目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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松ぼっくり通信電子版
高野台松本クリニックの院長、松本不二生(ふじお)先生が体にまつわるあれこれを書いた松ぼっくり通信。読めばカラダに役立つ、読むサプリです

高野台松本クリニック 177-0035 練馬区高野台1-3-7NFプラザⅡ三階 
℡03-5372-7773

(整形外科・リハビリテーション科・漢方外来

松ぼっくり通信

松ぼっくり通信 2023年 6月号

「ばんそうこう理論」とは

 おくすりや注射を使わなくても治ることがある。と言うと、「え?そんなことがあるの⁈」と驚かれることがあります。

 でもそんなに力技を使わなくても、からだにはもともと治る力が備わっています。いちばんわかりやすいのがひざこぞうなどをすりむいた時。ばんそうこうを貼って、傷を守ってあげるだけでどんどん治っていきます。ばんそうこうと同じように、体を守るしくみをじょうずに使えば、治る力を最大限に発揮できるのです。

1 からだじゅうに治る力が備わっている

これを読んでいるみなさんは、ひょっとして病院で治療を受けないと病気やケガが悪くなってしまうと思っていませんか?たしかにそういうこともたまにはありますが、たいていの故障・不調はとくに治療をせずとも治っていきます。

昨年の自分をふりかえってみましょう。頭痛、、胃のもたれ、肩こり、湿疹、鼻水、打ち身そのほかいろいろあったはずですが、それなりに良くなっていませんか。かんぺきでなくても、からだはなんとかやりくりしてくれるのです。まったくなにもなかった人でも、体の中では小さな故障が絶えず起きていて、小さな修理屋さん(白血球やせんい芽細胞など)が故障を直す仕事をしてくれます。わりに大きな故障があるばあい、からだのコントロールセンター(脳)に連絡があって、(しばらく脂っこいものをさけて胃の負担を減らしておこう⇒胃のもたれ感発信!)とか(骨にかかる負担を減らして早く治るようにしよう⇒関節痛の出力アップ!)のように症状を自覚するのです。

こういうからだを守る・修復するしくみがうまく働いていれば、たいていのことはなんとかなるものです。ところがなんとかなるはずなのにうまくいかないとき、くすりやお医者さんに出番がまわってくるのです。

2 治る力を阻害するもの

擦り傷の治り方で説明しますが、基本的に体のどの場所でも理屈は同じです。

ひざに擦り傷を作ったとき、はじめに白血球が傷口にやってきて、入り込んできた細菌をやっつけます。つぎにリンパ液が沁み出して、死んだ細菌や壊れた皮膚組織を洗い流します。そのあと、せんい芽細胞が傷口をつないで皮膚細胞が傷のまわりから伸びてきて傷をふさいでいきます。よくできていますね。

小さな細胞たちのはたらきをじゃましなければ、けがは最短で治ります。傷をこすらないようにやわらかいガーゼや包帯を当てる。激しい動きをさけて傷を刺激しないようにする。細胞たちが元気に働けるように、たんぱく質やビタミンが豊富な食事をとる。同じく休息をじゅうぶんに取って、修理の時間をたっぷり作ってあげる。これをわかりやすくたとえたのが「ばんそうこう理論」です。そして理論の真逆をやれば、傷のなおりがどんどん遅くなっていきます。

3 治る力を発揮するには

上記に加え、運動器(骨・関節・筋肉)の場合、症状を生じる原因となった物理的な刺激をさけることが必要になります。

  • 痛みが出にくい動き・姿勢がある・・・たとえば腰部脊柱管狭窄症では腰をそり気味で歩いたり、長時間座りっぱなしでいると発症しやすくなります。上肢痛の場合、ねこぜ+くびがそり気味で症状が悪化する人が多いです。痛みが出にくい姿勢や動作を習慣にするだけで治るスピードがぐっと速まります。「ばんそうこう理論」でも大切な部分。クリニックで指導していますが、くらしの中でどれくらい気を付けてもらえるかがポイントです。

