目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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松ぼっくり通信電子版
高野台松本クリニックの院長、松本不二生(ふじお)先生が体にまつわるあれこれを書いた松ぼっくり通信。読めばカラダに役立つ、読むサプリです

高野台松本クリニック 177-0035 練馬区高野台1-3-7NFプラザⅡ三階 
℡03-5372-7773

(整形外科・リハビリテーション科・漢方外来

松ぼっくり通信

松ぼっくり通信 2022年 6月号

命と元気のはざま

  わたしも還暦を過ぎたので、将来のことなどときどき考えることがあります。体があちこち痛み、走っても以前ほどは頑張れなくなってきました。今回は長生きと生きがいについて考えてみたいと思います。

1 医療は「生かす」のが目的

 ヒポクラテスの誓いやらなんやら崇高な理念を学び巣立つ医者の卵たちも、いつのまにか俗世間の垢にまみれてくるのですが、「命がいちばん」というテーゼ(暗黙の約束事)だけはみな頭に叩き込まれています。それでいい場合が多いものの、もう少し深く(あるいはゆるく)考えてみては?とも思っています。

医療が進み、かなりの人たちが長生きできるようになりましたが、長生きができればできるほどいいのだろうか?という疑問も湧き上がってきました。もしも長生きだけを目標にするなら、少食を旨とし、運動そのほか体にかかるストレスを最小限にしてどちらかといえば不活発な毎日を送った方が長生きできることが分かっています。でも、ほんとうにそれが私たちの目標でいいのでしょうか?

2 現場はフクザツ

 骨や関節を専門にして医者をやってきましたが、若いころは町の救急病院で全科の宿直をしたり、三次救急の病院でも働きました。リハビリを専門として、けがや病気が落ち着いた後の患者さんの相談に携わることもありました。

 そういう経験の中で「とりあえず助ける」だけでいいのかな?という疑問もわいてきました。夜中の患者さんはさまざまで、ぜんそくで苦しむ小さいお子さんから、自分をコントロールできず衝動に走り体を壊したり、事故にあった人までバラエティに富んでいました。けがの治療は終わったものの後遺症で全く身動きができず、何もできないことにイラついたり落ち込む人も見てきました。

 くりかえし大きなケガにあいながらもあきらめずにレースに挑み続けたオートバイレーサー、長患いででまったく体を動かせないにもかかわらず周りの人や看護婦さん・医者に優しかった患者さんなど、いろいろな思い出があります。医者も人間ですから、毎日の仕事の中で元気づけられることもあれば、嫌な思いをすることもあります。立派な人を見て尊敬するし、この人は?と思うことだってあります。

 多かれ少なかれほとんどのお医者さんが同じような経験をしているでしょう。立場や仕事内容で意見の濃淡はあるでしょう。でも多くのお医者さんたちが、長生きを目標にするのではなく、その人なりに充足して生きていくことが大切だと思っている。わたしはそういう印象を持っています。

3 「生かす」から「活かす」へ

 年を取ってくるとあちこち故障が増えてきます。でも使えるところは使った方がいいです。患者さんたちに「あなたのからだは中古自動車と同じ。」「まだまだ使えるから、思い切り乗り回してください。」とお話ししています。

 おぎゃあと生まれて成長期を過ぎたら、それ以降あなたのからだは中古品です。でもかけがえのない一品なので、手入れも怠らないけれど、使わなければもったいない!使って使って、使い倒す。あらゆる部品が擦り切れて、いよいよ自動車(からだ)の寿命が切れるとき、「よく使って、楽しかったなあ!」と思えるようになりたいものです。

 だから長生きするかどうかは神様・お釈迦さまにおまかせして、自分が好きなことを、やりたいことをやってください。医療は人生の一側面に過ぎないのだから、影響されすぎないように気を付けましょう。

4 できることから始めよう

  • ゆとりをもってー高名な画家さんの作品を見ると、年が進むにしたがって作風がどんどん自由になっている方が多いようです。筋道をしっかり歩むのでなく、どんどん離れていく。同じように、決まりごとから離れていき、自分なりの楽しさを見つけていきましょう。

