目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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松ぼっくり通信電子版

松ぼっくり通信 2021年 11月号

コロナ腰に気をつけろ!

 去年の2月ころからはじまったコロナ流行は、私たちの生活にたくさんの影響を与えました。クリニックでは、その頃から腰の痛みを訴える方がとても増えています。世界中で同じようで、パンデミック(世界的疫病)のような腰痛=パンデミック・バックと呼ばれています。わかりやすく「コロナ腰」と言い換えてみました。

1 コロナ腰とは

 コロナウイルスが原因で起きる腰痛という意味でなく、コロナウイルスが流行るようになってから爆発的に増えた腰痛のことを指します。世界中で外出制限やロックダウンが行われて、外遊び・スポーツ・旅行そのほか体を使うアクティビティを行うことができなくなました。感染予防のため在宅ワークに移行する人が増えましたが、通勤という「運動時間」が無くなり、一日中座り続けることも珍しくなくなりました。 体を動かすことで食べ物を手に入れ、疲れたら寝転がり、夜は寝る。これを毎日繰り返すことができるように人のからだは設計されています。じっとすわったまま動かないでいるのは本来の使い方ではないので、疲れのたまるところ=肩・腰などの筋肉がこってきて、ときには強い腰痛になるのです。

2 動かないから痛くなる

 結婚式や法事に出ると妙に体がこるのを経験します。じっとするための筋肉に力を入れ続けなければならず、肩から腰にかけての筋肉がこってくるのです。

小さな子を見ているとよくわかるように、人間はもともとじっとしているのが苦手です。飛んだり跳ねたり走り回ったりは得意ですが、じっとすることに向いていません。ある種の動物、たとえばナマケモノやカメレオンはじっとするのが得意です。じっとすることで背景に溶け込んだり、気づかれずに獲物を待ち伏せることができるように体ができていますから、何時間もじっとしていて平気なのです。

 人の場合、じっとしていると筋肉がこってきます。動くとコリが改善されますが、動くことが少ないとコリはどんどん強くなり、最後は固くなって血の巡りが滞ったり筋肉がけいれんしてきます。多くの場合、背中のまん中あたりで筋肉がけいれんし、けいれんした背筋が腰の筋肉が引っ張るために腰痛を自覚するのです。

3 セルフケア

  • 猫背は×…パソコン・デスクワークで要注意。とくに在宅ワークの人は気を付けてください。

  • ちょこまか体を動かそう…座り仕事をしているとき、30分を目安として体を動かしましょう。1,2分でいいので、席を立ったり、背伸びやストレッチをしましょう。

  • オフの日は運動しよう…手足を大きく動かし、汗をかくアクティビティならなんでもOKです。自転車や電車で出かけ、ショッピングで歩き回るのもありです。

  • 睡眠時間はぜったい確保!…睡眠5・6時間はちょっと短いかも。ためしに長めに寝てみたら、目覚めがすっきり、肩こり・腰痛も軽くなるかもしれません。

  • 血の巡りをよくしよう…お風呂にゆっくり入り、体を温めましょう。テニスボールなどでのセルフマッサージもおすすめです。

  • 体調をモニタリングしよう…安静時心拍数(起き抜けに測る)や起床時の血圧は体調の良い指標になります。最近のスマートウォッチ(アップルウォッチやガーミンなど)は、つけているだけで毎日の体調を教えてくれるのでおすすめです。

  • ビタミンD補給を!…まずは日光を浴びてください。難しい人はサプリや薬もあり。腰痛の隠れた原因かもしれません。

4 ウィズコロナ時代の過ごし方

 できればコロナをやっつけたいところですが、どうやら長いお付き合いになりそうです。でもワクチンがどんどん更新され、経口薬などの新治療も出てきますから、先行きは明るくなってくるでしょう。感染予防に注意を払いつつもふつうに生活し、旅行やスポーツを楽しむ。友人との会食やときには宴会にも参加する。ただし必要な予防措置は怠らないし、どこまでがオーケーでどこからがだめなのかはわきまえておく。在宅ワークの人たちは新しい生活スタイルを構築して、健康を保つ。学校ではオンライン・通学を組み合わせ、子供たちの心身の向上を計っていく。夜の社交・音楽や演劇の公演・野外フェス・各種のスポーツ大会など、それぞれが工夫しながら運営を行っていく。まさかの時には行政や医療が手助けする。早くこんな生活ができるように、ひとりひとりができることをやっていきましょう。

ねりまインクワイアラー 175 うつぶせ寝の効能

 コロナによる肺炎が軽めで経過観察中のときに、ぜひ試していただきたいのがうつぶせ寝です。うつ伏せになると気管支の角度が変わり、痰が出やすくなります。腹部が圧迫されて横隔膜が働きやすくなり、肺のすみずみまで酸素が行きわたります。ある調査では重症化が半減したとのことです。

松ぼっくり通信 2021年 10月号

歩き方から足を変える

 足うらの痛みという相談では、インソール(中敷き)の工夫や靴の選び方の指導をすることが多いです。大半の方はそれで良くなりますが、なかなか治らない人もいます。こういう場合、歩き方が一番の問題では?と考えていましたが、具体的な指導ができずに困っていました。今回アメリカのインストラクターYamuna Zakeさんの本を元にして上手に歩く練習法をまとめてみました。

1 なぜ痛くなるのか

 足の裏は厚い皮ふと特殊な脂肪組織でできていて、はだしで歩いたり走ったりできるようになっています。私が子どものころ、はだしで外に出て遊んだり(親には怒られましたが)、はだしで運動会を走ったりするのはふつうでした。土の道が消え、かたいアスファルトの道ばかりになった現在、靴は必要と思います。ですがあまりにも靴にたよりきった生活を長く続けると、じょうずな歩き方を忘れてしまうようです。足うらを守るために必要な筋肉も弱ってしまって、足うらを地面にたたきつける歩き方にかわってしまいます。 じょうぶな足の裏ですが、一時間しっかり歩けば片足で5000回地面に着地することになります。やわらかく接地するかわりに叩きつけるように歩く。これを数千~数万回毎日行えば、足うらが痛くなっても不思議ではないと思いませんか。