  • 体幹をきたえたり、全身のストレッチをするのはいいことです。きれいな身のこなし=故障をしにくい・回復しやすい動きと考えてください。

  • 歩き方もだいじです。足のうらをじょうずに使い、なめらかに足を運べば下半身にかかる衝撃が軽くなり、ひざや足腰の痛みの回復に有利です。

  • ほんとうの急性期(1週間)を過ぎたら、適度の運動はむしろ修復を促進しますから、痛み=安静ではありません。トライアンドエラーで試してみてください。

ねりまインクワイアラー 193 朝型・夜型

朝型か夜型かは体質的に決まっているそうです。わたしはほっといても早く起きる子供でしたが、わが子の中にも夜型のタイプがいます。コロナをきっかけとして在宅ワークが広がりましたが、最近ゆりもどしで出社型に戻す動きが増えているそうです。夜型の人はゆっくり寝て、ゆっくり起きて仕事に取り組むほうが能率がいいのでは?もっと働き方は柔軟でいい気がします。

松ぼっくり通信 2023年 5月号

ビタミンD押し活中‼

 コロナ流行の3年間、仕事でびっくりするほど増えたのがビタミンD不足の患者さんたちです。以前国が行った調査では成人女性の約8割がビタミンD不足だったのですが、現時点では老いも若きも、ねこも杓子もビタミンD不足になった感じがしています。みんなビタミンDが足りてないぞ!ビタミンD押しキャンペーン第3弾です。

1 証拠は現場にあり

 レントゲンや検査ではわからないことがいっぱいあるので、手で触る(触診する)ことが大事だと考えています。そうやって診察すると、一見同じような痛みでも、これは筋肉、あれは神経、こっちは骨が原因と見当がつきます。コロナ前から仕事のやり方は変えていないのに、緊急事態宣言が出たあたりから痛みの原因が骨のケースが急増しました。

 仕事の中身や生活習慣について聞いて、(太陽の光を十分に浴びていない⇒ビタミンD不足では?)と疑い始めました。そこで、ためしにビタミンDを飲んでもらうとこれがよく効きました。一番多い膝の痛みでビタミンDが効くのを確かめてから、おそるおそるほかの痛みの相談(股関節、肘、指ほかetc.)でも試してみました。すると痛み止め(飲み薬)を使わずにビタミンDだけで良くなる方がいっぱいいることがわかり、わたしのビタミンD愛がさらに深まったのです。

 刑事もの小説のことばを借りれば、まさに「証拠は現場に落ちている」のだと実感します。現代の、ふつうに暮らしている日本の生活ではビタミンD不足が一般的ではないのか。そう考えるようになったのです。

2 そもそもビタミンDとは何ぞや

 以前にも触れましたが、ビタミンDは骨だけに効くわけではありません。からだを構成しているあらゆる細胞の働きにはカルシウムが必要です。このカルシウムの調節を行っているのがビタミンDなのです。

骨はかたくてじょうぶ。この「骨をかたくする」にビタミンDが不可欠なのですが、ほかにがん予防、うつ予防や不妊予防などの働きがあります。最近では筋肉強化(ビタミンDが足りないと筋力がつかない)や慢性炎症(老化や動脈硬化の遠因)の防止効果があることもわかってきました。あらゆる細胞の機能に不可欠なビタミンDですから、さらに研究が進めばいろいろな効果がわかることと思います。

そしてビタミンDには大きな特徴があります。それは「自分の体で作ることができる」こと。ほかのビタミンは食べることで体外から取り込むことが必要ですが、Dだけは皮膚に日光があたることで合成できるのです。もちろん食事でも摂れますが、日光の下で暮らす古くからのライフスタイルなら、かなりの割合を自分のからだで作ることができていたのです。

3 なんで不足するのか

 ビタミンDに限らず、ビタミンと名がつくものは毎日結構な割合で消費されています。イメージでいうと台所にあるみそ・しょうゆみたいなものです。だから油断するとなくなってしまいます。ビタミンDの場合、日光浴プラス食品(サケ・さんま・キノコなど)で補給が可能ですが、屋内では日が当たりません。窓ガラスがビタミンD合成に必要な紫外線(UVB)をブロックするので、ベランダ越しの日光浴ではなく、ベランダや庭に直接出て日にあたってください。

 赤ちゃんのビタミンD不足は世界中で問題になっており、妊産婦の方のビタミンD不足も珍しくありません。年寄りは皮膚のビタミンD合成力が下がりますし、色黒や肥満の人もビタミンD不足になりがちです。そしてコロナ流行中の外出制限・自粛がおきました。これがきっかけとなってクリニックを訪れる方が増えたのだと思います。

