、
3回・4回目のワクチン接種はむだなのか?
結論から言うとむだにはならないようです。つぎつぎと出てくる新しいウイルス株への免疫力も高めるのだそうです。でも副反応はいやだし、悩むところですね。
「疲れ」を読み取る
最近のスマートウォッチには心拍計が内蔵されていて、これを利用してからだの疲労度を知ることができます。心拍変動という仕組みを使って自律神経の働きを計るのですが、これがなかなか面白いのです。自分が感じている調子と機械が示す疲労度がだいたい同じの時もあれば、「あれ?」と思うくらいちがうこともあります。今回は自分の「疲労度を知る」がテーマです。
1 テッパンは「安静時心拍」
からだの疲れを計るうえで、むかしから知られている方法です。朝まだおふとんから出る前に脈を計ります。10秒で打つ脈数を6倍すると安静時心拍になります。私の場合、調子のいいときは41回/分くらい、不調の時は50くらいまで上がるときがあります。いままでの経験上、調子の良しあしに一番合うのがこれです。
また、有酸素運動の能力を見るのにもいいので、スポーツをしている方はときどき計ってみるといいですよ。運動を続けると少しづつ安静時心拍数が下がっていきます。心臓が丈夫になって、少ない回数で十分に血液を送り出せるので心拍数が下がるわけです。
困るのは、寝ぼけているとなかなかじょうずに測れない点です。心拍数計測機能のついた腕時計も値段がこなれてきましたから、これをつければ、起き抜けに見るだけなのでたいへん便利です。トイレに行ったり、テレビを見るだけでも心拍数は上がるので注意してください。つぎにお話しするスマートウォッチならすべて問題解決です。
2 最新テクノロジーはすごい
最近のスマートウォッチ(デジタル時計の進化版)は毎日の歩数を数えたり、行き先を教えてくれたりといろいろなことができるのですが、心拍数や血中酸素飽和度(体内の酸素量のめやす)まで計ってくれます。これを利用してからだの疲労度が測れるようになってきました。正確には脳の疲労度なのですが、いまでは脳の疲労が一番の問題だとされているのです。
仕事が忙しかったり、運動をたくさんすると、数字がどんどん下がります。気持ちよくたっぷりの睡眠をとるとめきめきと疲労が取れてきます。睡眠が短かったり、浅かったりすると十分な回復ができません。食べ過ぎたり、お酒を飲むとあきらかに回復が遅くなるのにはびっくりしました。お風呂はいいのですが、長湯はあまりよくなさそうです。
運動をすると確かに疲労度が強くなるのですが、運動を続けていくと疲労しにくくなってくるのもわかります。でも運動を多くした日にはたっぷりと睡眠をとる必要があることもわかりました。というようにとてもわかりやすく疲労度を教えてくれるので、いまでは毎日の相棒になっています。
3 手足は鍛錬ができる
42キロを超えるマラソンがウルトラマラソンです。マラソンを走るだけでも四苦八苦なのに、それ以上、なかには何日もかけて何百キロも走る大会もあるくらいです。ウルトラに出れば、疲れがどういうものかよーくわかります。足を出そうと思っても前に出ません。手を振るのも嫌になってきます。疲れがたまってバランスが取れなくなり、かしいだまま走っている人を見かけました。ところが何とかなるのですね、これが。ゴール前の歓声が聞こえてくると、またみんな気力を振りしぼり、走り出します。ゴール!!これでやっと走らずに済む!というのがわたしの正直な感想でしたが、なかにはこれがやみつきになる人がいます。そういう方たちに話を伺うと、やっぱり慣れるのだそうです。筋肉、骨や関節もしだいに鍛えられ、はじめほどはつらくなくなるらしい。鉄人の誕生ですね。
こういうときの疲労を末梢疲労といいます。末梢疲労は計測しにくいものの、経験すればいやでもわかります。対して中枢性疲労は脳の疲労です。さて、脳は鍛えられるのかな?
4 脳の鍛錬は?
