目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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松ぼっくり通信電子版
高野台松本クリニックの院長、松本不二生(ふじお)先生が体にまつわるあれこれを書いた松ぼっくり通信。読めばカラダに役立つ、読むサプリです

高野台松本クリニック 177-0035 練馬区高野台1-3-7NFプラザⅡ三階 
℡03-5372-7773

(整形外科・リハビリテーション科・漢方外来

松ぼっくり通信

松ぼっくり通信 2022年 1月号

リハビリを乗り越えるには

 掲示期間が短い一月号ではエッセイ風に書くことが多いです。8歳のときに足の骨を折り治療を受けたのですが、3年前にも足の骨を折り、子供のころより治りは遅いしリハビリも時間がかかると痛感しています。今回はリハビリの苦労と楽しみを書いてみました。

1 若いってすばらしい

 だいぶ前のことです。当時勤務していた病院に3歳のこどもが入院してきました。大腿骨と骨盤が折れる大けがです。さっそく上半身から折れている足のつま先あたりまでギブスをまきました。これだけ折れると内出血が激しく、亡くなる人もいますからまわりはたいへん気を使いました。1週間後、なにげなく廊下を歩いていると病室から「キャッ!キャッ!」と声がしました。振り向くと、あのギブスをまいた子がベッドの上でぴょんぴょん飛んでいました!あわてて駆け寄ったものの、楽しんでやっているのにびっくりしました。回復が早く、1か月くらいで退院しましたが、以降もときおり診察する機会がありました。骨はついたもののかなり変形があったのですが、高校生ぐらいになると、見た目も機能的にも問題ないくらいに矯正されており、これなら絶対オーケーと太鼓判を押せるようになったのです。

 子供の回復力はほんとうにすごいです。それに比べると・・・やはり年をとればとるほど治癒の力は弱くなり、回復にかかる時間も長くなってきます。でも、それは治らないということではありません。時間はかかるし、工夫もいるが、いくつになっても治る力は残っています。

2 リハビリの障壁

 治る力は残っているが、それが働きにくい場合があります。

  • からだの調子に問題あり…はっきりした病気や、疲労の蓄積、睡眠不足や栄養のアンバランスなど回復力に悪影響を与える理由があるときです。

  • リハビリがかみ合っていない…無理をせずからだを休める時期、少しづつ刺激をかけて回復を促す時期、持久力・筋力・スキル向上のため自分で汗をかかなければいけない時期があります。ありがちなのが①あせって休養が大事な時期なのに早めに強い刺激をかけて、かえって回復を遅らせてしまう②楽をする時期とがんばる時期の切り替えができず、楽な方向に向きすぎる③病院やリハビリから徐々に離れ、広い世間に自分の創意と工夫で向かい合っていく時期なのに、なかなかふんぎりがつかない、などのケースです。

  • 医療・リハビリの力不足…まだまだできないこと、工夫が足りないことがいっぱいあります。医学は物理や化学のようなハードサイエンスではなく、科学っぽいところからむかしながらの経験の積み重ねまでを集めた雑多な世界です。ハードはまだまだ足りないし、知恵や工夫もまだまだ足りないでしょう。

3 リハビリの苦労と楽しみ

 足に力が入りにくく、つまさきがひっかかって転びそうになる。足うらがつる。指先がしびれる。走るとすぐに疲れて休みたくなる。腰やモモが張って夜にぐっすりと眠れない。紙に書くとこんな感じでリハビリを続けていますが、ちょっと動き方を変えたり、トレーニングの仕方を変えてみたりすると、毎日なんらかの気づきがあり、ちょっとだけ進歩があります。松葉づえで歩いていたころから見ると長足の進歩ですが、まだまだ先は長い。そう感じています。

 だれにでもいいときがあり、悪いときがあります。いいときばかりだといいのですが、それはあり得ないでしょう。だからどんな時でも楽しむ気持ちを忘れない。リハビリをいやいやするのではなく、その過程を楽しむ。楽器を演奏する人が練習を楽しむように、運動選手が練習を楽しむように、私もリハビリを楽しむ。そうありたいと思っています。

