目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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松ぼっくり通信電子版

松ぼっくり通信 2020年 8月号

足うらのトリガーポイントを治す

  トリガーポイントとは、筋肉の中にできる押して痛む「しこり」のことです。アメリカの医師トラベル博士が発見したもので、博士は足うらのトリガーポイントをまとめて『毒蛇の巣』と呼んでいました。大柄で肥満したアメリカ人には足の相談が多いのですが、日本でも増えている気がします。今回は足うらケアのお話です(詳細版はネットで)。

1 どんなときにトリガーポイントを疑うか

 赤く腫れあがっていたり、熱を持っているのは足底腱膜などの急性炎症です。パッと目に何ともないけれど、強く押すと痛むときトリガーポイントを疑います。

 歩くときの足うらの痛みが主な症状で、上図の赤いところが痛みを感じる部位、ペケ印が筋肉のあるところです。仕事や運動で足をいっぱい使う人は筋肉に疲れがたまります。またひざの故障や外反母趾などで歩き方に無理がかかる人も足うらの筋に負担がかかります。

 固まった筋肉が神経を圧迫するとしびれ感を感じることがあり、足うらのしびれの原因になっている可能性があります。また足うらのつりもトリガーポイントが原因の可能性が高いと思います。

上の図の赤いところが痛みを感じるところ、×印がトリガーポイントの位置です。足うらの痛みがある人は、自分の足を触って確認してみましょう。

2 なぜできる?

トリガーポイントができる理由をあげると次のようになります。

  • 筋肉に疲労がたまる

  • けががきっかけでおきる

  • 急に負担が増えた

  • 強い冷え(血行が悪くなる)

 激しいスポーツや重労働でなることがある一方、普段あまり体を使っていない人が急に体を動かしてできることがあります。直接ぶつけたところにできることもあれば、ケガの瞬間に力が入ったところにできることもあります。体重増加や転職がきっかけになることもあります。足の場合、冷えがきっかけでトリガーポイントができることもまれではないと思います。またストレスも原因になります。

3 トリガーポイントのセルフケア

 体の他の部分と同じようにマッサージが有効ですが、じょうぶな脂肪と腱膜の奥にある筋肉をマッサージするのはけっこう大変なのです。そこでゴルフボールを使ったセルフケアをお勧めしています。

 テニスボールでもできなくはないのですが、骨のすきまの小さな筋肉をマッサージするにはゴルフボールが最適です。床と足の間にゴルフボールをはさみ、体重をのせてゴロゴロ転がします。写真のように2個を靴下に入れて使うと使いやすいです。

 はじめたとたんに痛い!と感じる方もいますが、やっているうちに痛くなってくる方もいます。ゴロゴロしていると、しだいに痛みが軽くなってくるはずです。でも、すぐに効果を期待しないでくださいね。血行の良くなった筋肉が次第に柔らかく、ストレッチされるのには日数がかかります。体の変化はゆっくり起きてきますから、こまめに毎日ゴロゴロしながら、気長に改善を待ちましょう。

ゴロゴロが終わったら、写真のように指をストレッチしてみましょう。筋肉がほぐれたときのストレッチは効果的です。軽く痛みを感じるくらいのところで、20‐30秒ストレッチします。   足の痛みすべてがトリガーポイントのせいではありません。やるとかえって痛い、つづけても効果がないと思ったら、あらためてご相談ください。

ねりまインクワイアラー 161 Go To キャンペーン

 コロナで打撃を受けた観光業界を下支えするため、国の施策で代金の35%が補填されるそうです。行くか、行かないか。迷いますが、興味ある人は旅行代理店などに問い合わせてみてください。

松ぼっくり通信 2020年 7月号

目的別にトレーニング!

