目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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松ぼっくり通信電子版
高野台松本クリニックの院長、松本不二生(ふじお)先生が体にまつわるあれこれを書いた松ぼっくり通信。読めばカラダに役立つ、読むサプリです

高野台松本クリニック 177-0035 練馬区高野台1-3-7NFプラザⅡ三階 
℡03-5372-7773

(整形外科・リハビリテーション科・漢方外来

松ぼっくり通信

松ぼっくり通信 2022年10月号

おうちエクササイズのめやす

 2年ほどにわたるコロナ感染症の影響なのか、以前と比べ体力がめだって落ちた方をクリニックで診ることが増えました。こういうとき、だいじなのはふだんの暮らしの中で体を動かして、体力を上げていくことです。できるだけ安全に、でも効果的におうちエクササイズを行うためのアドバイスです。

1 JABCとは?

 ふだんの暮らしの中で実際にやっている動作(ADL)を分類したもので、介護保険などで実際に使われているものです。これを使うと、おおまかなその人のイメージが浮かんできます。

  • J 外出できる人。ほぼ自由に動ける人と、ご近所ぐらいは動ける人に分かれます。

  • A 家のなかでは動ける人。手助けがあれば外出もする人と、ほとんど家から出ない人に分かれます。

  • B 屋内でも手助けが必要な人。車いすへ一人で乗り移れる人と手助けが必要な人に分かれます。

  • C 一日ベッドで過ごす人。寝返りができる人とできない人に分かれます。

2 J(外出できる)の場合

キーワードは「忍耐・不屈・楽観的」です。おうちエクササイズが一番向いている人たちですが、そのぶん油断して気がつかないうちに体力を落としているかもしれません。歩くスピードが遅くなった、疲れやすくなった、急に年を取ったと人から言われた。こんな方は要注意です。

リハビリの結果はすぐに出ないようにみえますが、じつはやったらやっただけのことが返ってきます。歩くのがおそくなった⇒速く歩く練習をする、階段が疲れる⇒階段をこまめに登るのようにテーマを決めて動きましょう。しだいに速く、疲れずに歩き回れるようになってきます。

3 A(家の中では動けている)の場合

キーワードは「安全確保」です。つかまり歩きをしている人が多いので、家の中ならなんとかなるものの外に出ると、とたんに危なっかしくなります。歩行器やシルバーカー、つえは役立ちますが、つかまって動くことに慣れすぎて足が前に出なくなっているかもしれません。もう一歩前へ!を心がけて、つかまるのは念のため、あくまで足でしっかりと立つことを心がけましょう。

だんだんとつかまらずに動けるようになったら、外出の準備をしましょう。玄関で腰を下ろし、靴を履き、立ち上がる。ここが関門!バランスを崩して転ばないよう気をつけてください。

家の中では何かにつかまって(転ばないように)スクワットを繰り返します。手が滑ってケガしないようにおしりの下にいすを置いておくといいでしょう。何回やればいいのかというと、足が疲れたーと思うまでやってください。それまでは何回でも、何千回でもやってかまいません。できなくて困ることがあったら、遠慮なく介護保険などの公的サービスを利用しましょう。思ったよりもかんたんです。

4 B(屋内でも手助けが必要)C(一日ベッドで過ごす)の場合

キーワードは「本人・家族だけでかかえこまない」です。ご本人や家族のがんばりだけではどうにもならないことがいっぱいあるはずです。だれかの手助けをもとめることは恥でも何でもありません。ここまでくると外出まで持っていくのには相当の覚悟が必要です。外出時に車いす、ヘルパーさんの手助けや介護タクシーの利用などが必要です。日中ひとりにしてはかわいそうと思って、家族がずっと付き添っているケースがありますが、長い目で見るといろいろ無理が出てきます。公的サービス(介護保険など)を利用し、ケアマネさんや保健師さんに相談してみましょう。一人で悩むよりまず電話一本!区役所や出張所に相談してください。

本人ができることは?体は思うように動かなくても、手助けしてくれる人を手助けすることはできます。できることはする、けれどむりせずに。何もできなくても、「ありがとう」の一言でまわりもほっとするかもしれませんよ。