2 足の裏を4つに分けて考える

 では足に無理の来ないソフトな歩き方はどのようなものでしょうか。わかりやすくするために足のうらを4つの部分に分けます。

  • かかと…みずいろ

  • 外側…あおいろ

  • 指のつけ根…きいろ

  • つま先…あかいろ

ソフトな歩き方を習得するために、まず立った状態で右足を前に出し、足うらを床につける練習をしてみましょう。①のかかとをゆっくりと床につけます。そこから②外側を床につけ、しっかり体重を乗せたら、そのまま流れるように③指のつけ根に体重を移していきます。このとき小指側から母指側へと順番に体重を乗せていくように意識すると良いでしょう。からだの重みを右足に載せていき、指のつけ根全体に体重がかかるようにします。

 ここで左足を前に出して床につけながら、右足のかかとを持ち上げて④つま先を床に押し付けます。このとき母指から小指までしっかりと力が入るのが理想ですが、人によって力が入りにくい指があると思います。はじめはそれで良し、慣れるうちにしだいに力がついてくるはずです。

 左右を替えてこれを繰り返します。この練習をするときはできるだけゆっくりとやり、足うらの感覚に気持ちを集中するよう心がけてください。ちょっとした時間のあいまに練習し、その後で足うらの感覚に集中しながら10メートルくらい静かに歩いてみましょう。練習前と比べて歩き方がちがってきたことを感じるはずです。

3 歩き方を良くするためのヒント

  • 外足荷重がだいじ

足うらの痛みを治すうえでカギとなるのが足の外側を活用することです。多くの人は歩くときに、かかとからいきなり指のつけ根に体重が乗る歩き方をしています。足の外側に体重がかかることを意識すると、かかとからつま先方向にかけてなめらかにからだの重心を移動できるようになります。だから、急いで歩いたり、走ったりするときでも衝撃の少ない着地ができるようになります。

  • ストレッチをしよう 知らず知らずのうちに指を動かす筋肉が縮まったり足の関節が固まっていることがあります。指の先をつまんで、上下左右に動かしてほぐしましょう。足を手でつかんでいろいろな方向にねじって、かたまった関節や筋肉を動かしましょう。

  • 筋力強化は粘り強く 長い間使わなかった筋肉の力が戻るには時間がかかります。骨と関節しかないように見える足ですが、小さな筋肉がたくさんついています。小さいけれど体のバランスをとるうえでだいじな筋肉たちです。ケガや病気でしばらく歩かないでいると、この小さな筋肉がとても弱ってきますから、歩き方がぎこちなく疲れやすくなります。短い距離はともかく、長く歩くとどうしてもバランスが悪くなってしまう。ここであきらめないでください。持久力をつけるにはくりかえし長く歩くことです。投げ出さず、粘り強く歩く。前に難しいと思ったことがほんの少しだけ楽に感じるようになった。これを繰り返していけばいいのです。

 

ねりまインクワイアラー 174 横網町公園

 関東大震災で3万8000人の方が亡くなった陸軍被服廠跡が横網町公園です。被服廠は震災の前年に赤羽に移転しており、震災当時は公園でした。慰霊堂のそばに近辺の工場にあった機械が展示されていますが、鋼鉄があめ玉のように溶けているのがわかります。信じられないほどの高熱が人々を襲ったのです。

松ぼっくり通信 2021年 9月号

からだの危機を脱するには

 まだ若かったころ、あちこちの病院に転勤しました。大学の出張病院をぐるぐる回るのが当時のやり方でしたが、いいこともあれば?と思うこともあり、患者さんを長く診れないことが不満の一つでした。一転開業すると、定点観測で患者さんを長く診ることができます。赤ん坊だった子が大きくなって、大学生や社会人になり、さらにその子供を診ることだってあります。久しぶりに診ると、この子はうまくいってそうだなとか、ちょっと苦闘してるかな?とかいろいろなことを考えます。今回は長く診ている中で気づいたことをお話ししましょう。

1 からだはどんどん変わる

 年齢のちがいは大きいです。子どもの頃はどんなケガでも順調に治り、ほとんど跡を残さないことも珍しくありません。思春期から20代はじめは体力がどんどん増大する時期です。やったらやっただけのことが身に付きますから、公私ともに実り多い時期です。20代後半から中年期は体力的には守りの時期、油断をすると体力・気力が落ちてきます。「前はできたことなのに」「こんなことでケガ(病気)をするなんて」と思うのがこの時期です。でもメンテナンスをすればまだまだいける!と思うのもこの時期で、個人差が大きくなってきます。

 そして老年期。どんな人でも体力面の低下が避けられませんが、人生経験が深まった分、物事の多面的な見方ができるようになり、勝負や比べ合いを脱して、自分なりの楽しみを見つけられるはずです。長生きの時代、この時期の過ごし方については、私も患者さんから日々学んでいます。 壮年期、自分やまわりの人たちも疲れを感じてくる時期。長く患者さんを診ていると、このあたりが体力面から見た人生の分岐点のようです。楽に流されるか、もういっちょう!とがんばってみるか。仕事・育児・家庭状況の先が見えてきて、何を張りにして生きていくかあらためて考える時期です。体は何よりの資本、ここで自分の体に手をかけることができるかが分かれ目と言えます。

2 心当たりがない≠原因がない

 まったく何かをした覚えがないのにどこかが痛くなったり、調子が悪くなったりするのはどうしてでしょうか。考えられることとしては①運動不足による廃用(筋の短縮・委縮・関節のこわばり・じん帯の柔軟性低下)②累積的効果(仕事や運動中の小さな無理が積み重なったもの)③じっとしていることに起因する筋の疲労・こり④自分にとっては記憶に残らないが、実際には体に負担になっていること(例;電車に遅れまいと急いで階段を上った・青信号が点滅したので急いで歩道を渡ったなど)が挙げられます。