 コロナ緊急事態宣言のあいだ、みなさんはどう過ごされていたでしょうか?体力が落ちた。どこかが痛くなった。もう年のせいか?いろいろ考えてしまいますね。でも、あきらめずにトレーニングにとりくめば意外なくらい体力が上がってくるかもしれません。

1 からだが硬くなった

 毎日行っていた買い物が週一回になった。在宅勤務が増えた。コロナの影響で生活習慣にいろいろな変化が生まれました。診察して強く感じるのは、からだが硬くなった人が増えていることです。特別なストレッチをしていなくても使っているところはそれなりに柔らかさが続きます。使わないとどんどん硬くなるのは、からだを作っているコラーゲンというたんぱく質が縮まりやすいからです。

2 つまづいたり、転びやすくなった

立つ・歩く・座る・物を運ぶ・上げる・おろす。あたりまえにやっていることが実は大切です。仕事や用事のあるなしに関わらず、ひまがあったら体を動かしましょう。さらに柔らかくしたいときは、体操やストレッチをしてください。こまめにやればまた体はやわらかくなってきます。

 足が上がらなくなったのが原因です。股関節を前後に大きく動かす筋肉はももの付け根にありますが、この筋肉が弱ってきたからです。小刻みによちよちと歩くくせがつくと、付け根の筋肉を使わないのであっという間にそこが弱ります。

 手を振り、いつもより大股で、ゆっくりと歩く練習をしましょう。犬の散歩は、人の散歩の代わりになりません。犬とはべつに、自分専用の散歩を行いましょう。

3 階段で息が上がる

 心臓や肺の病気でない限り、筋力低下が原因です。年配の方は昔の軽自動車(360cc)で坂道を登った時を想像してください。車は必死で登っているのに、なかなかスピードが上りません。排気量が少ない車と同じように、筋肉量が少なくなると重力に抵抗する運動をしたときに非常につらく感じるのです。

 こういう人は筋肉を強くしましょう。まずたんぱく質を多めに摂って、筋肉がつきやすくします。つぎにスクワットや階段上りなど、足腰にややきつい運動を続けます。息が上がり、ぜーはー言うくらいでいいのです。急がず、ゆっくりとやるのがコツです。はじめのうちは駅やデパートの階段をつかまりながら上り下りするのもいいですね。慣れてきたら、階段をわざとゆっくり降りるのもいい足腰の運動になります。転ばないよう注意してください。

4 速く歩けなくなった

 筋肉には速筋と遅筋の2種類があって、年齢が高くなっても遅筋はあまり減らないのですが、速筋は減りやすいことがわかっています。速筋が減ると素早い動きをしづらくなるので、歩くのが遅くなったり、さっと足が出にくく転んだりします。 でも、年をとっても速く歩くことは可能です。実際に軽快なスピードで歩いている方がいっぱいいます。何がちがうのか?じつは「速く歩く練習をする」ことがカギです。なーんだ!と思ったかもしれませんが、これがトレーニングの「目的性」と呼ばれる考え方で、何を狙ってトレーニングをするかが大事なのです。たとえば3分速めに歩き、3分ゆっくり歩くを繰り返す。これを続けるだけで歩くスピードは速くなるはずです。

5 すぐに疲れるようになった

 貧血や栄養バランスの崩れのこともありますから、食事に注意してください。そうでなければ有酸素運動の不足が原因です。有酸素運動とはからだに酸素を取り込んで行う運動のことです。ウォーキング、サイクリング、ランニングやハイキングがこれに当てはまります(筋トレや100メートル走は無酸素運動と呼ばれます)。 有酸素運動を続けていると、体中の毛細血管が発達して全身の血行が改善します。また細胞内のミトコンドリア(エネルギーの発生装置)が活性化され、しだいに長い時間体を動かしても疲れにくくなってきます。しばらくからだを動かしていなかった場合、まずはウォーキングを1,2か月やってみましょう。週3,4日、30分くらいから始めて徐々に時間を伸ばしていきます。1時間くらい連続で歩けるようになったら、軽いジョギングをしたり、長めの街歩きやハイキングに出かけるのもいいでしょう。このくらいまでくると選択肢が広がっていろいろなことができるようになります。皆さんの好みに応じて、やりたいことにチャレンジしてください。

ねりまインクワイアラー 160 ウイルスは生物?