じつは持久系アスリート(マラソン選手など)のトレーニングでだいじなのはメンタルであることが最近の研究で分かっています。脳はからだが絶対無理しないようにブレーキをかけてきます。これが疲労の正体です。このブレーキを使うことで体が壊れないようにする。でもマラソンやウルトラのように極限を競うスポーツでは、ときにはブレーキをはずしてでもがんばる必要がある。いわばリミッターをはずす練習が脳の鍛錬であり、パフォーマンスの秘密なのです。
こういう特殊な話ではなく、一般の方が脳を鍛えて疲労しにくくなることは可能なのでしょうか?調べた限りでは、まだはっきりとしたことはわかっていないようです。ただし、脳の仕組みを考えると疲労しにくくなるヒントはありそうです。ひとつひとつ順番にテキパキ片付けていくこと。同時にいくつもの用事を抱え込まず、やるときはやる、休むときは休む。たくさんのアプリを開いたままだとスマホの動きが悪くなるように、限られた案件を集中して取り組む。そしてたっぷりと寝ることです。
ねりまインクワイアラー 183 ブルシットジョブ
ブルシットジョブとは「まったく役立たずの仕事」のことです。誰のためにもならず、世の中の役に立っているのかさっぱり見えない仕事。みんな思い当たる仕事がありませんか?反対に人の役に立つ、わかりやすい仕事がいっぱいありますが、金銭面からみると意外に評価されていない。お金を考えると、ブルシットジョブを続ける方がいいというのが現代の不思議の一つかもしれません。
命と元気のはざま
わたしも還暦を過ぎたので、将来のことなどときどき考えることがあります。体があちこち痛み、走っても以前ほどは頑張れなくなってきました。今回は長生きと生きがいについて考えてみたいと思います。
1 医療は「生かす」のが目的
ヒポクラテスの誓いやらなんやら崇高な理念を学び巣立つ医者の卵たちも、いつのまにか俗世間の垢にまみれてくるのですが、「命がいちばん」というテーゼ(暗黙の約束事)だけはみな頭に叩き込まれています。それでいい場合が多いものの、もう少し深く(あるいはゆるく)考えてみては?とも思っています。
医療が進み、かなりの人たちが長生きできるようになりましたが、長生きができればできるほどいいのだろうか?という疑問も湧き上がってきました。もしも長生きだけを目標にするなら、少食を旨とし、運動そのほか体にかかるストレスを最小限にしてどちらかといえば不活発な毎日を送った方が長生きできることが分かっています。でも、ほんとうにそれが私たちの目標でいいのでしょうか?
2 現場はフクザツ
骨や関節を専門にして医者をやってきましたが、若いころは町の救急病院で全科の宿直をしたり、三次救急の病院でも働きました。リハビリを専門として、けがや病気が落ち着いた後の患者さんの相談に携わることもありました。
そういう経験の中で「とりあえず助ける」だけでいいのかな?という疑問もわいてきました。夜中の患者さんはさまざまで、ぜんそくで苦しむ小さいお子さんから、自分をコントロールできず衝動に走り体を壊したり、事故にあった人までバラエティに富んでいました。けがの治療は終わったものの後遺症で全く身動きができず、何もできないことにイラついたり落ち込む人も見てきました。
くりかえし大きなケガにあいながらもあきらめずにレースに挑み続けたオートバイレーサー、長患いででまったく体を動かせないにもかかわらず周りの人や看護婦さん・医者に優しかった患者さんなど、いろいろな思い出があります。医者も人間ですから、毎日の仕事の中で元気づけられることもあれば、嫌な思いをすることもあります。立派な人を見て尊敬するし、この人は?と思うことだってあります。
多かれ少なかれほとんどのお医者さんが同じような経験をしているでしょう。立場や仕事内容で意見の濃淡はあるでしょう。でも多くのお医者さんたちが、長生きを目標にするのではなく、その人なりに充足して生きていくことが大切だと思っている。わたしはそういう印象を持っています。
3 「生かす」から「活かす」へ
年を取ってくるとあちこち故障が増えてきます。でも使えるところは使った方がいいです。患者さんたちに「あなたのからだは中古自動車と同じ。」「まだまだ使えるから、思い切り乗り回してください。」とお話ししています。