 昨年来のコロナ禍による外出制限の影響からか、在宅ワークが増えたためなのか①②③が原因となったからだの不調が増えている印象があります。三密を避けつつも運動やストレッチを行い、体の調子を保ちましょう。在宅ワークの場合、朝夕の仮想通勤時間を作る(勝手に歩く・走る・自転車を使う)のも手です。

3 時間がかかるときががある

 わりかしシンプルな故障のようでいて、実際には治るのに時間がかかることがあります。骨折は1,2か月、肉離れは一か月くらい、捻挫は2~3週のような何となくみんなが抱いているイメージがあるのですが、実際には程度・年齢・体の具合(慢性疾患や疲労の影響)で治りがゆっくりになることが珍しくありません。お医者さんと患者さんで考え方に一番ギャップがあるのが治療期間のイメージでしょう。

 ただし、体はあきらめずにちょっとずつでも治っていくのです。半年過ぎても、もっと時間がかかっても、体の修復システムは働き続けます。骨折・手術の経験をした私も日々実感しているのですが、もうだめかと思ってもあきらめずに運動を続けていくとそれなりに改善しているのを感じます。粘り強さが大事だと思ってください。

4 危機を脱するには

 では体力面の危機を脱するにはどうすればよいのでしょうか?いくつかヒントをお話しします。

  • 努力はうそをつかない…筋トレやストレッチであれ、ウォーキングやいろいろなスポーツであれ、続けていけば必ず上手になります。進歩は停滞の後に来ます。ブレイクスルーは間近かもしれません。

  • 完ぺきを求めない…体の特性・年齢・体力差などがあって、自分の理想に届かなくても良しとしましょう。楽しむことが大事です。

  • 小分けにして考える…複雑な動きを全部一気に改善するのではなく、小さな一点を改善してみます。それを繰り返せば、ちりも積もって山となります。だからもっと上手になっていきますよ。

  • 人と比べない…自分が楽しむことが大切、みんなでワイワイやるのが好きな人も一人でのんびりやるのが好きな人もいます。運動は自分中心に考えましょう。

  • いきなり高い目標は立てない…近所の公園に行って来るだけでオーケーです。動いているうちに筋肉ホルモン(マイオカイン)が出て気分が軽く、足取りも軽くなります。はじめの一歩は軽い気持ちでやってみましょう。

ねりまインクワイアラー 173 ゆっくりした動きの大切さ

 同じことをするならゆっくりやるより速くやれるほうがエライ。そう考えがちですが、あえてゆっくりと、一つ一つの動きをていねいに、気持ちを集中してやってみます。あらゆる技芸において、技を磨くコツの一つです。

松ぼっくり通信 2021年 8月号

補装具を活かす

 補装具とは杖やコルセットなど、手に持ったり着用してふだんの生活の助けをする道具のことです。車いすのように大きいものがある一方、コンタクトレンズや補聴器のように小さいものもあります。身近でないようで、意外と身近にある道具です。今回のお話です。

1 杖・松葉杖

 3年前、かかとの骨折をおこしたときに私も松葉杖のお世話になりました。慣れないうちは汗びっしょりになりましたが、そのうちあちこち出かけるようになり、家族といっしょに買い物や食事に行ったり、学会に出かけたりしました。都内の駅にはまず間違いなくエレベーターがあるので、行こうと思えばたいていのところに行けるのです。もしも杖を使わなかったら、仕事に行けず、家からも出られず、ずいぶんつらかったはずです。本当にありがたい経験でした。

 ご高齢になり、せなかが丸くなったり神経痛が出たりするときにも杖は役に立ちます。足の故障・マヒが残る人にも大きな助けとなります。 年齢が高くなったとき、杖を使ったほうがいいか聞かれることがあります。体力低下や故障のため歩くことに不安を感じているなら杖がおすすめです。「転ばぬ先の杖」のたとえ通り、いざというときにちょっと支えがあるだけで転ばずに済むなら、外に出たくなりますよ。一度杖をついたらもうやめることができないのでは?と心配する人がいますが、これは誤解です。一時的な体力低下があるとき、杖を使ってがんばって歩く練習を続ければ、ふたたび杖なしで歩けるようになります。

2 コルセット・サポーター

 コルセットとは体にまきつけるバンド状のものを指しますが、医療用ではプラスチックなどで固めに作ったものもあります。せぼねやそのまわり(靭帯や筋肉)に痛みがあって動かしづらいとき、コルセットで一時的に保護してあげるだけで痛みが軽くなることがあります。故障部位を保護するだけで治る故障も多いので、そのあいだの時間稼ぎをするわけです。

 「コルセットを長く着けると良くない」と言われることがありますが、コルセットを長く着けると腰回りの筋肉の力が落ちる可能性があります。だから故障が快癒したらコルセットを外したほうがいいと思います。しかしながら体の故障は千差万別で、長くコルセットを必要とする方もいます。ケースバイケースなので、迷ったら相談してみてください。

 サポーターは手足に巻くもので、文字通り巻いた部分をサポート(支える)します。特殊な支柱付きのものもありますが、よくあるのは弾力のある布地でできたタイプです。骨折後のリハビリ中、筋力が落ちた膝が痛むようになりました。市販のサポーター(1000円くらい)を使ってみたら楽になり、助かりました。コルセットと同じく一時的な助けになりますが、やはりつけすぎると問題です。症状が軽くなってきたら外すことを考えましょう。医療用のものもありますが値段が高めですので、まず市販品を試してみましょう。通販などで安く手に入ります。

3 マヒを助ける

 病気やけがのためにからだにマヒが残ることがあります。それでもできることをしたい、家事や仕事にもどりたい、旅行やスポーツをやりたい。そういう願いにこたえるためや、リハビリのお手伝いとしていろいろな補装具が生まれてきました。歩くための杖のほかに、膝くずれや足の引っかかりを防ぐための下肢装具がよく使われています。一人で歩くのが難しい場合は車いすや電動車いすがあります。マヒがあっても車を運転できるよう自動車を改造する方法もあります。

 まだまだ一般化されてはいないものの、ロボットスーツのような歩行機器も開発されています。将来、こういったスーツを付けた人たちが街を自由に散歩したり、買い物に出かけるようになるかもしれません。子供のころ夢物語だった携帯電話がこれだけ普及しているのだから、大いにありそうだと思いませんか。