4 日焼け対策とビタミンD不足のはざまで

 皮膚がんが怖い。シミやそばかすができる。やっぱり色白の方がいい。日光蕁麻疹がある。いろいろな理由で日にあたりたがらない・あたれない方がいます。そんな人へのアドバイスです。

  • 日焼けが目立つほどの日光浴は必要なく、どれくらい日にあたれば十分なのかは調べればすぐわかります。スマホ・パソコンで「ビタミンD生成・紅班紫外線量情報」と検索すれば一発です。今の季節、東京なら顔・両手出しで20分、顔・両腕出しで10分くらいです。

  • ビタミンDの一日推定必要量は 成人15㎍  71歳以上は20㎍ となっています。

  • 実際にビタミンD不足で症状が出たらくすり・サプリなどで補いましょう。参考に栄養食品やサプリ中のビタミンD量をあげておきます。

サントリー・ロコモア 1日6粒で5.0㎍  雪印メグミルク・毎日すこやかMBP 一日3粒で3.0㎍

明治メイバランス(ヨーグルト)1.0㎍  ザバス・ミルクプロテイン(飲料) 5.1-11.0㎍

カワイ・カルシウム肝油ドロップ 1日2粒で3.3㎍  赤ちゃん用BabyD 1滴あたり2.0㎍

  • 服の色が濃いほうが紫外線を遠ざけます。白色が一番紫外線を通します。薄い生地より厚い生地の方が紫外線をブロックします。その点、デニムの生地はかなりいい線をいっています。服装にも気を配りましょう。

  • 日焼け止めやサンプロテクションつきの化粧品もありですが、安全性に注意してください。

松ぼっくり通信 2023年 4月号

トリガーポイントの作り方

  肩こり、腰痛や手足の痛みの相談で仕事上しょっちゅう出会うのが、トリガーポイントです。筋の中に触れるしこり状の部位で、押すと痛みます。痛みそのものは押したところより離れた部位に感じるので、患者さんにすれば(痛いところと違う場所をさわっている)と思うかもしれません。医師なら一度は聞いたことがあるトリガーポイントですが、その実態はあまり知られていません。そもそもトリガーポイントはなぜできるのか?今回のおはなしです。

1 トリガーポイントとの遭遇

 トリガーポイントのことは大学病院での研修のころから意識していました。レントゲンや血液検査ではわからない痛みの原因があるらしいこと、そして一般に思われている以上にトリガーポイントのケースが多いのではと考えていました。なかなか良くならない腰痛の患者さんたちを診るうちに疑問が膨らんで、病院の仕事とは別に痛みの原因について調べ始めました。痛みそのものを扱った医学書自体がめずらしく、なかなか国内では見つからなかったので、海外から専門書を取り寄せ読むことを続けました。

 そのなかに「トリガーポイント・マニュアル」があったのです。アメリカの医師が書いたトリガーポイントをきちんと扱った本です。読み始めてまさに目からウロコ!一般的な整形外科の専門書にはまったく書かれていない内容に驚くばかりでした。ただし、中身を100パーセント信用したわけではなく、そこに書かれていることを少しづつ実際の診療に取り入れながら、うそ?ほんとう?と自問をくりかえしつつ検討していったのです。

2 自分で経験してわかったこと

 想像以上にトリガーポイントの知識がからだの故障の治療に役立つと実感したころ、ふつうの診療の現場にこれを持ち込んだらどうだろうと考えました。そこで開業を決断し、仕事もまあまあ順調だったある日、突然からだの調子を崩しました。たびたび触れていることなので委細は省きますが、クリニックのほかに医師会の仕事が加わったことと、遠方の父親が病気になり亡くなるまで肉体的・気持ち的に消耗したことが理由にあったのだと思います。

 このときトリガーポイントの知識がとても役に立ちました。実際に症状が良くなったのですが、なにより「自分で自分の体のめんどうを診れる」「夜中でもどんな時でもなんとかすることができる」という気持ちになれたのが大きかったです。からだの故障があるとき、症状に加えて不安感が大きく膨らみ、むしろ強い不安のほうが本人を苦しめることがあります。こんなとき、「なんとかなる!」と思えるだけでつらさが半減するのを実感しました。