  • ちょっとやせがまんー少々の痛みなら涼しい顔で動く。くたびれても、自分よりくたびれた人がいたら助ける。見守ってあげる。いままでより一歩でもいから動く。お金に関係なく、なにか世の中の役に立つことを(ちょっとだけ)やってみる。

  • 習慣化させるーたくさんの方を診て思うのは、若い時からやっていたことは年を取ってからも続けられるようです。歌や踊りであれ、釣りやゴルフであれ、習慣になったことなら年をとっても続けている方が多いです。直接体を動かすような趣味でなくとも、続けていれば体を使う用事が生まれてくるものです。なんでもいいので続けてみましょう。

  • ボケなき徘徊―前号でも書いたように人間は探索する生き物です。いくつになっても外に出るから新しい発見があります。用事がなくても外に出て、あちこち見物に行きましょう。

 

ねりまインクワイアラー 182 スマホ・パソコンはこわくない

 生まれたときからスマホがある世代といまだに慣れない世代の開きをデジタル・デバイドといいます。いまのスマホはやってみるとかんたんです。使えば世界が広がりますよ。

 

松ぼっくり通信 2022年 5月号

まず一歩から始めよう

歩けることが一番大事だと深く考えることもなく思っていましたが、「人生は一回きり」と考えれば、もう少し柔らかくとらえてもいい気がします。コロナのため外出が極端に減り、VR(バーチャルリアリティ)やネトフリ・ビデオゲームが楽しみの人も多い現在、もう一度歩くことの意義について考えてみました。

1 歩きは本性

 仏教には輪廻転生という考え方があり、人はいろいろなものに生まれ変わると言われています。大空を飛ぶ鳥や海の中を泳ぐイルカやクジラに生まれ変わったら?あるいはアリやダニ、もっと微小なクマムシに生まれ変わったら?

 なったらなったで、しっかり生き続けるはずです。人間と異なり深く考えることはできないのですから、むしろ悩まずに虫生を全うできるかもしれません。でも人間は考える生き物ですから、困ったり喜んだりを繰り返しながら生きていくのが自然なのでしょう。もう一つ、歩くことも人間の本性の一つだと思っています。歩くことで世界を探索し、必要なこと・楽しいことをみつける。生まれた瞬間から体に組み込まれている仕組みなのです。

2 コロナ下の経験から

 2020年緊急事態宣言が出て以来、極端に外出せず、体を動かさない人が増えました。各種イベントやスポーツ大会は軒並み中止、国内海外問わず旅行はできなくなり、飲食店は休業や営業短縮を迫られ、各種学校は休校・オンライン学習への移行を迫られ、会社では通勤による感染機会を減少させるため在宅ワークへの移行が進みました。

 以前はとても元気だったのに、久しぶりにお会いすると驚くほど弱っている人が増えました。ふしぶしの痛みを訴える方が増え、転倒による骨折も増えた印象があります。表情が乏しく、話が要領を得なくなり、精神的にもかなり弱った人が増えている印象です。

 二本足で歩けるように何百万年もかけて進化してきた私たちのからだは、歩き回れるように作られています。というよりも、歩かざるを得ないように設計されています。

 たとえば歩くことで腸がゆすられ、腸内細菌の働きが促進されて消化が進み、便通が促進します。調子がいいときの腸内細菌はその分泌物を使って脳と連絡を取り、脳の働きを活性化することもわかってきました。

 そのほか骨も血管も各種の臓器も同じように脳との情報のやり取りをしており、歩くことですべてが元気になり、お互いに調整しあって体を最善の状態に持っていくことができるようになっているのです。ですから、体のメカニズム上歩くことがたいせつです。歩くことを人生の目標にする必要はないけれど、充実した毎日を送る下支えとして、やっぱり足腰は鍛えたほうがいいと思います。

3 楽しみをみつける

 江戸東京博物館に行ったら東海道53次のすごろくをみつけました。ほかに五十三次の名所絵や旅行ガイド(弥次喜多ものが有名)もあり、庶民の間で歩く旅行が人気だったことがよくわかります。日本橋から京都まで約560キロ、男性なら2週間、女性でも3週間くらいで歩いたそうですから、毎日平均30-40キロは歩いた計算になります。この話をすると多くの人がむかしのことだから・・・という顔をするのですが、わたしのひいおじいさんは江戸時代の生まれだったのです。いま10-20代の人たちだって、ひい・ひい・ひいおじいさんまでさかのぼれば江戸時代の生まれなんですよ。長い歴史の中で見れば、つい最近までみんなこんな歩き旅をしていました。そしてとても楽しんでいたのです。