4 人生はリハビリ

 先日山の中を駆け抜けるトレイルランニング大会に参加してきました。まだちゃんとは走れないのですが、山の中は上ったり下ったりで歩きだけでもなんとかなるのです。登りは得意なので何人も抜けるのですが、下りはあっという間に抜かされます。というより、どうぞどうぞという感じで先に行ってもらいます。先はまだまだ長い、山の中を一人でゆっくりと下っていっても、動き続ければ必ずゴールにたどり着きます。自分のペースでいけば何時ごろにどのチェックポイントに到達できるのかわかっていますから、ケガをしないこと、栄養補給をしっかりすること、脱水を予防することを守ればいい。レースと名がついていても、私のレベルではまさに自分との戦い、他人との競争ではありません。天気は良く、ときおり鳥の鳴き声が聞こえます。落ち葉に木漏れ日があたってキラキラ輝いて、まるで春の花のようです。こういった大会に幾つまで出場できるかわかりませんが、あきらめずに続けようと思っています。またひとつ年を取ったら、それはまた新しい体験、一日一日が冒険です。こうやって考えていると、「人生はリハビリ」という言葉が思い浮かびました。自分で自分に働きかけること、すべてがリハビリ。日は沈んできましたが、ゴールまであとひとふんばりです。

ねりまインクワイアラー 177 コロナの行方

 新しくできたオミクロン株は、それまでの株を駆遂する勢いで増えているそうです。ところが感染力は強いものの、症状はちょっとした風邪くらい…こわいのかこわくないのかわからないですよね。専門家の間でも、いよいよ流行が終わる兆しととるか、いやまだ危ないぞ!と考えるか意見が分かれています。立場上、お役い方向で予想し準備するのはしかたがないと思います。さあどんな年になるのでしょうか。

松ぼっくり通信 2021年 12月号

シップのことをもっと知ろう

 なかなか根強い人気があるシップですが、日本以外ではほとんど使われていないのをご存知ですか?シップがない国では困っていないのかな?なくても平気なのかな?今回の話題です。

1 シップの効能

 シップの原型は薬草を砕いたものを粘土などに混ぜて直接体に塗ったり、布地に塗って貼り付けたものだったようです。打ち身や切り傷の上に貼ることで痛みを和らげたり、回復を早めることを狙ったのです。たしかに薬草の成分にはけがに効くもの(たとえば柳の葉→アスピリン)がありますから、いろいろな薬草が使われたことでしょう。今でも世界各地で同様の方法が使われているはずですが、いわゆる民間医療とみなされているのかもしれませんね。 シップの働きは①水分が蒸発することで皮膚の熱を持ち去る②薬剤を皮膚から浸透させる③メントールの清涼効果の3つだと考えられています。

①は気化熱という現象を利用したもので、これは結構大事な効果です。濡れたタオルや氷を持ち歩くよりずっと簡単に患部の冷却ができますからとても便利です。でも乾いてくると効果が薄れるのは欠点です。

②については実験があり、有効成分が皮下3ミリまでは達することがわかっています。たったの3ミリと思ってしまいますが、ここから毛細血管に吸収され近隣の組織に入り込んだり、血行により全身に回ってから効果を及ぼしているのでしょう。だからシップ=安全というわけではありません。鎮痛消炎剤の入ったシップをたくさん貼れば、全身に影響を及ぼす可能性があるわけです。年配の方、妊婦さんや喘息・腎臓病のある方は特に気を付けてください。

③のメントールの香りは皆さんおなじみだと思います。メントールはミントの主成分で、胃もたれや呼吸器疾患の治療にも使われています。貼った瞬間すっとするのはこの成分の効果です。

2 シップが「効かない」と言われるわけ

 ここまで読むと、シップが効きそうな気がしませんか?その通りです。急性期の炎症、打ち身・ねん挫などに効果を発揮します。でも、一般の外来でよくある症状、肩こりや腰痛などには効果がないか、あっても一時的でしかないと考えられています。

 筋肉にせよ、骨や関節にせよ、実際にコリや痛みを訴えるのには複雑な理由があります。体の加齢現象、慢性炎症(急性炎症とは全く別物)、生活習慣、ストレス、疲労の積み重ね、認知のゆがみや思考パターンの癖など、シップや薬で解決できないことがごまんとあることがわかっています。だから漫然とシップを貼り続けても、たいした治療にならないと考えるのは筋が通っていると言えます。