 生き物を大きい順に並べると、ヒトや樹木などの多細胞生物、アメーバや緑藻などの単細胞生物、細菌、そしてウイルスの順番になります。ウイルスは遺伝子であるDNAやRNAは持っていますが、細胞組織は持っていないため、じつは生物ではないのでは?という疑いがありました。現在では、ほかの生き物のからだにもぐりこんで相手の体を利用するために、遺伝子以外の成分を捨て去ったのがウイルスではないかと考えられています。ウイルス遺伝子の一部は寄生された生物の遺伝子に紛れ込み、そのまま受け継がれることがあり、ヒトの遺伝子でもウイルスの断片が入り込んでいるそうです。好き嫌いにかかわらず、ウイルスと生き物の付き合いは長く、複雑に絡み合っているようです。

松ぼっくり通信 2020年 6月号

手・腕のセルフケア

先日クリニックのスタッフに「小学生の時には学級通信をガリ版で作っていた」と話したら、「ガリ版って何ですか?」と聞かれました。デジタルネイティブ世代にとって、ガリ版は古代の道具のようです。楽になった世の中ですが、手や腕の故障は逆に増えている気がします。今回は上肢のセルフケアのお話です。

1 箱の前で8時間はつらい

今のほうがずっと便利になり、暮らしは楽になったけれど、腕から指にかけて細かい反復作業をすることが極めて多くなりました。とくにパソコン作業では長時間指先を動かし続けることで手や腕の筋肉に疲労が蓄積しやすくなり、故障の大きな原因になっています。昔の人に、「あなたの遠い未来のご子孫は、一日中四角い箱の前に座り、朝から晩まで木の板を指で叩き鳴らして暮らしています」と話したら、たぶん信じてもらえないでしょう。食べ物を得たりお金を稼ぐためには、文字通り手に汗流して働くことがあたりまえでした。原始時代からあなたの祖父祖母の世代まで、ほとんどの人はそうやって暮らしていたのです。だから、体の仕組みも汗水たらしながら動き続けることができるように設計されています。今よりずっと生活は厳しかったので、過労や栄養不足で病気になることが多く、寿命は縄文時代で30代、昭和の初めでも60代がやっとでした。

2 痛みは遠くで感じる

気が付かないような小さな故障も、チリが積もるように増えていくと、ある日どこかが痛い、腫れた、むくむといった症状になります。

ほとんどの場合で痛みはオリジナルの部位よりも遠くに飛びます。たとえば肩のつけ根の故障では痛みが腕~手に、前腕の故障では手首~指先に飛びます。

だから痛いところだけでなく、もっと体に近いところまであちこち触ってみましょう。押して痛むところがみつかったらそこが原因部位かもしれません。

3 か弱い筋肉にやさしく

もともと前腕から手のひらまでの筋肉は細かい作業をすることに長けていますが、疲れやすく持続的な力仕事には向いていません。力仕事には肩の筋肉が向いています。こういった筋肉の特徴を生かして体を動かすと故障しにくくなります。たとえばぞうきんを絞ったり、固いビンのふたを開けるとき(図)、手首を動かそうとせずに肩の力で手を動かすと楽です。また、腕は2,3キロの重さがありますから、宙に浮かして作業するよりも、クッションのような支えに乗せて重さを取り払ったほうが楽に動かせます。こうすることでキーボード操作など上肢を伸ばしたまま細かな動きをする作業でも疲れにくくなるでしょう。

(図;矢印のようにてくびをひねると痛めやすいです。手首を動かさず、肩から腕全体を動かしましょう)

4 マッサージとストレッチをこまめに

手・腕の故障の大半は筋肉の疲労が原因でおきます。筋肉は前腕と手にあって、手首と指にはありません。だからマッサージは手と前腕にします。手のひらだけでなく手の甲(骨と骨のすきま)を反対側の手の指先で押します。親指だけでなくほかの指も使って、ゆっくりとリズミカルにやってください。

押して痛いところはもちろん、こった感じがするところもマッサージしてください。1回数分でいいので、一日6-7回行うとベストです。

前腕の筋肉のストレッチも効果的です。反対側の手で手のひらをつかみ、手の甲側を伸ばし、次に手のひら側を伸ばします。筋が伸びる感じがして、かすかに痛いくらいまで伸ばします。これも一日数回やると効果的です。   すぐには効果を感じないかもしれませんが、毎日続けると痛みやこわばりが軽くなるのを実感できるはずです。

ねりまインクワイアラー 159 ガリ版とは

正式には謄写版(とうしゃばん)と言って、ロウを引いた和紙を鉄筆で削り、インクでをつけて擦ります。きわめてローテクですが、味わいのある絵が描けます。現在でも愛好家・プロの作家さんが活躍されています。