4 歩き始めのアドバイス

 コロナ対策も変化していますから、今年は外に出ましょう。基本的な感染対策を忘れずに動き回ることは可能です。今のままでいると感染予防のメリットより運動不足のデメリットが上回る恐れがあります。 動き始めるに当たってのアドバイスを挙げてみます。

  • これっぽっち?くらいから始める…想像以上に体力は落ちているのでごく軽めから始めましょう。

  • すぐに息が上がる…心筋・呼吸筋も弱っていますから、あせらずに続けましょう。

  • 長い距離が歩けない…ちょっとずつ距離を伸ばしましょう。筋肉のミトコンドリア(充電池みたいなもの)はゆっくりと増えていきます。

  • 疲れる…週に1・2回疲れましょう。それはいいトレーニングです。

  • からだが痛い…動けていれば少々痛くてもOKと考えましょう。痛みに過敏にならないこと。

  • やる気がしない…何かをやっているつもりになるだけでトレーニング効果があるというおもしろい理論があります。頭の中でゴルフのスイングを練習するだけでもトレーニング効果があるそうです。これなら何でもやり放題。やりたいことを思い描こう。そのうちほんとうに体を動かすチャンスが巡ってきます。

ねりまインクワイアラー 181 宇宙インターネット

 人工衛星を使ってネット環境を整備する事業が本格化してきました。離島や山のてっぺんでも動画サービスが見れるようになります。キャンプ場で喜ばれそうですね。

松ぼっくり通信 2022年 4月号

「ロコモっぽさ」を自覚する

 毎日患者さんに接していると、直接の相談事とは別に患者さんの身のこなしが気になります。40~50歳代、人生でもいちばんあぶらの乗った時期なのに「だいじょうぶ?」と思うのですが、余計なお世話なのであえて口にはしません。でも気になるので、今回は少しだけ触れてみましょう。

1 ロコモティブ・シンドローム(ロコモ)とは

 整形外科学会が言い出したことばで、ロコモティブ(locomotive)を辞書で調べると「蒸気機関車」と出てくるので、はじめは「はあ?」と思いました。実際は筋力低下などで移動能力が低下した状態のことを指す用語です。

 というと、「おれは運動嫌いだし、家でおいしいものを食べてのんびりするのが大好きだからそんなに歩かなくったっていいんだ!」と考える方がいるかもしれません。でもロコモは、単に歩きづらくなること以上の意味を持っています。

 筋肉や骨だけでなく、内臓・血管・脳・皮膚などからだのあらゆる装置が運動することを前提に作られています。だから動かなくなるといろいろとまずい事が起きるのです。くすり・注射や手術だけが医療だと思わずに、運動もたいせつだ!と強調するために作られた用語です。

2 その場で寝返り

 ベッド(診察台)のうえですばやく寝返りができません。あお向けから横向き、そしてうつぶせになります。その逆もやってみましょう。狭いベッドの上なので、肩やおしりの位置を瞬間的にずらさないとベッドの横から落ちそうになります。子供や20代の人なら数秒でできますが、それ以上の人では数十秒かかることもあります。

 体幹(肩まわりから腰までの部分)の筋肉を自在に動かせているか?を見る方法です。重いものを持ち上げたり、速く歩いたり走ったりするとき、じつは体幹をしっかり動かせていることが必要です。体幹の動きが鈍いということは、すべての動きが鈍いということになります。うまくできない人はまだ「ロコモティブ・シンドローム」ではないかもしれませんが、そのとば口にさしかかっていると言えるでしょう。

 うまくできなかった人は、つぎに「おしり歩き」に挑戦してみましょう。文字通り、足を使わずおしりで歩きます。足をのばしてすわり、両手を肩口で抱えます。足をできるだけ使わず、左右のおしりを交互に前に出して進みます。後ろに進んだり、左右に向きを変えることもできます。