 その後も運動のし過ぎが原因であちこちにトリガーポイントを作ったり、かかとの骨折で手術を受けたり、いろいろ失敗を重ねてきましたが、トリガーポイントへの対処法を知っているから「どんなときでもなんとかなる」と思えるようになりました。トリガーポイントはけっしてめずらしい故障ではなく、ごくふつうの人たちが普通の生活をつづけているのにできるのです。でもたまたま運が悪かったからできるのではなく、できるのには理由があり、それを知っていれば発症を予防したり、トリガーポイントの症状を改善・消失することができるのです。

3 トリガーポイントの作り方

 トリガーポイントはちょっと特殊な筋のこりと言い換えてもいいです。ここではトリガーポイントを作る三大要因を挙げます。

  • 疲労の積み重ね・・・いちばんわかりやすい理由です。睡眠時間が少なく、仕事時間が長ければ、どんな人でも疲れがたまります。そのまま何か月・何年もなんとかなっていても、さらに体に負担がかかった時に堰を切ったように調子を崩します。次のストレスがきっかけになりやすいです。

  • ストレス・・・いらいら、どきどき、ぴりぴり。言葉で表現するとこんな感じでしょうか。こういう状態が続くと自律神経のバランスが崩れ、交感神経優位となります。興奮モードが続き、からだの回復メカニズムが働かなくなります。こんなとき、運動が大きな役割を保ちます。

  • 運動不足・・・有酸素運動による新陳代謝の活性化は言うに及ばず、運動には脳の整流効果があります。余分な神経の働きを抑え込み、デフォールト・モード・ネットワーク(脳がリラックスできる状態)にもどす手助けをしてくれます。

4 トリガーポイントとの付き合い方

 長いこと人間をやっていれば、だれでも調子を崩す時があるものです。トリガーポイントはだれにでもおきるものですが、命とりでもないし、痛くてもなんとか普通の生活ができるくらいのことが多いです。ときには腰が痛くて眠れなかったり、肩こりがきつくて仕事に集中できなかったり、こじれた五十肩で夜に目が覚めたりすることもあります。

 はじめのうち病院の手助けも必要と思います。落ち着いてきたら、暮らしの中の問題点を見直し、運動・ストレッチ・セルフマッサージなどのセルフケアにチャレンジしてみましょう。やればできる!まず試してみましょう。

ねりまインクワイアラー 192 人工知能

 絵が描ける。お話が作れる。宿題もできる。コンピューターがどんどん人間に近づいています。人がやっていた仕事をかなりこなせるようになってきました。では人にしかできないことはなんでしょうか?や

松ぼっくり通信 2023年 3月号

ことばはむずかしい

 先日朝ドラで短歌づくりに悩むシーンを見て、もともと詩や短歌が苦手な私は(31文字ぼっちなんだからぱっと作れないのかな?)と一瞬思いました。でも、短歌作者の方はきっと血を吐く思いで作っていると想像しています。こんな私ですが、それでも仕事の中で言葉づかいに悩むことがあります。今回のお話です。

1 ことばの意味

 国や文化が異なると同じ意味のことばでも、実際に与える印象が大きく異なることがあります。典型的なのは「水」です。身の回りに水が豊富にある土地に住む私たちは「さっと湯がいたり」「湯でこぼしたり」「水にさらしたり」をふつうに話していますが、水が大変貴重な砂漠地帯に暮らしている人たちにこれらの表現の雰囲気を実感してもらうのはきっと至難の業でしょう。

「古池や かわず飛び込む 水の音」という有名な俳句を鑑賞するとき、(かえるが池に飛び込んだ)という解説ではまったく不十分なのは皆さんおわかりと思います。濡れた苔に囲まれた小さな池、おそらくアマガエルが水草の上から水に飛び込み、ぼちゃんと音がして、そのあとに静けさがただよう・・・こういったことを瞬間的に理解できるのは作者と同じ環境や暮らしを経験している私たちだからできることです。

では同じ町で、同じ空気を吸っていればことばのイメージを100パーセント伝えられるのか?自分が言いたいことをなかなかわかってもらえないという経験は誰にでもあるはずです。医療の世界も同じ、こちらが伝えたいということが伝わらないという経験は医師の側にも、患者の側にもあります。それも、けっこう頻繁にある気がしています。