5 だいじなことは

  • じっとしている=なにも変わらないではありません。じっとしているだけで体力はどんどん落ちていきます。プロペラを回していないと落っこちるヘリコプターのようなものと考えてください。コロナ禍でも外に出て歩きましょう。動きましょう。

  • 脚力がそうとうに低下しても、意外なくらい立って歩けます。けれどもつまずいたり、急によけたときが危ない。ふんばれず転んでしまいます。日ごろからスクワットをしたり、階段の上り下りをして脚力を鍛えておくことです。

落ちるのは筋肉だけではありません。骨も関節も肺や心臓も、おまけに脳だって落ちます。ひさしぶりに体を動かそうと思っても、足が重く、息が切れ、すぐに疲れる。出だしはそんなものです。あきらめずに続けていくこと。これがいちばん大切です。

ねりまインクワイアラー 186 カンゾー先生

誰を診ても「カンゾーが悪い!」と言ったカンゾー先生は、坂口安吾の小説、榎本明さん主演の映画で有名となりました。実際には、地元伊東で有名な名医だったそうです。

松ぼっくり通信 2022年 9月号

人間だから・・・みんなくせがある

 だれでも考え方に個人の性向(くせ)があって、その人の持ち味になっています。今回はそのなかで、いくつか気になるくせについて書いてみました。

1 既定路線で走ってしまう

 今までこうやってきて、まちがったことはなかった。だから今回もうまくいくだろう。人はどうしてもこんなふうに考えがちです。たしかに十のうち九は、百のうち九十九はそうかもしれませんが、そうでないことも起こります。

マヤ文明の滅亡の理由はおどろきです。もともと雨の少ない土地だったのですが、貯水池などの工夫で農業を行い長らく繁栄してきました。ある年、雨が長く降らないときもマヤの人たちは(またなんとかなるだろう)と楽観視していました。ところが想像を上回る長期の干ばつが続き、農業システムが崩壊して住民が町から逃げ出した結果、マヤ文明は数年で滅んでしまったのです。

 街角の小さなクリニックですが、はたからみると同じようなぎっくり腰や五十肩を相手にしているように見えるかもしれません。でもみんな違うし、なかにはむずかしい病気がまぎれこんでくることもあり、既定路線で仕事をしないように気を付けています(でもむずかしい・・・ときもありますね)。

2 聞きたいように聞いてしまう

 あれ!そんなこと言ってないのに?いいえ、そう言ったよ!よくある口げんかですよね。じつは会話のとき、わたしたちは厳密にあいてのことばを聞いているわけではありません。言葉をいくつか拾って、そのときの状況とか過去の似たような会話体験を参照しながら記憶しています。だから、話し手の意図とはちがう形で相手が記憶するのは普通にあることです。

 おどろくのは文章のようにしっかりと形が残るものであっても、読んだ人の解釈の仕方で意味が変わってしまうことです。ときには書いた人が言いたかったことを、読んだ人がまるっきり反対に解釈する場合もあり、文学的な内容であるほどあやふや、不確かになる気がします。

 医療の世界も例外ではなく、「インフォームド・コンセント」(説明にもとづく合意)で、お医者さんと患者さんがきちんと理解しあえているかは?のケースがあるかもしれません。まずはわからないときに遠慮なく質問することで、少しでもギャップを縮めてみましょう。

3 自分基準がきつすぎる

 医者の側から見るとそうとうに良くなっているのに、患者さんは不満げということはよくあります。こまかく聞いてみると、たしかに完ぺきでないかもしれない。でも、仕事も運動も問題なくできていて、薬を飲む必要もないとなればOKと考えてみてはいかがでしょうか。

 中高年の人と話して、「治る=20歳のからだにもどる」と思っている人が意外と多いのです。だれでも年を取ればくたびれます。あちこちすり減ります。それでもきちんと手入れをすれば元気に暮らせます。あとは気持ちの問題、からだが完ぺきだから楽しいのではなく、じぶんのからだを自分なりにせいいっぱい使っているから楽しいのだと考えましょう。

 完ぺきであることと、幸せは別です。ときにはおおらかであることも大切ですよ。

4 物事の道理をわきまえている(ほんとう?)