 どちらも問題なくできた人は、「うつぶせダッシュ」にチャレンジしてみましょう。ただし運動不足を自認する人はケガの危険もありやめたほうが無難かも。やり方は簡単、うつ伏せに寝ころびます。そこから立ち上がり、足元方向に向けてダッシュしましょう。立ち上がり方はなんでも結構、10~50メートルくらい走って終わり、距離を決めて何秒でできるか測ればアジリティ(瞬発力)の目安にもなります。

3 一本線上を歩く

 歩道のブロックの継ぎ目などを利用して、一本の線上に左右の足を置いて歩きます。歩幅を小さくゆっくり歩けばバランス感覚の練習、歩幅を大きくとれば骨盤の動きを使ったダイナミックな歩き方の練習になります。

 特に体の故障もないのに、足の着地が左右に揺れて、よたよたと歩く人がいます。見た目も若々しくないのですが、下半身の柔軟性不足だったり、体幹や股関節の筋力低下のサインかもしれません。またバランスを司る小脳・脳幹・前庭の機能低下かもしれないので、気持ちを集中して歩く練習をしましょう。

 おしりの筋肉が固い人も一本線歩きは苦手なはずです。両足をそろえ、両膝をくっつけてすわったら、前こごみになって左右の外くるぶしに触れてみてください。楽に触れる人はだいじょうぶ、手が届かなかったり両足が開いてしまう人はおしりの筋肉が固くなっています。股関節まわりのストレッチをしましょう。またおなかが大きすぎて前屈がしずらい人もいますが、さすがに太りすぎです。運動とダイエットを両輪にしてやせましょう。

4 椅子からゆっくりと立ち上がる

 熱気球が膨らみ始め、ゆっくりと地面から浮き上がっていく様子を想像してください。あんな感じにふわあっと立ち上がると優雅で、かっこいい。皇族やハリウッド・スターの記者会見を思い浮かべれば、なんとなくわかるのではないかしら。

 フラッシュがバチバチとたたかれる前で行われる記者会見。その当事者が自分だと想像してみましょう。にこやかに微笑みながら、静かに座り、立ち上がる自分。さて、現実にはどしんと座り、横にすわっている人がぴょんと持ち上がったりしませんか?膝に手をつき、「どっこらしょ!」って言いながら立ちあがっていないかな?きれいな身のこなしをしている人は見えないところで努力しています。逆にいえば、あなたも目に見えないところで努力すれば、また若々しい自分に戻ることができます。病院に行って妙なハゲじいに「やせろ!」とか「運動しろ!」と言われることもありません。オミクロンが落ち着きつつある今、ロコモ予備軍から脱出する絶好の機会が来たと考えましょう。

ねりまインクワイアラー 180 世界のコロナ状況

 コロナ感染者が一時世界有数となったブラジル、大きな生活制限をしなかったスウェーデン、比較的早くに防疫をゆるめたイギリス。いずれも今は感染者が減少しているようです。さて、まん防はどうなるのかな?

松ぼっくり通信 2022年 3月号

無理なくキレイに歩こう!

 他にすることがなかったためか、昨年はかなり走りました。やりすぎで、しゃがむときにひざの痛みを感じるようになりました。ところがこれからお話しするウォーキング・テクニックでは、痛みなしで歩くことが可能です。体重がかかっているあいだ、ひざがまっすぐに伸びているのがキー・ポイントです。

1 ウォーキングとランニングのちがい

  

 図A          図B          図C

図ではこんな感じ。 AとCはウォーキング、Bはランニングです。                                Aでは、着地のとき膝が伸びています。ちょっとむずかしいが理想的なフォーム。Bでは一瞬、両足が離れていて、これがランニング。Cでは着地のとき、膝が曲がっています。曲がるほど膝への負担が強くなる歩き方です。