4 補装具は勇気を与えてくれる

 下肢の故障でほとんど家から出なかった方がシルバーカーで歩き始めました。以前よりせなかがしっかりして、姿勢も良くなりました。歩くことで、使わなかった部分がきたえられたのです。前向きな気持ちを、シルバーカーが後押ししてくれたのですね。

 今年の正月のことです。よろよろとジョギング中、軽快に飛ばしているジョガーを見かけ、すれちがってびっくり!義足で走っている方でした。こりゃ、こっちもがんばらなくっちゃ!!と思いました。する人はもちろん、見た人にも勇気を与えてくれる、ちょっと感動する経験でした。

 道具である以上、補装具もどれだけ使い込むかがだいじです。使って、使って使いきる。その気持ちがあれば、使って良かったと思えるはずです。

ねりまインクワイアラー 172 ストレッチのこつ

 ストレッチのコツは①息を詰めず②力を抜いて③ゆっくりと伸ばすことです。ストレッチをしながら顔が赤くなる人は、力が入っている証拠です。伸ばしていくとここらへんからちょっときついかな?と感じるところまで来ます。そこでもう一度余計な力を抜くのです。抜けなかったら少しポジションをゆるめ、1分弱くらいそのままでいましょう。するとさっきより楽に伸びるのを実感できるはずです。

松ぼっくり通信 2021年 7月号

痛みとじょうずにつきあう

先日、ジョギング中に胸の痛みを感じました。心臓?と瞬間思ったけれど、痛みの感じからOKだな!とそのまま走りました。このようにどこかが痛くなっても、だいじょうぶなことはざらです。でもほんとうに心配なときもありますから、そのみわけ方がだいじなのです。

1 痛みは警報装置

冷蔵庫の扉を閉め忘れると、ピーピーとなって知らせてくれます。電子レンジに料理を置き忘れても、鍋が空焚きになってもピーピーなって教えてくれるので、ずいぶん安全・便利になりました。痛みも同じです。虫歯になりかかってますよー!とか、うっかり指先を切っちゃたみたい!とか、昨日は飲みすぎちゃったねー!とか教えてくれるので、痛いところをかばったり休養を取って体の調子を元にもどす手助けをしてくれます。

人体には、からだの内側にも外側にも膨大な数の警報装置がついています。痛みのほかに、温冷感、振動、圧迫、虚血、かゆみ、めまい感などたくさんの装置があり、脳にむかって絶えず情報を送っています。脳はスーパーコンピュータみたいなもので、拾い上げた情報を使って(これはキケン!そっちはほっといて良し)(これは医者に行ったほうがいいかも?)といった判断をするわけです。

コンピューターと同様、脳も経験値がものを言います。だから痛みをむやみに怖がらず、ちょっと考えて判断することが必要です。絶えず修正・バージョンアップをしていくことでどんどん役に立つ脳に変わっていくのです。

2 要相談の痛みのみわけかた

ということで、痛みの見分け方をお教えします。思いっきり簡単にしましたから、体が痛くなったら思い出して使ってみてください。

  • 自分の感覚で中以上の痛みなら相談 軽度なら様子見OK

  • じっとしていても痛みがとぎれず続くなら相談

  • 一瞬~数秒の痛みは様子見OK 10分以上連続してつづくなら相談

  • 吐き気・めまい・マヒ・発熱‣発疹などほかの症状があったら相談

  • きつい痛みだが1回きり 様子見OK

  • 生活に困らないくらいの痛み 様子見OK 長引くなら相談

こんなところでしょうか。誰のからだにも故障しやすいところがあるので、こういった判断を続けるうちに(うん?ちょっと痛いけれど、これくらいならもう少し様子を見ても良さそう)といった実際的な判断ができるようになってきます。

3 隠れた主役は「不安」

じつは痛みの陰に隠れていて、本当はボスキャラ(黒幕)なのが「不安」です。冷静に考えればたいしたことのない痛みだとしても、ひょっとしてなにか悪い病気のサインではないか?このまま置いといたら大変なことになるのではないか?というように不安感が頭の中でぐるぐる回っている状態になると、症状以上につらくなってくるのです。

不安の感じやすさには個人差がありますが、いろいろなストレスで脳がお疲れモードに入っているときはとくに不安を感じやすいようです。昨年からのコロナ騒ぎでは誰もがストレスを感じていますから、元気なときなら気にしないくらいのことでも心配になって、相談に訪れる方が少なくないです。

痛みのことが心配になったら、あわてずに痛みの見分けをしてみましょう。ちょっと冷静に状態を分析する時間を作るだけでも不安が和らぐはずです。

4 痛くてものんびり暮らすのは悪いことではない

はじめにお話しした胸の痛みは、結局肋軟骨(肋骨の一部)の痛みでした。年を重ねるといろんなことが起きます。でも数日で収まったから、そのまま運動もやっています。ふだんでもあちこち痛くなるけれど、これもトレーニングの一部と思ってやっています。

きつめの肉体労働を経験している人、若いときにスポーツをやっていた人はおわかりのように、どこも痛くならず故障もせずにやっていくことはムリです。たまに痛くなるのがあたりまえです。だから多少の故障も織り込みつつ、様子を見ながらやるべきことを続けていく。それで治るものは治っていく。こういうおおらかな考え方でいいわけです。これは内臓の痛みでも共通していますから、体は「治せるものは治している」のです。痛みへの過敏な反応は考え物、まずは落ち着き、痛みの見分けをすることです。

ねりまインクワイアラー 171 音楽は才能、絵は努力

弟から新しく出版した本が送られてきました。本業とは別に音楽評論家として活躍してきた彼、赤ん坊のころ音楽を聴いて、おむつをつけたおしりを揺らして踊っていました。長じてからもドラムをたたいたり、コンピューターで作曲したり、ほんとうに音楽が好きみたいです。音の聞き取りやリズム感など音楽にまつわる才能の9割は遺伝で決まるそう、「三つ子の魂百まで」ってよく言ったものです。