おぎゃあと生まれて成長期を過ぎたら、それ以降あなたのからだは中古品です。でもかけがえのない一品なので、手入れも怠らないけれど、使わなければもったいない!使って使って、使い倒す。あらゆる部品が擦り切れて、いよいよ自動車(からだ)の寿命が切れるとき、「よく使って、楽しかったなあ!」と思えるようになりたいものです。
だから長生きするかどうかは神様・お釈迦さまにおまかせして、自分が好きなことを、やりたいことをやってください。医療は人生の一側面に過ぎないのだから、影響されすぎないように気を付けましょう。
4 できることから始めよう
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ゆとりをもってー高名な画家さんの作品を見ると、年が進むにしたがって作風がどんどん自由になっている方が多いようです。筋道をしっかり歩むのでなく、どんどん離れていく。同じように、決まりごとから離れていき、自分なりの楽しさを見つけていきましょう。
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ちょっとやせがまんー少々の痛みなら涼しい顔で動く。くたびれても、自分よりくたびれた人がいたら助ける。見守ってあげる。いままでより一歩でもいから動く。お金に関係なく、なにか世の中の役に立つことを(ちょっとだけ)やってみる。
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習慣化させるーたくさんの方を診て思うのは、若い時からやっていたことは年を取ってからも続けられるようです。歌や踊りであれ、釣りやゴルフであれ、習慣になったことなら年をとっても続けている方が多いです。直接体を動かすような趣味でなくとも、続けていれば体を使う用事が生まれてくるものです。なんでもいいので続けてみましょう。
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ボケなき徘徊―前号でも書いたように人間は探索する生き物です。いくつになっても外に出るから新しい発見があります。用事がなくても外に出て、あちこち見物に行きましょう。
ねりまインクワイアラー 182 スマホ・パソコンはこわくない
生まれたときからスマホがある世代といまだに慣れない世代の開きをデジタル・デバイドといいます。いまのスマホはやってみるとかんたんです。使えば世界が広がりますよ。
まず一歩から始めよう
歩けることが一番大事だと深く考えることもなく思っていましたが、「人生は一回きり」と考えれば、もう少し柔らかくとらえてもいい気がします。コロナのため外出が極端に減り、VR(バーチャルリアリティ)やネトフリ・ビデオゲームが楽しみの人も多い現在、もう一度歩くことの意義について考えてみました。
1 歩きは本性
仏教には輪廻転生という考え方があり、人はいろいろなものに生まれ変わると言われています。大空を飛ぶ鳥や海の中を泳ぐイルカやクジラに生まれ変わったら?あるいはアリやダニ、もっと微小なクマムシに生まれ変わったら?
なったらなったで、しっかり生き続けるはずです。人間と異なり深く考えることはできないのですから、むしろ悩まずに虫生を全うできるかもしれません。でも人間は考える生き物ですから、困ったり喜んだりを繰り返しながら生きていくのが自然なのでしょう。もう一つ、歩くことも人間の本性の一つだと思っています。歩くことで世界を探索し、必要なこと・楽しいことをみつける。生まれた瞬間から体に組み込まれている仕組みなのです。
2 コロナ下の経験から
2020年緊急事態宣言が出て以来、極端に外出せず、体を動かさない人が増えました。各種イベントやスポーツ大会は軒並み中止、国内海外問わず旅行はできなくなり、飲食店は休業や営業短縮を迫られ、各種学校は休校・オンライン学習への移行を迫られ、会社では通勤による感染機会を減少させるため在宅ワークへの移行が進みました。
以前はとても元気だったのに、久しぶりにお会いすると驚くほど弱っている人が増えました。ふしぶしの痛みを訴える方が増え、転倒による骨折も増えた印象があります。表情が乏しく、話が要領を得なくなり、精神的にもかなり弱った人が増えている印象です。
二本足で歩けるように何百万年もかけて進化してきた私たちのからだは、歩き回れるように作られています。というよりも、歩かざるを得ないように設計されています。