Aは練習が必要ですが、一度習得するとなめらかで負担の少ない歩行ができます。

実際にはCの歩き方が多いのですが、この歩き方だと効率が悪く、速く歩こうとすると疲れやすいです。

  2 ウォーキングの基本

  • 両足をそろえてまっすぐ立ちます。

  • 片足を床からちょっとだけ浮かし、膝を伸ばしたまま前後にぶらぶらとゆすってみましょう。力を抜いてできるまで練習してください。

  • 慣れてきたら、前に足が出たときにかかとからそっと着地します。何回か繰り返してください。

  • 反対側の足でも②③をやってください。

  • 次に前足と後ろ足をともに床につけたまま、交互に体重を乗せる練習をします。左右いずれも慣れるまで続けましょう。

  • いよいよ次の一歩を踏み出します。前に踏み出した足に体重を乗せたら、後ろ足を前に振り出します。そしてかかとから着地します。

  • 着地の瞬間ひざが伸びていることを確認しながら数歩歩いてみます。慣れたら距離を伸ばしていきます。

3 ウォーキングのこつ

  • 前こごみにならない…はじめのうち、どうしても足元を確認しようとして前こごみになりがちです。からだをまっすぐに起こし、10メートルくらい先の地面を見るようにしてください。

  • 力を抜く…とくに肩から余計な力を抜きましょう。肘を直角くらいに曲げたまま、腕を振り子のようにゆすってください。

  • 足をからだの真下にまとめる…必ずからだの真下、動く方向に沿って着地することを心がけます。両足が一本の線上を通るのが理想ですが、はじめはこだわらないほうがいいでしょう。

  • 着地の瞬間、上にはねるのではなくかかとを後ろに押し出します。後ろ足を進めるとき、足うらが地面すれすれを通るのを意識してください。

  • 胸を張りすぎず、前こごみにもならず、一番自然な姿勢でできるだけリラックスして歩きましょう。呼吸が楽にできているかがだいじです。

  • ひざは力を入れて伸ばすのではなく、下肢全体をブランコのように前に振って、伸びたところで地面にかかとを置きます。「膝カックン」されたときみたいに、力が抜けている感じです。だから後ろ足が前に進むとき(地面についていない間)の膝は曲がっています。

  • いろいろやってみながらスマホで撮影、自分で見てみるとわかりやすいです。

4 ウォーキングの楽しみ

 ふつうのウォーキングは時速4キロくらい、この歩き方だと時速5,6キロ以上、その気になれば時速10キロ以上で歩くことができます。だからスポーツのクロストレーニングとしても十分な運動になりますよ。

 基本はモデルウォークとほとんど同じ、だから見た目もばっちりです。着地の衝撃が少ないので、足腰の故障を抱えている方や、ケガのリハビリ中の方にもいいでしょう。ただし骨そのものに痛みがあるケース(疲労骨折や骨挫傷など)には無効ですから、痛みがなくなるまで運動は辛抱してください。説明がいま一つわかりづらかった方は、ユーチューブで「モデルウォーク」「ウォーキング」などの動画をぜひ参照してください。ウォーキングの講習会もあちこちで開かれていますよ。

ねりまインクワイアラー 179 カキの筋トレ

 殻付きのカキは日持ちが短いのが欠点です。そこで生育中にときどきカキを空気中にさらし、貝殻を強く閉める練習をさせたところ、貝柱が太く日持ちのいいカキが出来上がったそうです。カキにも筋トレが効くのですね。

松ぼっくり通信 2022年 2月号

ビタミンD Q&A

 ビタミンは体の中で作ることができないか、少ししか作れないために食べ物から補給する必要がある物質です。炭水化物・タンパク質・脂質のような栄養素ではないものの、決して欠かすことのできないものです。私のクリニックでは、手足の関節痛や骨粗しょう症の治療でビタミンDをよく使っています。今回はちょっと突っ込んだお話です。

1 キノコにビタミンDが多いのはどうして?

 サーモンなど海産魚の切り身、レバー、キノコ。ビタミンDが多く含まれている食べ物です。動物由来の食品でビタミンDが多いのはわかるのですが、キノコは?と思いませんか。じつはキノコは植物ではありません。真菌類という全く別の生き物です。はるか昔、単細胞の生物からさまざまな生き物が枝分かれして進化しましたが、キノコのご先祖は植物が生まれるずっと前に枝分かれしていて、どちらかというと動物のご先祖に近いのです。野菜売り場にキノコが置いてあるのはある意味不思議なわけですね。

2 ビタミンDは骨のビタミンなの?