2 たとえ話は役に立つのか

「千里の道も一歩から」と聞けば(あーそうそう、どんなにすごいことでもはじめは小さな努力からはじまるんだよね)とわかるのはなぜかというと、学校の先生や親に教わったからです。聞いたまんま、千里の道を歩くときに一歩目からはじまる?あたりまえじゃん!と考えてもおかしくないのに、道という言葉から人生とか学業とか別のイメージに置き換えて考えることを抽象化といいます。具体的な出来事をもっと広いことにまで通用する概念に置き換えること。「たとえ話」がやっているのはこれです。

どんな分野でもむずかしいことをわかりやすく伝えたいとき、たとえ話はとても役に立ちます。でもなかなかわかってもらえないときもあります。ひとつはたとえ話の出来が悪くイメージが伝わらないとき。もうひとつは抽象化に慣れていない人と話すとき。抽象化は脳トレのひとつなので、得意な人も不得意な人もいます。たとえ話がうまくいって、(あ!わかった!)という顔を見るととてもうれしいです。うまくいかないときはちょっとがっかり、プランを練り直し別のたとえ話を試します。たとえでどれだけイメージを広げられるか。勝負のしどころです。

3 身動きを口で教えることはできる?

スポーツや習い事をはじめるとき、初心者は上手な人の動きをまねようとしますが、なかなかうまくいきません。うまくいかない理由はまだ体ができていなかったり、動きの中でどこが勘所かがわかっていなかったりさまざまです。そして練習の後、いろいろ指導されてもよくわからないってことありますよね。

あとから教わるのでなく、動いている瞬間にずばっと指導する方法を研究している人がいます。ゴルフの「チャー・シユー・メン」長嶋さんの「スウーっと来た球をガーンと打つ」に近いのですが、その人の動きをコンピューターなどで解析して一歩先を読んで指導するという研究で、ちょっとづつ成果が出ているようです。

私の仕事では、腰痛の患者さんなどで姿勢やからだの動き方を指導するのですが、自分ではわかりやすいと思っている感覚を言葉で伝えるのにとても苦労することがあります。腰という言葉一つをとっても、人によってイメージが全然違います。だから指導はオーダーメードが必要、まだまだ改良が足りないと感じています。

4 プラセボとことば

プラセボとは、「ほんとうは効果がないはずなのに(心理的な影響で)実際に効果が出てくること」を指します。新薬・治療法の開発現場ではあまりいい意味で使われていない言葉ですが、あらためて考えてみるとこれってすごいことだと思いませんか。患者さんの気の持ちよう(あるいは持たせ方)が実際の効果に無視できない影響を及ぼすのですから。うん十年医者の仕事をして感じるのは、同じことを話していても言葉の受け止め方は人によって全然違うことです。こちらがいい意味で使った言葉を悪い意味で受け取られてしまうことがあれば、その逆もあります。医療のことばは耳慣れないものばかりですから、医者が気軽に使っている言葉でも患者さんが聞けば不吉な響きがすることもあり得ます。でも長いこと診ていて思うのは「たいていのことはなんとかなる」ということ。なんとかならないように見えるのは、短期的に物事を見すぎていたり、必要以上に恐れていたりいろいろなので、その辺の心のコリをほぐしていけたらと考えています。ちょっとした見方の修正が、良い方向につながることを期待して。

ねりまインクワイアラー 191 日光と健康

日に当たってビタミンDを作るか、日光を避けて皮膚がんを作らないか。こういう二者択一の考え方をしていませんか?答えはどちらでもありません。そのあいだに解決策が見つかるはずです。

松ぼっくり通信 2023年 2月号

一日1万歩

 クリニックをはじめて5年めのある日、急に呼吸が苦しくなり動けなくなりました。その後も気分が悪く長くは立っていられません。食事がのどを通らず、腕がしびれ、夜もぐっすり眠れなくなりました。自分で(ストレス性?)と診たてたものの、クスリを飲んでもふらふらするだけでした。そのとき役立ったことが二つあります。ひとつはスタッフがしてくれたマッサージ。そして今回お話しする一日1万歩のウォーキングです。

1 1万歩のひみつ

正確には「数千から1万歩」ぐらい、毎日歩きました。1万歩って長いと思いますか?軽快に歩くと、だいたい1時間で6・7千歩は歩けます。家の用事や仕事中が3千歩(人によりけり、少ない人や多い人もいる)とすれば一日1万歩はそう大変ではありません。クリニックの休み時間を使って、一日30分くらいから始めました。はじめはのんびり歩いてもふらふらしましたが、やってみると(これならなんとか続けられるかな)と思いました。