 たしかに年をとれば経験が深まりますが、経験が足かせにもなることははじめにも書きました。わたしたちの判断力は、自分で考えているほど合理的ではないことが認知科学の研究からわかっています。自分があたりまえだと思っていることを、ほかの人はどうしてあたりまえと考えていないのかというと、だれにとってもあたりまえのことなどこの世に存在しないからです。

 今はやりの「多様性」でも、多様性を認めるということは、「おまえの意見などくそっくらえだ!」という人も認めるということなのです。あなたの道理はほかの人の道理ではない。このことを自覚して、意見が異なるからコミュニケーションが必要なのだと思ってください。

自分がやらないと決めていることがほんとうはあなたに向いているかもしれません。たとえば料理や家事はからだもあたまも使います。トライしてみては?興味ないと思っていたことでも、やってみたら意外と肌に合うかも?なにごともゼロベースで、もっと心をひろく、柔らかく使ってみ

ねりまインクワイアラー 185 ダンスの勃興

 わたしがもっとも遠い世界のことだと思っていること。それはダンスです。子どものころからこまかな動きをするのは苦手でした。でも最近のインスタグラムやフェイスブックを見てびっくり!こんなにいろいろなダンスがあるのに驚きです。アラブのはげしい身をたたくような動き、中央アジアのダンスでは女性の空中をすべるような動きに魅了されました。アイリッシュ・ダンスのリズミカルな足の動きはちょっとまねしたい気が・・。ネイティブアメリカン(インデアンと呼ばれていた)のダンスを見ると、遠い昔のアジアとのつながりが見える気がしました。こうして見てみると、日本の踊り(なかでも阿波踊り)もなかなか魅力的ですね。

松ぼっくり通信 2022年 8月号

整形外科・漢方の使い方

 まだ医者になりたてのころ、苦しまぎれに漢方を出したらびっくりするくらい良くなった経験があります。それからまじめに勉強をして漢方の資格を取り、いまでも漢方を愛用しています。

1 冷えをとる

 思い出の処方第1号は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)という冷えをとるくすりでした。イメージで言うとやせて色が白く疲れやすい人向けです。女性によく使われる処方ですが、当時はまったくそんなことは知りませんでした。後で出てくるお血体質があって全体に新陳代謝が落ちているときに奏功します。

 冷えをとるという言い方は漢方の世界ではしょっちゅう出てきますが、じつは冷えをとることを目的としたくすりは漢方薬にしかないのです。そのほかの薬はどちらかというと冷えを作る薬です。代表は鎮痛剤(鎮痛消炎剤)で、悪いところをやっつける(炎症を押さえつける)作用があり、急場に役立つ薬です。でも長く使うとからだの新陳代謝を抑え、いろいろな副作用が出やすい薬でもあります。強健な体質の人では影響が出にくいけれど、体力に自信のない人では逆効果になることもあります。

 こんなときに、まずは新陳代謝を上げて、病に打ち勝つ体力を養う。いっけん遠回りに見えても、治るからだにもどしてあげればおのずと治ってくる。漢方を知るまでは、そんな考え方をしたこともなく、学校や病院でも聞いたことがありませんでしたから、とても新鮮に感じました。

2 痛みなのに「イライラ」をとる

 漢方の世界では、いっけん症状に関係のなさそうな薬を出して著効することがあります。仕事がら痛みの相談が多く、漢方を利用する機会が多いです。

 ここのところ面白いと感じているのが抑肝散(よくかんさん)というくすりです。本来はイライラして気持ちがたかぶりよく眠れないという人に使いますが、神経痛がなかなか取れないと訴える方に奏功することがあります。ご本人の感覚では「痛みが取れないからイライラするんだ!」となるのですが、抑肝散を処方して効いてくると、顔の表情が変わります。全体に表情が硬く、目が怖い印象だった人がやさしい顔になります。家族から見ても同じ印象のようです。

 けっして安定剤や睡眠剤は入っていませんが、研究により生薬成分が脳の働きを整えてくれることがわかってきました。痛みが生じるメカニズムの中で、脳の影響がとても強いことがわかっていますから、これはうなずける話です。実際にはプレガバリンという神経痛のくすりと併用することで効果が高まるようです。