たとえば歩くことで腸がゆすられ、腸内細菌の働きが促進されて消化が進み、便通が促進します。調子がいいときの腸内細菌はその分泌物を使って脳と連絡を取り、脳の働きを活性化することもわかってきました。
そのほか骨も血管も各種の臓器も同じように脳との情報のやり取りをしており、歩くことですべてが元気になり、お互いに調整しあって体を最善の状態に持っていくことができるようになっているのです。ですから、体のメカニズム上歩くことがたいせつです。歩くことを人生の目標にする必要はないけれど、充実した毎日を送る下支えとして、やっぱり足腰は鍛えたほうがいいと思います。
3 楽しみをみつける
江戸東京博物館に行ったら東海道53次のすごろくをみつけました。ほかに五十三次の名所絵や旅行ガイド(弥次喜多ものが有名)もあり、庶民の間で歩く旅行が人気だったことがよくわかります。日本橋から京都まで約560キロ、男性なら2週間、女性でも3週間くらいで歩いたそうですから、毎日平均30-40キロは歩いた計算になります。この話をすると多くの人がむかしのことだから・・・という顔をするのですが、わたしのひいおじいさんは江戸時代の生まれだったのです。いま10-20代の人たちだって、ひい・ひい・ひいおじいさんまでさかのぼれば江戸時代の生まれなんですよ。長い歴史の中で見れば、つい最近までみんなこんな歩き旅をしていました。そしてとても楽しんでいたのです。
4 歩き始めのアドバイス
コロナ対策も変化していますから、今年は外に出ましょう。基本的な感染対策を忘れずに動き回ることは可能です。今のままでいると感染予防のメリットより運動不足のデメリットが上回る恐れがあります。 動き始めるに当たってのアドバイスを挙げてみます。
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これっぽっち?くらいから始める…想像以上に体力は落ちているのでごく軽めから始めましょう。
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すぐに息が上がる…心筋・呼吸筋も弱っていますから、あせらずに続けましょう。
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長い距離が歩けない…ちょっとずつ距離を伸ばしましょう。筋肉のミトコンドリア(充電池みたいなもの)はゆっくりと増えていきます。
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疲れる…週に1・2回疲れましょう。それはいいトレーニングです。
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からだが痛い…動けていれば少々痛くてもOKと考えましょう。痛みに過敏にならないこと。
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やる気がしない…何かをやっているつもりになるだけでトレーニング効果があるというおもしろい理論があります。頭の中でゴルフのスイングを練習するだけでもトレーニング効果があるそうです。これなら何でもやり放題。やりたいことを思い描こう。そのうちほんとうに体を動かすチャンスが巡ってきます。
ねりまインクワイアラー 181 宇宙インターネット
人工衛星を使ってネット環境を整備する事業が本格化してきました。離島や山のてっぺんでも動画サービスが見れるようになります。キャンプ場で喜ばれそうですね。
「ロコモっぽさ」を自覚する
毎日患者さんに接していると、直接の相談事とは別に患者さんの身のこなしが気になります。40~50歳代、人生でもいちばんあぶらの乗った時期なのに「だいじょうぶ?」と思うのですが、余計なお世話なのであえて口にはしません。でも気になるので、今回は少しだけ触れてみましょう。
1 ロコモティブ・シンドローム(ロコモ)とは
整形外科学会が言い出したことばで、ロコモティブ(locomotive)を辞書で調べると「蒸気機関車」と出てくるので、はじめは「はあ?」と思いました。実際は筋力低下などで移動能力が低下した状態のことを指す用語です。
というと、「おれは運動嫌いだし、家でおいしいものを食べてのんびりするのが大好きだからそんなに歩かなくったっていいんだ!」と考える方がいるかもしれません。でもロコモは、単に歩きづらくなること以上の意味を持っています。