国や自治体もお金が足りなくなっていますから、健康保険で賄える薬の使用には目を光らせていて、シップの利用にチェックが入りやすくなっています。ここぞというときにはOKだが、だらだらと使うのは避ける。お財布(自分も国も)のことも考えて使いましょう。

3 東洋医学とプラセーボ

 点温膏(てんうんこう)という膏薬があって、たまに肩こりに使っています。シップと異なり小さい貼り薬なので押して痛いところをみつけて数か所貼ると良く効きます。「押して痛いところ」とさらっと書きましたが、これが阿是穴(あぜけつ)と言われるもので、東洋医学のツボの基になった現象です。東洋医学のメカニズムにはまだ謎が多いですが、現場のお医者さんとして安全で役に立つのであれば試していいのではないかと考えています。

 シップを小さく切ってつぼ(経絡)の上に貼る。書きながら思いついたのですが、今度試してみたいです。

 もう一つ、シップにはプラセーボ効果がありそうです。薬効とは別に、「貼って安心できる」なら期待以上に効くことがあるかもしれません。日本人のシップ・膏薬好きを考えると、案外馬鹿にできないアイデアだと思います。

4 うまくシップと付き合う

 よく「温めるシップと冷やすシップのどちらがいいのか?」と質問を受けます。じつは医療用のシップでほんとうに温めるシップは存在せず、貼った時ヒヤッとするかしないかの違いと思ってください。見た目が白いほうは、より水分を多く含んでいるので冷やす効果が高いです。ですが肌色のシップのほうが伸び縮みしやすくはがれにくいので、こちらを好む方も多いです。

シップではないのですが、活性炭入りの温熱パッドを使用する方も多いと思います。これからの季節、冷え性の人に愛用されますが、パッドが直接肌に当たらないよう気をつけてください。特に高齢の方は低温やけどになりやすいので注意が必要です。

ねりまインクワイアラー 176 ワクチン接種の証明

 新型コロナワクチンの接種証明ができる書類を見せるとスポーツイベント・コンサートへの参加、飲食店での優遇が得られる仕組みが準備中です。スマホ版(アプリ)も作成中とのことです。

松ぼっくり通信 2021年 11月号

コロナ腰に気をつけろ!

 去年の2月ころからはじまったコロナ流行は、私たちの生活にたくさんの影響を与えました。クリニックでは、その頃から腰の痛みを訴える方がとても増えています。世界中で同じようで、パンデミック(世界的疫病)のような腰痛=パンデミック・バックと呼ばれています。わかりやすく「コロナ腰」と言い換えてみました。

1 コロナ腰とは

 コロナウイルスが原因で起きる腰痛という意味でなく、コロナウイルスが流行るようになってから爆発的に増えた腰痛のことを指します。世界中で外出制限やロックダウンが行われて、外遊び・スポーツ・旅行そのほか体を使うアクティビティを行うことができなくなました。感染予防のため在宅ワークに移行する人が増えましたが、通勤という「運動時間」が無くなり、一日中座り続けることも珍しくなくなりました。 体を動かすことで食べ物を手に入れ、疲れたら寝転がり、夜は寝る。これを毎日繰り返すことができるように人のからだは設計されています。じっとすわったまま動かないでいるのは本来の使い方ではないので、疲れのたまるところ=肩・腰などの筋肉がこってきて、ときには強い腰痛になるのです。

2 動かないから痛くなる

 結婚式や法事に出ると妙に体がこるのを経験します。じっとするための筋肉に力を入れ続けなければならず、肩から腰にかけての筋肉がこってくるのです。

小さな子を見ているとよくわかるように、人間はもともとじっとしているのが苦手です。飛んだり跳ねたり走り回ったりは得意ですが、じっとすることに向いていません。ある種の動物、たとえばナマケモノやカメレオンはじっとするのが得意です。じっとすることで背景に溶け込んだり、気づかれずに獲物を待ち伏せることができるように体ができていますから、何時間もじっとしていて平気なのです。