 また、抑肝散は認知症の方で落ち着きがなく怒りっぽくなった方にもよく効きます。副作用がないので使いやすい薬です。

3 血の巡りを良くする

 脂っこい食事、冷房の効きすぎるオフィスで座りっぱなしの仕事。運動不足で、汗を思いっきりかく機会も少ない。睡眠不足で疲れが抜けきらない。思い当たる方はいませんか?現代の生活スタイルは血の巡りを悪くするようにできています。以前「ヒトのトリセツ」でも書いたように、木の根っこを掘ったり草の実をとったり、いのししを追いかけたり追いかけられたりするように人間の体はできているので、じっと座りっぱなしでいれば調子が悪くなるのは当然です。

 血液の流れが滞り、栄養や酸素がすみずみまで行きわたりにくい。よどんだ川のように老廃物がたまり、体が重くあちこちが痛い。内臓の働きが悪くなり、さまざまな不調が出る。調子が悪くて動かなくなれば、悪循環でさらに調子をくずす。

 こんな状態を漢方では「お血」と呼びます。お血は万病の元と言ってよいかもしれません。先ほどの当帰芍薬散や有名どころでは桂枝茯苓丸、桃核承気湯などがお血の薬です。お血の有無は顔や手足の色、舌の色や腹部の圧痛などで調べますが、あとは体質に合わせて処方すればいろいろな症状に効果的です。

4 くすりに期待しすぎない

 漢方もしょせんはクスリ、クスリですべてが解決できるわけではありません。当帰芍薬散のお話では、ちょうど時間が空いた時の受診だったため、いつもよりゆっくりと話が聞けたのがよかったかもしれません。いままでの治療のいきさつや困ったこと(かなり同情して伺いました)をはじめてちゃんと聞いてくれたお医者さん(ただの新米?)だったそうですから、それで気持ちがほどけたのかも?もしかしたらクスリは二の次だったのかな?と思っています。

 そのほかの場合でも、たとえば神経痛では症状の治りやすい姿勢や寝方を指導して少しでも快方に向かえるようにしています。在宅ワークで運動不足になっている方には、まめに動く、「なんちゃって通勤」(通勤だと思って朝晩運動すること)などをおすすめしています。

 くすりも治療の一部ですからだいじに思っていますが、くすりで解決できないこともいっぱいあります。くすりですぱっと治してほしい!という期待に困った!という経験もまた多いのです。

ねりまインクワイアラー184、

3回・4回目のワクチン接種はむだなのか?

 結論から言うとむだにはならないようです。つぎつぎと出てくる新しいウイルス株への免疫力も高めるのだそうです。でも副反応はいやだし、悩むところですね。

松ぼっくり通信 2022年 7月号

「疲れ」を読み取る

 最近のスマートウォッチには心拍計が内蔵されていて、これを利用してからだの疲労度を知ることができます。心拍変動という仕組みを使って自律神経の働きを計るのですが、これがなかなか面白いのです。自分が感じている調子と機械が示す疲労度がだいたい同じの時もあれば、「あれ?」と思うくらいちがうこともあります。今回は自分の「疲労度を知る」がテーマです。

1 テッパンは「安静時心拍」

からだの疲れを計るうえで、むかしから知られている方法です。朝まだおふとんから出る前に脈を計ります。10秒で打つ脈数を6倍すると安静時心拍になります。私の場合、調子のいいときは41回/分くらい、不調の時は50くらいまで上がるときがあります。いままでの経験上、調子の良しあしに一番合うのがこれです。

また、有酸素運動の能力を見るのにもいいので、スポーツをしている方はときどき計ってみるといいですよ。運動を続けると少しづつ安静時心拍数が下がっていきます。心臓が丈夫になって、少ない回数で十分に血液を送り出せるので心拍数が下がるわけです。

 困るのは、寝ぼけているとなかなかじょうずに測れない点です。心拍数計測機能のついた腕時計も値段がこなれてきましたから、これをつければ、起き抜けに見るだけなのでたいへん便利です。トイレに行ったり、テレビを見るだけでも心拍数は上がるので注意してください。つぎにお話しするスマートウォッチならすべて問題解決です。