松ぼっくり通信 2020年 5月号

スポーツのけがとリハビリ

 毎年6月に練馬医学会・公開講座が開かれていて、今年は私が発表する予定でした。新コロナウイルス騒ぎで中止になったので、ここでミニ発表会をやってみることにしました。

1 オーバユース(使いすぎ)により生じた踵骨裂離骨折のてんまつ

私自身の経験です。約5年前より右側のアキレス腱部痛があったのですが、おととしの10月末、ジョギング中に突然右踵に衝撃を感じて走れなくなり、タクシーに飛び乗り病院を受診しました。そのまま入院、翌日手術を受けました。以来4か月の間、ギブスや装具をつけ、松葉杖を使って暮らしました。はじめのうちは折れた側の足をまったく地面に着けなかったので大変でしたが、装具になってからは部分的に足をつけるようになってだいぶ楽になりました。

 4か月ぶりにウォーキングができたときはほんとうにうれしかったです。ゆっくりとしたジョギング、歩きながらのちょっとだけランニングと練習していき、けがより約6か月後にフルマラソンを完走(半分歩き)、12か月後に競歩大会を完歩、16か月後に30キロマラソンを完走(ラン)できました。

2 踵骨裂離骨折とは

 かかとの骨にはふくらはぎをつないでいるアキレス腱がついています。ふくらはぎの筋肉がアキレス腱をひっぱると足で地面をけることができます。だから走るときにだいじな部分なのですが、それだけに無理もかかりやすいのです。もともと調子が悪くてかばった走り方をしているうちにかかとの骨にひびが入り、ついには割れてしまったのでしょう。

左は今のレントゲン写真:アキレス腱と骨を留めるためにかかとの骨に金属のピンが埋められているのがわかります。空港の金属探知機にひっかかるかもしれませんね。

3 スポーツ障害の予防で必要なこと

(さらに…)

松ぼっくり通信 2020年 4月号

 不快・不安と向き合う

 医学部の学生の時です。ある日腹痛と下痢を発症し、通学の電車を何回も下車してトイレに駆け込みました。次の日からほぼトイレにすわりっぱなしとなり、脱水対策の塩をなめながら数日すごし、落ち着いてからよろよろと通学先の大学病院を受診しました。

 内科の教授が診てくれました。自分の考えではアメーバ赤痢かもしれないと説明すると、「君は最近熱帯地方に行ったのかね?」と聞かれ、「まったくありません!」「じゃ、なんか生ものでも食べなかった?」「前の日に居酒屋でサケのルイベを食べました!」「たぶん食中毒だねえ。薬出しとくから飲んどいてね」ということで無事良くなりました。

 典型的な「生兵法はけがのもと」でしたが、本人にしてみれば笑い事ではなく、ほんとうに死ぬんじゃないかと思いました。ずっと家の中に一人でいて、塩をなめながら家に置いてあった「家庭の医学」を読み込むうちに不安をふくらませてしまったのです。今回はからだの症状そのものより考え方を扱います。

1 不快・不安はあたりまえ

 先を見通せないジャングルの中。かさかさと葉のこすれる音が聞こえ、茂みの奥では何かが動いたようだ。毒蛇や猛獣を気にしながらゆっくりと進むが、足もとで「ポキン!」と音がした瞬間、頭上で何かが叫んだ!

 こんな状況ではだれでも不安を感じるはずです。ほんとうの危険が起きる前にあらかじめ危険の可能性を予測する。いざというときに対応できるように心も体も準備しておく。この危険対応モードが不安の正体です。

 いっぽう不快は文字通りからだにいやな症状があることで、問題が起きていると知らせてくれるアラームサインです。痛いところをかばったり、体調不良で寝転がったりするのはアラームサインがあるからできることで、不快・不安ともにからだに必要な機能だといえるでしょう。

2 不安のメカニズム

 不安のように目に見えないことを調べるのはとても難しいのですが、脳科学の進歩からいろいろとわかってきました。不安がとても強い人たちの場合、脳の狭い領域で考えがぐるぐるとうずまいていて、ほかの領域に刺激が広がっていかないことがわかりました。とくに偏桃体という不安や恐怖に関係する部位が活発に働いていて、「落ち着いて考える」領域に刺激が広がっていかないことがわかりました。