反対に絵の才能は遺伝的には5割くらい、後は努力だそうです。つまり、練習すればだれでも絵はうまくなるということ。わたしはこっちで地味にやっていきましょう。

松ぼっくり通信 2021年 6月号

トリガーポイントの不思議

 トリガーポイントとは筋肉の中にできた押すと痛むしこりのことです。疲労の蓄積、けがや使いすぎなど筋肉に負担がかかるとできますが、それ自体は悪い病気ではなく、無症状~軽いこり感ですむことが珍しくありません。だから軽く見られがちですが、ときに強い痛みに変わったり、意外な症状が出ることがあります。ほんとうはトリガーポイントが原因なのに、ほかの病気とまちがえられる可能性もあります。今回のお話です。

その1 はなれたところに理由がみつかる

 トリガーポイントそのものはきわめてよくあるもので、毎日の外来でもひんぱんに見つかります。ところが訴えの部位(痛みやしびれ)と原因の部位がはなれているので、患者さんにしてみると「えー⁈」と思うみたいです。たとえば手関節痛の原因が肘の近くにあったり、下肢痛の原因がおしりにあったり、頭痛の原因がくびにあったりします。

その2 多彩な症状

でもまったく予想外のところにみつかるわけではありません。それぞれの筋肉にトリガーポイントができるとどこに痛みが出るのか?一生をかけてこれを調べたトラベル博士というお医者さんがいました。きれいな図版と詳細な説明のあるトリガーポイント・マニュアルという本を書きました。この本を見ればほぼすべての筋肉のトリガーポイントの症状が書いてあるので、私もこれを参考にして診察しています。

 一般的なトリガーポイントは痛みが症状なのですが、それ以外の訴えがみられることがあります。今まで診療で経験したものだけでも、歯の痛み・歯がしみる(頭の筋肉)、めまい・ふらつき(くびの筋肉)、声が出にくい、ものを飲み込みづらい、口がまわりづらい(くびの筋肉)、動悸(胸・背部の筋肉)、腹痛(せなかや腹の筋肉)、足のけいれん(下肢の筋肉)、手足のむくみ感、しびれ感(各所)など多彩です。ほかにも吐き気・嘔吐、不整脈、下痢・便秘の原因になることもあります。

 本格的な病気とのちがいは、①動作・姿勢で症状が変化し②症状のある部位を調べても何も異常がなく、きちっと触診をすると筋肉の中にトリガーポイントが見つかります。そしてトリガーポイントをマッサージ・ストレッチ(ときには注射)で治療して症状が改善すれば、やっぱりこれが原因だったとわかるのです。

その3 私の経験から

 トリガーポイントは一つの筋肉に生じることもありますが、同時にたくさんの筋肉に生じることもあります。私の場合、慢性のアキレス腱炎+かかとの骨折(手術で治療)のリハビリに苦労する中で複数のトリガーポイントに悩まされました。つま先が上がりにくく、足先がしびれて力が入りません。歩いたり、ゆっくり走ることはできるのですが、速く走ろうとすると足が勝手に内側に曲がって、まともに着地をすることができません。けがから2年が過ぎ、(これはもう戻らないのでは?)と思い始めたとき、なにげにふくらはぎの筋肉を押してみたらとても痛いところが見つかりました。

 試しに強くマッサージすると、少し症状が軽くなった気がしました。それからは、毎日あちこち痛いところを探してはマッサージを繰り返すと薄紙をはぐように症状が軽くなりはじめ、まだまだ完ぺきとは言えないものの少しづつ走れるようになってきました。

 炎症・手術で筋肉や関節が固くなったのが原因だから、トリガーポイントは関係ない。筋肉の診たてに自信を持っていた私なのに、いつのまにかそういう思い込みをしていたようです。同じことを外来でもよく経験します。本来の病気やけがの後で故障が残ったとして、その中にトリガーポイントの症状が紛れ込むことがよくあります。故障による筋力低下やバランスの悪さから、二次的に筋肉にトリガーポイントが生じ、本来の故障以上に患者さんを苦しめることがあるのです。

その4 トリガーポイントはだれにでもおきる

 クリニックで受ける相談で見ると、腰痛や肩こりの相談のうち8割はトリガーポイントが原因です。五十肩では9割がトリガーポイントでしょう。膝の痛みは骨・関節が原因のことが多いですが、なかには太ももの筋肉にトリガーポイントがあって膝が痛く感じる人がいます。足がつるという相談では、栄養や腰の問題もありますが、ふくらはぎのトリガーポイントを治すとよくなる方が多いです。

 今これを読んでいるあなたも、試しに膝や太ももの筋肉をあちこち押してみてください。痛いところが見つかったら、潜在的なトリガーポイントの可能性があります。今は症状がなくても、疲れがたまり、ストレスが積もって神経の緊張が高まったり、慣れない仕事をやったり、眠りの浅い日が続いたりすることがきっかけで発症するかもしれません。ふだんからこまめに自分でマッサージをしたり、ストレッチをしたり、有酸素運動をとり入れて、やわらかくしなやかなからだを作ることです。予防は最高の治療、ふだんから体のお手入れをすることがだいじなのです。

ねりまインクワイアラー 170 旧石器人の遺伝子

 日本人はネアンデルタール人由来の遺伝子を比較的多く持っています。この中にはコロナの重症化を防ぐ遺伝子が含まれており、東アジアの人が比較的コロナに強い理由(ファクターX)の一つとして考えられています。

松ぼっくり通信 2021年 5月号

リハビリ できること・できないこと

 クリニックのホームページにも載せていますが、「リハビリをしてほしい」と相談を受けてもお受けできないことがあります。健康保険の仕組み、適応の有無、設備・人員の問題やリハビリそのものの限界など理由はさまざまですが、お役に立てないと判断したら正直に伝えています。でもどうしてなのかわかりづらいですよね。今回のお話です。

1 リハビリって?