筋肉や骨だけでなく、内臓・血管・脳・皮膚などからだのあらゆる装置が運動することを前提に作られています。だから動かなくなるといろいろとまずい事が起きるのです。くすり・注射や手術だけが医療だと思わずに、運動もたいせつだ!と強調するために作られた用語です。
2 その場で寝返り
ベッド(診察台)のうえですばやく寝返りができません。あお向けから横向き、そしてうつぶせになります。その逆もやってみましょう。狭いベッドの上なので、肩やおしりの位置を瞬間的にずらさないとベッドの横から落ちそうになります。子供や20代の人なら数秒でできますが、それ以上の人では数十秒かかることもあります。
体幹(肩まわりから腰までの部分)の筋肉を自在に動かせているか?を見る方法です。重いものを持ち上げたり、速く歩いたり走ったりするとき、じつは体幹をしっかり動かせていることが必要です。体幹の動きが鈍いということは、すべての動きが鈍いということになります。うまくできない人はまだ「ロコモティブ・シンドローム」ではないかもしれませんが、そのとば口にさしかかっていると言えるでしょう。
うまくできなかった人は、つぎに「おしり歩き」に挑戦してみましょう。文字通り、足を使わずおしりで歩きます。足をのばしてすわり、両手を肩口で抱えます。足をできるだけ使わず、左右のおしりを交互に前に出して進みます。後ろに進んだり、左右に向きを変えることもできます。
どちらも問題なくできた人は、「うつぶせダッシュ」にチャレンジしてみましょう。ただし運動不足を自認する人はケガの危険もありやめたほうが無難かも。やり方は簡単、うつ伏せに寝ころびます。そこから立ち上がり、足元方向に向けてダッシュしましょう。立ち上がり方はなんでも結構、10~50メートルくらい走って終わり、距離を決めて何秒でできるか測ればアジリティ(瞬発力)の目安にもなります。
3 一本線上を歩く
歩道のブロックの継ぎ目などを利用して、一本の線上に左右の足を置いて歩きます。歩幅を小さくゆっくり歩けばバランス感覚の練習、歩幅を大きくとれば骨盤の動きを使ったダイナミックな歩き方の練習になります。
特に体の故障もないのに、足の着地が左右に揺れて、よたよたと歩く人がいます。見た目も若々しくないのですが、下半身の柔軟性不足だったり、体幹や股関節の筋力低下のサインかもしれません。またバランスを司る小脳・脳幹・前庭の機能低下かもしれないので、気持ちを集中して歩く練習をしましょう。
おしりの筋肉が固い人も一本線歩きは苦手なはずです。両足をそろえ、両膝をくっつけてすわったら、前こごみになって左右の外くるぶしに触れてみてください。楽に触れる人はだいじょうぶ、手が届かなかったり両足が開いてしまう人はおしりの筋肉が固くなっています。股関節まわりのストレッチをしましょう。またおなかが大きすぎて前屈がしずらい人もいますが、さすがに太りすぎです。運動とダイエットを両輪にしてやせましょう。
4 椅子からゆっくりと立ち上がる
熱気球が膨らみ始め、ゆっくりと地面から浮き上がっていく様子を想像してください。あんな感じにふわあっと立ち上がると優雅で、かっこいい。皇族やハリウッド・スターの記者会見を思い浮かべれば、なんとなくわかるのではないかしら。
フラッシュがバチバチとたたかれる前で行われる記者会見。その当事者が自分だと想像してみましょう。にこやかに微笑みながら、静かに座り、立ち上がる自分。さて、現実にはどしんと座り、横にすわっている人がぴょんと持ち上がったりしませんか?膝に手をつき、「どっこらしょ!」って言いながら立ちあがっていないかな?きれいな身のこなしをしている人は見えないところで努力しています。逆にいえば、あなたも目に見えないところで努力すれば、また若々しい自分に戻ることができます。病院に行って妙なハゲじいに「やせろ!」とか「運動しろ!」と言われることもありません。オミクロンが落ち着きつつある今、ロコモ予備軍から脱出する絶好の機会が来たと考えましょう。
ねりまインクワイアラー 180 世界のコロナ状況
コロナ感染者が一時世界有数となったブラジル、大きな生活制限をしなかったスウェーデン、比較的早くに防疫をゆるめたイギリス。いずれも今は感染者が減少しているようです。さて、まん防はどうなるのかな?
無理なくキレイに歩こう!