2 最新テクノロジーはすごい

 最近のスマートウォッチ(デジタル時計の進化版)は毎日の歩数を数えたり、行き先を教えてくれたりといろいろなことができるのですが、心拍数や血中酸素飽和度(体内の酸素量のめやす)まで計ってくれます。これを利用してからだの疲労度が測れるようになってきました。正確には脳の疲労度なのですが、いまでは脳の疲労が一番の問題だとされているのです。

 仕事が忙しかったり、運動をたくさんすると、数字がどんどん下がります。気持ちよくたっぷりの睡眠をとるとめきめきと疲労が取れてきます。睡眠が短かったり、浅かったりすると十分な回復ができません。食べ過ぎたり、お酒を飲むとあきらかに回復が遅くなるのにはびっくりしました。お風呂はいいのですが、長湯はあまりよくなさそうです。

 運動をすると確かに疲労度が強くなるのですが、運動を続けていくと疲労しにくくなってくるのもわかります。でも運動を多くした日にはたっぷりと睡眠をとる必要があることもわかりました。というようにとてもわかりやすく疲労度を教えてくれるので、いまでは毎日の相棒になっています。

3 手足は鍛錬ができる

 42キロを超えるマラソンがウルトラマラソンです。マラソンを走るだけでも四苦八苦なのに、それ以上、なかには何日もかけて何百キロも走る大会もあるくらいです。ウルトラに出れば、疲れがどういうものかよーくわかります。足を出そうと思っても前に出ません。手を振るのも嫌になってきます。疲れがたまってバランスが取れなくなり、かしいだまま走っている人を見かけました。ところが何とかなるのですね、これが。ゴール前の歓声が聞こえてくると、またみんな気力を振りしぼり、走り出します。ゴール!!これでやっと走らずに済む!というのがわたしの正直な感想でしたが、なかにはこれがやみつきになる人がいます。そういう方たちに話を伺うと、やっぱり慣れるのだそうです。筋肉、骨や関節もしだいに鍛えられ、はじめほどはつらくなくなるらしい。鉄人の誕生ですね。

こういうときの疲労を末梢疲労といいます。末梢疲労は計測しにくいものの、経験すればいやでもわかります。対して中枢性疲労は脳の疲労です。さて、脳は鍛えられるのかな?

4 脳の鍛錬は?

 じつは持久系アスリート(マラソン選手など)のトレーニングでだいじなのはメンタルであることが最近の研究で分かっています。脳はからだが絶対無理しないようにブレーキをかけてきます。これが疲労の正体です。このブレーキを使うことで体が壊れないようにする。でもマラソンやウルトラのように極限を競うスポーツでは、ときにはブレーキをはずしてでもがんばる必要がある。いわばリミッターをはずす練習が脳の鍛錬であり、パフォーマンスの秘密なのです。

 こういう特殊な話ではなく、一般の方が脳を鍛えて疲労しにくくなることは可能なのでしょうか?調べた限りでは、まだはっきりとしたことはわかっていないようです。ただし、脳の仕組みを考えると疲労しにくくなるヒントはありそうです。ひとつひとつ順番にテキパキ片付けていくこと。同時にいくつもの用事を抱え込まず、やるときはやる、休むときは休む。たくさんのアプリを開いたままだとスマホの動きが悪くなるように、限られた案件を集中して取り組む。そしてたっぷりと寝ることです。

ねりまインクワイアラー 183 ブルシットジョブ

 ブルシットジョブとは「まったく役立たずの仕事」のことです。誰のためにもならず、世の中の役に立っているのかさっぱり見えない仕事。みんな思い当たる仕事がありませんか?反対に人の役に立つ、わかりやすい仕事がいっぱいありますが、金銭面からみると意外に評価されていない。お金を考えると、ブルシットジョブを続ける方がいいというのが現代の不思議の一つかもしれません。

松ぼっくり通信 2022年 6月号

命と元気のはざま

  わたしも還暦を過ぎたので、将来のことなどときどき考えることがあります。体があちこち痛み、走っても以前ほどは頑張れなくなってきました。今回は長生きと生きがいについて考えてみたいと思います。

1 医療は「生かす」のが目的

 ヒポクラテスの誓いやらなんやら崇高な理念を学び巣立つ医者の卵たちも、いつのまにか俗世間の垢にまみれてくるのですが、「命がいちばん」というテーゼ(暗黙の約束事)だけはみな頭に叩き込まれています。それでいい場合が多いものの、もう少し深く(あるいはゆるく)考えてみては?とも思っています。

医療が進み、かなりの人たちが長生きできるようになりましたが、長生きができればできるほどいいのだろうか?という疑問も湧き上がってきました。もしも長生きだけを目標にするなら、少食を旨とし、運動そのほか体にかかるストレスを最小限にしてどちらかといえば不活発な毎日を送った方が長生きできることが分かっています。でも、ほんとうにそれが私たちの目標でいいのでしょうか?