 一言で言うと「元気になる手助けをする」ということです。うちのクリニックでは、ストレッチ・マッサージ、かんたんな体操や筋トレの指導、姿勢や歩き方のチェックなどがメインとなっていますが、元気にするきっかけになるならほんとうは何でもいいのです。病院によっては電気や牽引器などの物理療法や、PT(理学療法士)さんの運動療法が中心のところもあるでしょう。  ただ世過ぎをするからには、お上の声を聴かなければなりません。医療に関する法律・規則を守り、指導も受けています。私たちの場合、筋肉や関節を中心とした手技療法に重きを置いているので、形の上では「消炎鎮痛処置」(医療費明細書の項目)をしていることになります。できることはしているつもりですが、公定治療費が安価な分①短い時間でも効果が出るように細かく分けて治療②患者さんができることはしてもらうためにストレッチやマッサージの指導をする、といった工夫をしています。

2 リハビリの得意分野

  • かたいものをやわらかく、縮まったものは伸ばす・・・手技療法(マッサージ・ストレッチをふくむ)でできることです。細かい説明は省きますが、これでかなりのことができます。やわらかくてしなやかなからだは健康の要諦と言えるでしょう。良くなったら、自分でストレッチに取り組みましょう。

  • 弱ったものを強く・・・筋トレや体操です。ただし、教えることはできても、やるかやらないかは患者さんしだいで、指導力が問われます。とくにご高齢の方では苦労するところです。リハビリはやったらやっただけ結果が出てきます。努力が実を結ぶ分野。

  • カンを取り戻す・・・姿勢・歩行・動作指導、およびその反復練習など。中枢神経系に良い動きができるように刺激を与えます。ここはもう少し時間がかけられたらいいのに…と思っています。

  • 発想の転換・・・押してもだめならひいてみる。こうしなきゃと思っていることをほんとうにそうなの?と考えてみる。がんばっていたのを肩の力を抜いてみる。この手がダメならあの手を使ってみる。やわらかい発想でつらい時期を乗り越えると意外と元気になるものです。

  • できること、できないことを明らかにする・・・根性!努力!ですべてが解決するわけではありません。故障の具合、年齢、収入や住環境など、条件に合わせてできることを探します。あきらめるのではなく、一歩でも幸せに近づく道を探す。むずかしいけれどこれがリハビリの本道です。

3 困る相談とは

 これはちょっと⁈と思う相談を挙げてみます。

  • 疲れたので、もんでほしい・・・健康保険で禁じられています。自費の治療院に行ってください。

  • 希望の治療をしてほしい・・・診断上ベストの選択をします。医学的にむりな(有効でない)治療だと判断すれば、そう伝えます。

  • マヒを治してほしい、むかしの状態に戻してほしい・・・気持ちはわかるのですが、やはりできないことはそう伝えるしかありません。ただし、いままで見落としていた点を見つけて症状を軽くする、動きやすくすることはできるかもしれません。

  • くすりやマッサージで歩けるようになりたい・・・自ら汗をかくことは、リハビリで欠かせない部分です。筋力をつける、体力をつけるのは絶対にくすりやマッサージではできません。が、意外と多い相談です。

4 柔軟に粘り強く

 大学にいたころ、わたしは脊髄損傷の治療の研究をしていました。脳やせき髄の中枢神経系は一度傷つくと戻らないと言われていましたが、それを何とかできないかと考えていました。でも現実には治らない患者さんを多く見送るうちに(もっと何かできないのかな)と考えるようになり、リハビリの世界に目を向けるようになりました。当時高名だったドクターが「リハビリはネバー・ギブ・アップ!です」と言ったのに感動し、紆余曲折を経て今に至りました。

 小さいクリニックですが、現在の仕事は気に入っています。医者としての戦闘力はおそらく何倍も高くなっているはずです。毎日の外来で見つかる小さな課題を、これからも粘り強く探求していくつもりです。

ねりまインクワイアラー 169 コロナこれから

 コロナ対策がいろいろおこなわれていますが、若い人たちの生活・収入・学業・楽しみを強く押さえつけている印象です。外来で相談を受けていると、屋内閉じこもり、運動不足や交流の制限で調子を崩している人たちもいます。なんとか乗り越えてほしいですが、早晩方策の再検討・改善が必要と思います。

松ぼっくり通信 2021年 4月号

靴の苦労とじょうずなおつきあい

 だいぶ前のことですが、靴で苦労したことがあります。安売りの靴店で買った革靴を履くと、10分も歩かないうちに痛みが出ました。冠婚葬祭のときしかはかないのでしばらくしんぼうしたのですが、ついにがまんできなくなって新しい靴(ブランド品)に買い換えました。するとびっくり!全然痛くありません。今でもその靴を履いていますが、靴ってこんなにちがうのだと改めて実感しました。今回のお話です。

1 うおのめ、たこ、いぼ

 うおのめ・たこは靴の中であたるところにできます。ほんとうにぴったり足に合う靴を履いていればできないはずですが、歩き方のくせのためにできることもあります。まわりに人のいない場所で、路面が平たんなところを選び、10mほど目をつぶって歩き、足裏の感覚に集中します(自信のない人は止めてください)。かかと→足うら全体→親指つけ根の順番に体重をかけるのが自然な歩行パターンです。

このパターンがくずれると、力が集中してかかるところにうおのめやたこができてきます。よくあるのは指のつけ根(とくに2・3番目)足うら側のたこで、親指側にうまく体重がのせられないのが原因です。うおのめ、たこが痛いときに、わたしは靴の中敷きに穴をあける方法をおすすめしています。痛いところの下に小さな穴をあけて圧を逃がすと、すぐに痛みがなくなります。むかし東京マラソンの前にうおのめが痛くなったとき、このやり方で無事マラソンを完走しました。

イボはイボウイルスの感染で起きますが、うおのめとまぎらわしいことがあります。痛みが強いときはお医者さんに相談してみてください。

2 足うらの痛み

 足うらの痛みのほとんどは脂肪クッション、足底腱膜や筋の痛みですが、先日かかとの骨挫傷(目に見えないヒビ)の人が二人受診しました。どちらも武道をやっている人で、練習でかかとを強く打ち付けるのが原因だったようです。