他にすることがなかったためか、昨年はかなり走りました。やりすぎで、しゃがむときにひざの痛みを感じるようになりました。ところがこれからお話しするウォーキング・テクニックでは、痛みなしで歩くことが可能です。体重がかかっているあいだ、ひざがまっすぐに伸びているのがキー・ポイントです。
1 ウォーキングとランニングのちがい

図A 図B 図C
図ではこんな感じ。 AとCはウォーキング、Bはランニングです。 Aでは、着地のとき膝が伸びています。ちょっとむずかしいが理想的なフォーム。Bでは一瞬、両足が離れていて、これがランニング。Cでは着地のとき、膝が曲がっています。曲がるほど膝への負担が強くなる歩き方です。
Aは練習が必要ですが、一度習得するとなめらかで負担の少ない歩行ができます。
実際にはCの歩き方が多いのですが、この歩き方だと効率が悪く、速く歩こうとすると疲れやすいです。
2 ウォーキングの基本
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両足をそろえてまっすぐ立ちます。
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片足を床からちょっとだけ浮かし、膝を伸ばしたまま前後にぶらぶらとゆすってみましょう。力を抜いてできるまで練習してください。
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慣れてきたら、前に足が出たときにかかとからそっと着地します。何回か繰り返してください。
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反対側の足でも②③をやってください。
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次に前足と後ろ足をともに床につけたまま、交互に体重を乗せる練習をします。左右いずれも慣れるまで続けましょう。
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いよいよ次の一歩を踏み出します。前に踏み出した足に体重を乗せたら、後ろ足を前に振り出します。そしてかかとから着地します。
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着地の瞬間ひざが伸びていることを確認しながら数歩歩いてみます。慣れたら距離を伸ばしていきます。
3 ウォーキングのこつ
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前こごみにならない…はじめのうち、どうしても足元を確認しようとして前こごみになりがちです。からだをまっすぐに起こし、10メートルくらい先の地面を見るようにしてください。
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力を抜く…とくに肩から余計な力を抜きましょう。肘を直角くらいに曲げたまま、腕を振り子のようにゆすってください。
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足をからだの真下にまとめる…必ずからだの真下、動く方向に沿って着地することを心がけます。両足が一本の線上を通るのが理想ですが、はじめはこだわらないほうがいいでしょう。
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着地の瞬間、上にはねるのではなくかかとを後ろに押し出します。後ろ足を進めるとき、足うらが地面すれすれを通るのを意識してください。
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胸を張りすぎず、前こごみにもならず、一番自然な姿勢でできるだけリラックスして歩きましょう。呼吸が楽にできているかがだいじです。
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ひざは力を入れて伸ばすのではなく、下肢全体をブランコのように前に振って、伸びたところで地面にかかとを置きます。「膝カックン」されたときみたいに、力が抜けている感じです。だから後ろ足が前に進むとき(地面についていない間)の膝は曲がっています。
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いろいろやってみながらスマホで撮影、自分で見てみるとわかりやすいです。
4 ウォーキングの楽しみ
ふつうのウォーキングは時速4キロくらい、この歩き方だと時速5,6キロ以上、その気になれば時速10キロ以上で歩くことができます。だからスポーツのクロストレーニングとしても十分な運動になりますよ。
基本はモデルウォークとほとんど同じ、だから見た目もばっちりです。着地の衝撃が少ないので、足腰の故障を抱えている方や、ケガのリハビリ中の方にもいいでしょう。ただし骨そのものに痛みがあるケース(疲労骨折や骨挫傷など)には無効ですから、痛みがなくなるまで運動は辛抱してください。説明がいま一つわかりづらかった方は、ユーチューブで「モデルウォーク」「ウォーキング」などの動画をぜひ参照してください。ウォーキングの講習会もあちこちで開かれていますよ。
ねりまインクワイアラー 179 カキの筋トレ
殻付きのカキは日持ちが短いのが欠点です。そこで生育中にときどきカキを空気中にさらし、貝殻を強く閉める練習をさせたところ、貝柱が太く日持ちのいいカキが出来上がったそうです。カキにも筋トレが効くのですね。