2 現場はフクザツ

 骨や関節を専門にして医者をやってきましたが、若いころは町の救急病院で全科の宿直をしたり、三次救急の病院でも働きました。リハビリを専門として、けがや病気が落ち着いた後の患者さんの相談に携わることもありました。

 そういう経験の中で「とりあえず助ける」だけでいいのかな?という疑問もわいてきました。夜中の患者さんはさまざまで、ぜんそくで苦しむ小さいお子さんから、自分をコントロールできず衝動に走り体を壊したり、事故にあった人までバラエティに富んでいました。けがの治療は終わったものの後遺症で全く身動きができず、何もできないことにイラついたり落ち込む人も見てきました。

 くりかえし大きなケガにあいながらもあきらめずにレースに挑み続けたオートバイレーサー、長患いででまったく体を動かせないにもかかわらず周りの人や看護婦さん・医者に優しかった患者さんなど、いろいろな思い出があります。医者も人間ですから、毎日の仕事の中で元気づけられることもあれば、嫌な思いをすることもあります。立派な人を見て尊敬するし、この人は?と思うことだってあります。

 多かれ少なかれほとんどのお医者さんが同じような経験をしているでしょう。立場や仕事内容で意見の濃淡はあるでしょう。でも多くのお医者さんたちが、長生きを目標にするのではなく、その人なりに充足して生きていくことが大切だと思っている。わたしはそういう印象を持っています。

3 「生かす」から「活かす」へ

 年を取ってくるとあちこち故障が増えてきます。でも使えるところは使った方がいいです。患者さんたちに「あなたのからだは中古自動車と同じ。」「まだまだ使えるから、思い切り乗り回してください。」とお話ししています。

 おぎゃあと生まれて成長期を過ぎたら、それ以降あなたのからだは中古品です。でもかけがえのない一品なので、手入れも怠らないけれど、使わなければもったいない!使って使って、使い倒す。あらゆる部品が擦り切れて、いよいよ自動車(からだ)の寿命が切れるとき、「よく使って、楽しかったなあ!」と思えるようになりたいものです。

 だから長生きするかどうかは神様・お釈迦さまにおまかせして、自分が好きなことを、やりたいことをやってください。医療は人生の一側面に過ぎないのだから、影響されすぎないように気を付けましょう。

4 できることから始めよう

  • ゆとりをもってー高名な画家さんの作品を見ると、年が進むにしたがって作風がどんどん自由になっている方が多いようです。筋道をしっかり歩むのでなく、どんどん離れていく。同じように、決まりごとから離れていき、自分なりの楽しさを見つけていきましょう。

  • ちょっとやせがまんー少々の痛みなら涼しい顔で動く。くたびれても、自分よりくたびれた人がいたら助ける。見守ってあげる。いままでより一歩でもいから動く。お金に関係なく、なにか世の中の役に立つことを(ちょっとだけ)やってみる。

  • 習慣化させるーたくさんの方を診て思うのは、若い時からやっていたことは年を取ってからも続けられるようです。歌や踊りであれ、釣りやゴルフであれ、習慣になったことなら年をとっても続けている方が多いです。直接体を動かすような趣味でなくとも、続けていれば体を使う用事が生まれてくるものです。なんでもいいので続けてみましょう。

  • ボケなき徘徊―前号でも書いたように人間は探索する生き物です。いくつになっても外に出るから新しい発見があります。用事がなくても外に出て、あちこち見物に行きましょう。

 

ねりまインクワイアラー 182 スマホ・パソコンはこわくない

 生まれたときからスマホがある世代といまだに慣れない世代の開きをデジタル・デバイドといいます。いまのスマホはやってみるとかんたんです。使えば世界が広がりますよ。