 靴底のクッション性が乏しい靴、短期間の体重増加、長時間の立ち仕事、運動量の増加がきっかけになることが多いです。歩幅を大きくとり、かかとを地面に押し付けるように歩く人はかかとなど後ろ側の痛み、ヒールのある靴で指のつけ根側を地面にたたきつけるような歩き方をする人は前側の痛みが出ることが多いです。

 どちらの場合も骨盤の動きを意識して歩くと、歩行が滑らかになり痛みが軽くなっていきます。歩き方については、ユーチューブなどの動画が参考になると思いますよ。

3 うす底・厚底

 スポーツ(特にランニング)をする人にとって、スポーツシューズの選択はとても大事です。最近のはやりは厚底シューズで、猫も杓子も…と言いたくなるくらい各社から販売されています。靴マニアとしていろいろ試した印象は、

  • 厚底はたしかに楽。だが走り方(動き方)のくせをカバーしてくれる分、くせの修正にはマイナスかも。厚底は本番用にとっておき、ふだんはうす底で練習したほうがいいのかもしれません。

  • うす底は自然な足の運びを練習するには好適。けがからの回復中(私のように)の人はこっちでまずカラダ作りをするべきか(ちょっと反省中)。

  • 速い人用の厚底は、F1レーシングカーのようなもの。はきこなすにはかなりの体力強化が必要。

  • どんな靴であれ動きづくりが大切で、ゆっくり軽い動きからはじめて徐々に慣らしていく。あわてて結果を求めない。といったところです。

4 どんな靴が合う

  • いいものはいい・・・履いた瞬間気にいった(履き心地が素晴らしい)ならたぶん合っています。

  • ギミックにまどわされない・・・高性能の素材とか新技術の搭載など宣伝文句に惑わされない。履いただけで速くなる(故障知らずになる)シューズはありません。

  • 足の痛い人・・・一般のシューズで足の問題をすべて解決することはできないけれど、中敷きや別売りのインソールを工夫するとかなりのことができます。それに医療用のものよりずっと安あがりです。

  • 値段もだいじ・・・ある程度の値段は品質保証と考えてください。いろいろ試してみましたが、安いのにはそれなりの理由があります。

  • 靴はへたる・・・どんなに体に合ってお気に入りの靴でもかならずへたります。へたった靴が原因で足の痛みを訴えることは珍しくありません。痛みが出てきたら靴の買い替えを検討してください。

ねりまインクワイアラー 168 緊急事態宣言

 コロナウイルスの感染のピークを減らし、医療のひっ迫を避ける。これが緊急事態宣言の目的です。しかし今までのやり方では十分な対応ができなくなっているようです。医療に偏りすぎず、経済とバランスをとって新しい方針を打ち出せるのか。これからが注目と思います。

松ぼっくり通信 2021年 3月号

疲労と元気のあいま

 最近疲れやすくなったと相談を受けることがあります。疲れやすくなったと感じるのは、年のせい、運動不足のせい、あるいはストレスのせい?なかなかわかりにくいですね。今回のお話です。

1 精神疲労と肉体疲労

 慶弔に関わらず何かの式典や行事に出るのは疲れますが、まったく行ったことがない場所や知らない人ばかりだったりするとさらに疲労感が強くなります。このように同じ場所で同じ空気を吸っていても緊張感が強ければ疲労しやすく、リラックスできれば疲れにくくなります。これは脳の疲れ=精神疲労で、脳の調子が良いかどうかで疲労にどれだけ耐えられるかが決まってきます。

2 年をとると疲れやすいのか

 肉体疲労はわかりやすいです。ふだん以上にたくさん歩いたり、重いものをたくさん運んだ時の足のだるさやあちこちの筋肉痛を誰もが経験しています。筋肉内のエネルギーが枯渇したり、筋肉や腱のダメージが重なると、神経を伝って脳に連絡があり、(休んだほうがいいよ!)と言ってくるのです。しかし最後に判断するのはやっぱり脳なので、脳の調子がいまいちだと肉体疲労も強く感じることになるわけです。

 となると、脳を元気に保つことが疲れを癒す早道です。長年患者さんたちの相談をうけていても、気持ちに張りがある人はやはり疲れにくいと思います。

 脳の機能自体は、からだのほかの部分と同じく年齢の影響を受けます。神経細胞の数が減り、一個一個の神経細胞も年をとります。だから若い人と全く同じというわけにはいかないでしょう。でも脳のすみずみまでしっかり働かせて手入れを行っていれば、脳の老化を防ぎ、活性化させることができます。筋肉をいっぱい使うと筋肉の血流量が増えるのと同じように、脳をいっぱい使えば脳の血流量が増え、脳細胞が元気になっていきます。

 ただし、一か所だけを集中して使いすぎると無理が来るのも筋肉と似ています。だから脳の幅広い機能をまんべんなく使うこと、そして疲労をためないことが大切です。

3 線維筋痛症と慢性疲労症候群

 この二つは今の医学ではまだよくわかっていない病気です。繊維筋痛症は体中の節々が痛くなるとともに、疲労感やさまざまなからだの不調が起きます。慢性疲労症候群では通常よりはるかに強い疲労感が続くほかにも体中の痛みなど多彩な不調がおきて、日常の生活をすることが困難になります。

 どちらも原因がよくわからず、手探りの治療が行われていますが、いろいろな調査が行われて運動をすることはある程度役に立つことがわかりました。きつすぎず、本人にできる範囲で、少しづつ行っていくことがだいじです。原因不明ながらストレスが少なからず関係している病気なので、やはり脳の疲労=精神疲労が発病の一因なのかもしれません。

 近年こういった一見謎のような病気が増えてきたことと、ストレス過多な現代生活には何らかの関係があるようです。ストレスは有り過ぎても無さ過ぎてもよくないので、そのバランスをどうやって保つか。ここに疲労とうまく付き合う秘訣があります。

4 疲労と回復のバランスを

 脳をまんべんなく使い、脳のすみずみまで新鮮な血液が行きわたり、老廃物が除かれ、栄養分が届く状態にする。使えば疲れは出てくるが、ため込まないようにする。一か所だけ集中して使うと壊れやすいので、同じことばかりするのは避ける。ちょっと疲れがたまったら、しっかりと休養を取る。こうすれば脳の健康が保たれ、やる気が失われず、毎日元気よく暮らすことができます。そのためにだいじなことを整理してみます。