あらゆる動物の細胞では、表面がコレステロールを含んだ物質でおおわれているのですが、植物の細胞はセルロースという物質で覆われています。ところがキノコの細胞表面はコレステロールとよく似た物質が含まれていて、これに日光が当たるとビタミンDに変化するのです。やはり生い立ちが動物に近いからでしょう。人間の肌に日光が当たるとビタミンDが合成できるのですが、これとよく似たしくみなのです。

 ビタミンDのはたらきには骨を強くすることが含まれますが、ほんとうのはたらきはカルシウムの新陳代謝です。体中のすべての細胞の中でカルシウムは重要な役割を担っています。複雑な機械…たとえば飛行機でたとえるなら、パイロットが操作するさまざまなスイッチの役割をカルシウムは行っています。筋肉細胞の場合は筋肉に力を入れる、つまり収縮させるときにカルシウムが働きます。脳細胞が活発に働くときにも、免疫細胞が機能するときにもカルシウムが働きますから、体中のあらゆる機能にビタミンDがかかわっているといっても過言ではありません。

 ですから骨粗しょう症のみならず、うつ病、免疫疾患、アレルギー、感染症やがんなどさまざまな病気でビタミンDが有効であるという報告がでているのです。

3 ビタミンはどうやって作るのか

 肝油ドロップをご存じでしょうか。いまでも売られていて私も愛用しています。もともとはタラなどの魚から抽出されたビタミンD・Aを栄養食品として販売していました。臭いを抑えるため糖衣をつけたドロップ状にして、かわいい缶に入れて学校で売られていました。現在では植物由来の成分と化学合成を組み合わせて作られていますから、水銀など有害物質の混入もなく、安全な製品が作られています。これは薬品会社も同様です。

 ところが昨年、日本ではビタミンD製剤の供給が底をつきかけるアクシデントがありました。ジェネリック医薬品の製造会社数社がほぼ同時に操業停止になり、たくさんの医薬品の供給不足が起きたためです。その後操業再開したものの、原材料は海外から輸入しており、一気に増産というわけにはいかなかったようです。私のところでも一時ビタミンDの長期投与を控えていたのですが、今はだいぶ落ち着いてきました。

4 なぜ関節痛にビタミンDが効くのか

 はじめにお伝えしておくと、すべての関節痛にビタミンDが効くわけではありません。関節周囲の骨強度が落ちてきて日常生活の動作でも骨の痛みが起きる(骨内の痛み神経が刺激される)場合に有効です。そんなことがあるの?といぶかる方がいると思いますが、新コロナウイルスの流行が始まってから急激に増えた印象です。

 微細な骨の変化なのでレントゲンだけでの診たてがむずかしく、関節を動かしたときの痛みの出方を調べたり、かすかな熱感や腫れの有無をチェックして判断しています。たとえば手指を握った時の痛みの出方、歩行時やしゃがむときの痛みの出方に注目して診察します。そしてビタミンDを内服してもらうと、痛みが改善、消失します。一か月ですっきりする人もいますが、もっと時間がかかる人もいます。おそらく骨強度の低下にかなりの個人差があるからだろうと考えています。

 そして日光浴が大事です。理論上日光浴だけでビタミンDの必要量を体内生産することができるといわれていますが、服装・ライフスタイルから十分に日光を浴びていない人が大半と思います。また授乳中のお母さん(そして母乳栄養で育つ赤ちゃん)、年配の方(ビタミンDの合成能力が低い)、肌の色が黒め(後天的な日焼けを含む)の人はビタミンDの不足が起きやすいので注意が必要です。ハワイのサーファーたちでも半数以上がビタミンD低下だったそうですから、(まさか自分が?)と思う方でも関節痛が出たら、一度は疑ってみる必要があります。 ビタミンDの体内半減期は30日未満であるといわれているので、意外と簡単にビタミンD不足になるかもしれません。ふだんから肝油ドロップやサプリを使って予防するのもおすすめです。ただし摂りすぎは体に悪く、ビタミンD中毒になることがあります。過ぎたるは及ばざる…というわけです。

ねりまインクワイアラー 178 ボードゲーム

 いまボードゲームがブームです。スイッチやスマホゲームとはちがったおもしろさがあります。信じられないくらいいろいろな種類が売られていて見飽きません。頭のトレーニングにもよさそうですよ!