1か月を過ぎたあたりから(良さそう!)な気がしました。となりの駅やふだん行かないあたりまで足を延ばし、ときどき電柱一本ぐらい走ってみたりするうち、しだいに体調が戻るのを感じ始めました。その後はご存じのように、元気になりました。マラソンやトレランをやり、ストレッチや筋トレが習慣になりました。それなりに年を取ったものの、まだまだやれそう!と思えるようになりました。

最近の研究で「1日1万歩の習慣がもっとも長生きしやすい」という報告があります。それより少なくても効果はありますが、1万歩までは寿命の延伸効果があり、それ以上歩いてもあまり変わらないのだそうです。私なりに解説してみます。

2 歩くことで脳のスイッチを切り替える

あのころ仕事が急に忙しくなったうえ、医師会の仕事も加わって心と体がまいってしまったのだと思います。運動不足だとわかっていたものの、忙しくてそれどころでない!というのが当時の正直な気持ちでした。今はわかるのですが、「できない」理由は実際に時間が取れないというよりも、気持ちに余裕がなかったのです。気持ちの切り替えができず、いつも同じことをぐるぐる考えている。これでは脳が休まりません。スイッチがいつも入りっぱなしで、オーバーヒートしている状態ですね。

これを良くするために大事なのは脳のスイッチをこまめに切り替えることです。いつも同じ脳の部分ばかりを使っていると故障しますから、いろいろなところを順番に使い分ける必要があります。ボーっとしていても歩けるように感じるのは、意識に上らない部分の脳を活発に使っているからできる芸当なのです。

おおむかし、狩猟や採集で人が暮らしていたころ、今以上に脳全体の機能をフルに使って暮らしていたはずです。脳の健康を考えるなら、できる範囲でご先祖様のライフスタイルに近づいたほうがいいのです。いのししに追いかけられたときは必死だけれど、みんなでたき火をかこみ腹いっぱいのときは幸せになる。これは脳のスイッチが切り換えられるからできたことなのです。

仕事や世の中のしくみが複雑になったためか、現代の私たちは絶えず心配したり、イライラしがちです。そんなとき、ただ歩く。それだけで脳のスイッチが切り替わり、心も体も元気になっていきます。その最適量が一日一万歩ぐらいなのでしょう。

3 歩いて元気になるコツ

歩くことのデメリットはほとんどなく、普通に暮らしている人の大半は今以上に歩いたほうがいいです。でもマンネリ化したり、効果を感じられなくなったりする人が出るかもしれないので、こつをお教えします。

4つの変化を使い分ける・・・歩く距離、ペース、フォーム、テレイン(地形)の4つのうち一つだけを変えてみる。たとえば少し長い距離を歩いてみる。少しペースを上げてみる。腕の振りや姿勢を変えてみる。平べったいコースから坂道のあるコースに変えてみるなど。一つの変化だけなら、その結果がいいか悪いかシンプルに判断できる。進歩の具合や弱点もわかりやすい。

結果は1・2週後に判断する・・・いつもより疲れたと感じるのは良いトレーニングだった可能性あり。ちょっとたってから同じ条件でやってみると進歩がわかるはず。

仕事や家事とセットで考えよう・・・いろいろな理由で疲労はたまるもの。本当に疲れたときは休みましょう。

4 もっと気軽に

寒い季節、でも背中に日差しが当たればぽかぽかと暖かい。小さな子供だった頃、公園で走り回ったり、砂場で遊んでいたときにそんな経験をしたはずです。犬も歩けば棒に当たる。人も歩けばおもしろいことにぶつかります。用事がなくても、いや用事がないからこそ外に出てみませんか。車のように速くはないけれど、そのぶん町の空気、におい、風の流れを感じることができます。初めて行った街角や商店街を見物し、おいしそうなものを見つけたら、その場で食べたり、お土産に。歩けばあなたの世界が広がります。

 

ねりまインクワイアラー190コロナ後遺症

 コロナは全身感染症なので、もともと体の弱点だったところがさらにダメージを受けます。だから腰痛の人は腰痛の悪化、持病のある人は持病の悪化が起きやすいのです。

 

ねりまホンゾー No.308  ジャポチカバ

木の幹から直接実がなります。ブラジルではポピュラーな果物ですが、日持ちしないので日本では売っていないようです。