  • 使う(ストレスのかかる)ところは幅広く・・・脳にもからだにも言えることです。一か所に集中して負担がかかることを避けましょう。いつも同じことをぐるぐる考え続けたり、すわりっぱなしで長時間仕事をするなどをさけ、間に休憩を入れ、気晴らしをしたり散歩をしましょう。

  • 使っていないのはどこか考える・・・体を動かしたり、人とおしゃべりするなど、脳の広い範囲を使う機会を作りましょう。前はしていたが最近はやらなくなったこと、前からやってみたいと思っていたことなど、新しい経験をとり入れるのもすばらしいです。

  • 睡眠時間や食事をたいせつに・・・起き抜けにすっきりとしていれば、多少眠りが浅くても目が途中で醒めてもオッケーです。食事は幅広くいろいろなものを食べましょう。

  • ちょっとだけ無理を・・・人は楽に馴れるものです。ときどきいつもよりがんばってみてください。適度な疲労=適度なストレスは人生のスパイス、良いトレーニングになります。

ねりまインクワイアラー 167 コロナワクチン

 効くのか効かないのか。副作用は?といろいろ心配になりますが、最近のワクチンは作り方から一新されています。体の事情(病気・アレルギーなど)が許す方は、ワクチン接種をお勧めします。

松ぼっくり通信 2021年 1・2月号

良い姿勢のみつけかた

 姿勢がだいじだとよく言われますが、どんな姿勢がいいかにはだいぶ誤解があるようです。今回のお話です。

1 「良い」ってどういうこと?

 だれにもあてはまる良い姿勢がある。こう思い込んでいませんか。目鼻立ちがみなちがうのと同じように、体つきも千差万別です。ひょろっとした人もいれば、全体にまるい感じの人もいます。せぼねや手足の骨も形は千差万別なので、人とちがうからおかしい!ということはありません。

 良い姿勢とは「その人にとってもっとも無理がなく、骨や筋肉に負担がかからず、疲れにくい姿勢」のことです。だからどんなに人と違っていても、自分にとって快適で楽に動けるのならそれがあなたのベストの姿勢だといえます。

 友人や家族から「背中が丸くなった」とか「年寄くさい」と言われても、あなたが気持ちよく動けているのならそれでいいのです。見た目でいろいろ言われても、それは余計なお世話だと考えましょう。

 ところが知らず知らずのうちに余計な力が入って、姿勢が崩れることがあります。この姿勢では、世間に対して身構え、肩を怒らせ、胸を反らしあごを上げます。私は強い、負けないぞ!ゴリラの威嚇ポーズを思い出すとイメージがわくはずです。 2 「イケイケどんどん!」姿勢

実際には写真のようにもっと目立たないポーズですが、ストレスに負けず立ち向かおうとするとき、無意識にこういった姿勢となりがちです。土俵上での力士の姿勢が典型的です。戦う前の準備状態をあらわす姿勢ですが、全体に筋肉に力が入っていますから、長く続けると疲れやすいし、体のあちこちがこったり痛くなったりします。

厳しい世の中、ときにはこういう姿勢も必要です。企業戦士の姿勢。でもずっとこれだとくたびれてしまいますよ。

3 「かしこまってござる」姿勢

  できるだけ目立たないようにしたい。だから目線を落として姿勢が合わないよう、うつむき加減になる。自己主張をせず、背景に溶け込む感じ。「イケイケどんどん」とは逆の意味で、世の中を生き抜く処世術をあらわす姿勢です。

 家父長制が強かった昔、女性はこういった姿勢の方が多かった気がします。いや、今でもそうかもしれません。控え目、従順、やさしい感じ。男性で言うなら、ワンマン社長にかしずく秘書のイメージです。もっと快適な姿勢に比べると、ぜんたいに小さく縮こまろうとするので、これはこれで疲れやすいのです。

 伝統的な日本社会で美徳とされてきた慣習にぴたりと一致する姿勢。でもこれが習慣となれば、腰痛や肩こりの原因となりますよ。

4 良い姿勢とは流れる水のごとし

 良い姿勢とは、決して固まったまま動かない姿勢のことではありません。むしろ変幻自在な身のこなしと考えたほうがいいかもしれません。

姿勢は年齢で変化する・・・背骨はたくさんの骨がつながってできていますが、骨の間には軟骨(椎間板=写真の黒い部分)がはさまっています。年齢を重ねると、軟骨はどんどん厚みを減らし、背骨全体の湾曲が増して背中が丸くなっていきます。だから年を取って背中が丸くなるのは自然なことです。若い時より背中が丸くなったら、楽な姿勢=良い姿勢も丸くなっていきます。ときどき背筋を伸ばすのは構いませんが、いつでもまっすぐにしようとすると、かえって背中がつかれてしまいます。

かんぺきな姿勢でも疲れる・・・一番快適な姿勢であっても、長く立ち続けたり座り続ければ、やっぱり疲れてきます。姿勢を保つために働いている筋肉にすればずっと力を入れ続けていますから、疲れないわけがありません。だから疲れないためには姿勢をときどき変えたり、動き回ったり、寝転がったりすることが必要です。

姿勢のお手本は就学前の子供たち。じっとするのが苦手で、いつも動き回っています。学校に行ってじっとすることを教わる前ですから、体が感じるままに行動しています。どの子も自由に動き回っているとき、その姿勢・身のこなしは見事なものです。子供たちを見習って、大人の私たちも、もっと自由に、もっと身軽に動き回ることです。

ねりまインクワイアラー 166 男らしさ女らしさ

 マスクをしているのでリップはつけないという女性が増えているそうです。在宅勤務が増えて、会社の在り方や暮らし方にもいろいろなアイデアが生まれています。男らしさ・女らしさの見直しもその一つ。男だって男っぽくふるまう必要はありません。コロナがきっかけになり、もっと自由な生き方ができるようになるといいですね。