 人の場合、じっとしていると筋肉がこってきます。動くとコリが改善されますが、動くことが少ないとコリはどんどん強くなり、最後は固くなって血の巡りが滞ったり筋肉がけいれんしてきます。多くの場合、背中のまん中あたりで筋肉がけいれんし、けいれんした背筋が腰の筋肉が引っ張るために腰痛を自覚するのです。

3 セルフケア

  • 猫背は×…パソコン・デスクワークで要注意。とくに在宅ワークの人は気を付けてください。

  • ちょこまか体を動かそう…座り仕事をしているとき、30分を目安として体を動かしましょう。1,2分でいいので、席を立ったり、背伸びやストレッチをしましょう。

  • オフの日は運動しよう…手足を大きく動かし、汗をかくアクティビティならなんでもOKです。自転車や電車で出かけ、ショッピングで歩き回るのもありです。

  • 睡眠時間はぜったい確保!…睡眠5・6時間はちょっと短いかも。ためしに長めに寝てみたら、目覚めがすっきり、肩こり・腰痛も軽くなるかもしれません。

  • 血の巡りをよくしよう…お風呂にゆっくり入り、体を温めましょう。テニスボールなどでのセルフマッサージもおすすめです。

  • 体調をモニタリングしよう…安静時心拍数(起き抜けに測る)や起床時の血圧は体調の良い指標になります。最近のスマートウォッチ(アップルウォッチやガーミンなど)は、つけているだけで毎日の体調を教えてくれるのでおすすめです。

  • ビタミンD補給を!…まずは日光を浴びてください。難しい人はサプリや薬もあり。腰痛の隠れた原因かもしれません。

4 ウィズコロナ時代の過ごし方

 できればコロナをやっつけたいところですが、どうやら長いお付き合いになりそうです。でもワクチンがどんどん更新され、経口薬などの新治療も出てきますから、先行きは明るくなってくるでしょう。感染予防に注意を払いつつもふつうに生活し、旅行やスポーツを楽しむ。友人との会食やときには宴会にも参加する。ただし必要な予防措置は怠らないし、どこまでがオーケーでどこからがだめなのかはわきまえておく。在宅ワークの人たちは新しい生活スタイルを構築して、健康を保つ。学校ではオンライン・通学を組み合わせ、子供たちの心身の向上を計っていく。夜の社交・音楽や演劇の公演・野外フェス・各種のスポーツ大会など、それぞれが工夫しながら運営を行っていく。まさかの時には行政や医療が手助けする。早くこんな生活ができるように、ひとりひとりができることをやっていきましょう。

ねりまインクワイアラー 175 うつぶせ寝の効能

 コロナによる肺炎が軽めで経過観察中のときに、ぜひ試していただきたいのがうつぶせ寝です。うつ伏せになると気管支の角度が変わり、痰が出やすくなります。腹部が圧迫されて横隔膜が働きやすくなり、肺のすみずみまで酸素が行きわたります。ある調査では重症化が半減したとのことです。

松ぼっくり通信 2021年 10月号

歩き方から足を変える

 足うらの痛みという相談では、インソール(中敷き)の工夫や靴の選び方の指導をすることが多いです。大半の方はそれで良くなりますが、なかなか治らない人もいます。こういう場合、歩き方が一番の問題では?と考えていましたが、具体的な指導ができずに困っていました。今回アメリカのインストラクターYamuna Zakeさんの本を元にして上手に歩く練習法をまとめてみました。

1 なぜ痛くなるのか

 足の裏は厚い皮ふと特殊な脂肪組織でできていて、はだしで歩いたり走ったりできるようになっています。私が子どものころ、はだしで外に出て遊んだり(親には怒られましたが)、はだしで運動会を走ったりするのはふつうでした。土の道が消え、かたいアスファルトの道ばかりになった現在、靴は必要と思います。ですがあまりにも靴にたよりきった生活を長く続けると、じょうずな歩き方を忘れてしまうようです。足うらを守るために必要な筋肉も弱ってしまって、足うらを地面にたたきつける歩き方にかわってしまいます。 じょうぶな足の裏ですが、一時間しっかり歩けば片足で5000回地面に着地することになります。やわらかく接地するかわりに叩きつけるように歩く。これを数千~数万回毎日行えば、足うらが痛くなっても不思議ではないと思いませんか。

2 足の裏を4つに分けて考える

 では足に無理の来ないソフトな歩き方はどのようなものでしょうか。わかりやすくするために足のうらを4つの部分に分けます。

  • かかと…みずいろ

  • 外側…あおいろ

  • 指のつけ根…きいろ

  • つま先…あかいろ

ソフトな歩き方を習得するために、まず立った状態で右足を前に出し、足うらを床につける練習をしてみましょう。①のかかとをゆっくりと床につけます。そこから②外側を床につけ、しっかり体重を乗せたら、そのまま流れるように③指のつけ根に体重を移していきます。このとき小指側から母指側へと順番に体重を乗せていくように意識すると良いでしょう。からだの重みを右足に載せていき、指のつけ根全体に体重がかかるようにします。

 ここで左足を前に出して床につけながら、右足のかかとを持ち上げて④つま先を床に押し付けます。このとき母指から小指までしっかりと力が入るのが理想ですが、人によって力が入りにくい指があると思います。はじめはそれで良し、慣れるうちにしだいに力がついてくるはずです。

 左右を替えてこれを繰り返します。この練習をするときはできるだけゆっくりとやり、足うらの感覚に気持ちを集中するよう心がけてください。ちょっとした時間のあいまに練習し、その後で足うらの感覚に集中しながら10メートルくらい静かに歩いてみましょう。練習前と比べて歩き方がちがってきたことを感じるはずです。

3 歩き方を良くするためのヒント

  • 外足荷重がだいじ

足うらの痛みを治すうえでカギとなるのが足の外側を活用することです。多くの人は歩くときに、かかとからいきなり指のつけ根に体重が乗る歩き方をしています。足の外側に体重がかかることを意識すると、かかとからつま先方向にかけてなめらかにからだの重心を移動できるようになります。だから、急いで歩いたり、走ったりするときでも衝撃の少ない着地ができるようになります。

  • ストレッチをしよう 知らず知らずのうちに指を動かす筋肉が縮まったり足の関節が固まっていることがあります。指の先をつまんで、上下左右に動かしてほぐしましょう。足を手でつかんでいろいろな方向にねじって、かたまった関節や筋肉を動かしましょう。

  • 筋力強化は粘り強く 長い間使わなかった筋肉の力が戻るには時間がかかります。骨と関節しかないように見える足ですが、小さな筋肉がたくさんついています。小さいけれど体のバランスをとるうえでだいじな筋肉たちです。ケガや病気でしばらく歩かないでいると、この小さな筋肉がとても弱ってきますから、歩き方がぎこちなく疲れやすくなります。短い距離はともかく、長く歩くとどうしてもバランスが悪くなってしまう。ここであきらめないでください。持久力をつけるにはくりかえし長く歩くことです。投げ出さず、粘り強く歩く。前に難しいと思ったことがほんの少しだけ楽に感じるようになった。これを繰り返していけばいいのです。

 

ねりまインクワイアラー 174 横網町公園

 関東大震災で3万8000人の方が亡くなった陸軍被服廠跡が横網町公園です。被服廠は震災の前年に赤羽に移転しており、震災当時は公園でした。慰霊堂のそばに近辺の工場にあった機械が展示されていますが、鋼鉄があめ玉のように溶けているのがわかります。信じられないほどの高熱が人々を襲ったのです。

松ぼっくり通信 2021年 9月号

からだの危機を脱するには

 まだ若かったころ、あちこちの病院に転勤しました。大学の出張病院をぐるぐる回るのが当時のやり方でしたが、いいこともあれば?と思うこともあり、患者さんを長く診れないことが不満の一つでした。一転開業すると、定点観測で患者さんを長く診ることができます。赤ん坊だった子が大きくなって、大学生や社会人になり、さらにその子供を診ることだってあります。久しぶりに診ると、この子はうまくいってそうだなとか、ちょっと苦闘してるかな?とかいろいろなことを考えます。今回は長く診ている中で気づいたことをお話ししましょう。

1 からだはどんどん変わる

 年齢のちがいは大きいです。子どもの頃はどんなケガでも順調に治り、ほとんど跡を残さないことも珍しくありません。思春期から20代はじめは体力がどんどん増大する時期です。やったらやっただけのことが身に付きますから、公私ともに実り多い時期です。20代後半から中年期は体力的には守りの時期、油断をすると体力・気力が落ちてきます。「前はできたことなのに」「こんなことでケガ(病気)をするなんて」と思うのがこの時期です。でもメンテナンスをすればまだまだいける!と思うのもこの時期で、個人差が大きくなってきます。

 そして老年期。どんな人でも体力面の低下が避けられませんが、人生経験が深まった分、物事の多面的な見方ができるようになり、勝負や比べ合いを脱して、自分なりの楽しみを見つけられるはずです。長生きの時代、この時期の過ごし方については、私も患者さんから日々学んでいます。 壮年期、自分やまわりの人たちも疲れを感じてくる時期。長く患者さんを診ていると、このあたりが体力面から見た人生の分岐点のようです。楽に流されるか、もういっちょう!とがんばってみるか。仕事・育児・家庭状況の先が見えてきて、何を張りにして生きていくかあらためて考える時期です。体は何よりの資本、ここで自分の体に手をかけることができるかが分かれ目と言えます。

2 心当たりがない≠原因がない

 まったく何かをした覚えがないのにどこかが痛くなったり、調子が悪くなったりするのはどうしてでしょうか。考えられることとしては①運動不足による廃用(筋の短縮・委縮・関節のこわばり・じん帯の柔軟性低下)②累積的効果(仕事や運動中の小さな無理が積み重なったもの)③じっとしていることに起因する筋の疲労・こり④自分にとっては記憶に残らないが、実際には体に負担になっていること(例;電車に遅れまいと急いで階段を上った・青信号が点滅したので急いで歩道を渡ったなど)が挙げられます。

 昨年来のコロナ禍による外出制限の影響からか、在宅ワークが増えたためなのか①②③が原因となったからだの不調が増えている印象があります。三密を避けつつも運動やストレッチを行い、体の調子を保ちましょう。在宅ワークの場合、朝夕の仮想通勤時間を作る(勝手に歩く・走る・自転車を使う)のも手です。

3 時間がかかるときががある

 わりかしシンプルな故障のようでいて、実際には治るのに時間がかかることがあります。骨折は1,2か月、肉離れは一か月くらい、捻挫は2~3週のような何となくみんなが抱いているイメージがあるのですが、実際には程度・年齢・体の具合(慢性疾患や疲労の影響)で治りがゆっくりになることが珍しくありません。お医者さんと患者さんで考え方に一番ギャップがあるのが治療期間のイメージでしょう。

 ただし、体はあきらめずにちょっとずつでも治っていくのです。半年過ぎても、もっと時間がかかっても、体の修復システムは働き続けます。骨折・手術の経験をした私も日々実感しているのですが、もうだめかと思ってもあきらめずに運動を続けていくとそれなりに改善しているのを感じます。粘り強さが大事だと思ってください。

4 危機を脱するには

 では体力面の危機を脱するにはどうすればよいのでしょうか?いくつかヒントをお話しします。

  • 努力はうそをつかない…筋トレやストレッチであれ、ウォーキングやいろいろなスポーツであれ、続けていけば必ず上手になります。進歩は停滞の後に来ます。ブレイクスルーは間近かもしれません。

  • 完ぺきを求めない…体の特性・年齢・体力差などがあって、自分の理想に届かなくても良しとしましょう。楽しむことが大事です。

  • 小分けにして考える…複雑な動きを全部一気に改善するのではなく、小さな一点を改善してみます。それを繰り返せば、ちりも積もって山となります。だからもっと上手になっていきますよ。

  • 人と比べない…自分が楽しむことが大切、みんなでワイワイやるのが好きな人も一人でのんびりやるのが好きな人もいます。運動は自分中心に考えましょう。

  • いきなり高い目標は立てない…近所の公園に行って来るだけでオーケーです。動いているうちに筋肉ホルモン(マイオカイン)が出て気分が軽く、足取りも軽くなります。はじめの一歩は軽い気持ちでやってみましょう。

ねりまインクワイアラー 173 ゆっくりした動きの大切さ

 同じことをするならゆっくりやるより速くやれるほうがエライ。そう考えがちですが、あえてゆっくりと、一つ一つの動きをていねいに、気持ちを集中してやってみます。あらゆる技芸において、技を磨くコツの一つです。