 このことからわかるのは、いつも同じことを考えつづけるよりも、多彩な刺激を脳に与えることで脳のいろいろな部位を働かせることが脳の健康にとても大切だということです。不安(危険対応モード)はあくまで非常モードですから、ずっと続けていたら心も体も疲れてしまいます。原始時代に発達した危機対応用の脳の仕組みを、今の暮らしに合うようにうまくコントロールする必要があるのです。

3 不安と向き合う

 不安が続くときに自分でできることは二つあります。一つは正直に不安と向き合うことです。何に対して不安を感じているか考えてみます。落ち着いて考えるには、口に出して言ってみる、紙に書き出してみるなど頭の中身を一回おもてに出してみるといいでしょう。だれかに話してみるのもいいですし、日記を書くだけでも不安が軽くなります。不安を感じる理由は一つではないことが多いので、できるだけ具体的に箇条書きにするとわかりやすいです。つぎに自分ができることを探します。案ずるは産むがやすしで、すぐにできることはやってみましょう。ちょっとしたことが意外な発見・安心をもたらしたりします。

 二つ目は今の気持ちにばかり集中しない、させないことです。先に書いたように、気持ちがぐるぐるとせまいところを回り続けるのはいいことではありません。何かを楽しんだり面白がったり、味わったり感動したり、あるいはしんどいとかすっきりとか感じる心の領域が誰にもありますから、そこを刺激すれば脳のバランス=心のバランスが回復していきます。小さいことでいいので、今の生活からちょっとはなれた何かをやってみる・経験することです。

4 コロナウイルスと私たち

 いまコロナウイルスの話が私たちの心に重くのしかかっています。大事な情報を入手して、できる予防策を行うのは大切なことです。現在までの報告で、屋外で人が密集しない環境では感染の危険がまずないと考えられていますから、かぜ気味や花粉症の方でなければ、外出して散歩することをお勧めします。不安ならマスクはつけたままでよいと思います。2,3週動かないと体力や内臓機能も落ちてきますし、日光を浴びることで体内合成できるビタミンDは免疫機能に大切な働きを持っています。自然のエレメント(風、陽ざし、花の色・香り、音、雲の動きなど)で五感を刺激し、心のバランスを取り戻しましょう。

ネット、SNSを見る時間は最小限にして、好きな本や映画を見たり、楽しいテレビ番組を見るのも手です。SNSでもインスタグラムやピンタレストは明るい内容が多くておすすめです。先が見えないと不安を感じるのは当然ですが、出口のないトンネルはありません。ここは気持ちをしっかり持って、みんなで乗り切りましょう。

 

ねりまインクワイアラー 157 なわとび

 マラソン大会がぞくぞくと中止になり途方にくれました。そこで妻がやっているなわとびに、私もチャレンジしてみました。これがキツイ‼100回もつづけるとぜいぜい言います。キツイということは効く‼けがで弱ったふくらはぎもばんばん張ってきました。しばらくやってみることにしました!

 

松ぼっくり通信 2020年 3月号 

役立つストレッチ

18歳のときスキーで膝をひねって以来、左下肢の重苦しい痛みが残っていました。35歳のときにストレッチを始めて半年たったころ、痛みが消えていることに気づきました。それからずっとストレッチの信奉者だったのですが、なんでもストレッチが効くか?というとそうではありません。今回のお話です。

1ストレッチのコツ

ストレッチはたしかに効きますが、効かせるにはコツがあります。①ゆっくりと②伸ばすところの力を抜いて③ちょっと痛いくらいで④少し長め(20秒くらい)でやりましょう。毎日やったとして、伸びてきたと実感するには2,3週はかかるでしょう。筋肉が原因で感じる痛みやしびれはもう少し長くかかるかもしれません。おすすめの回数は週2回くらいから毎日までいろいろですが、わたしは毎日を勧めます。そのほうが習慣になってやり忘れが減ると思います。経験上、1日1回で十分なのですが、2,3回するとより効果が感じられるかもしれません。
一例として、私もやっている真向法(まっこうほう)をQRコードで紹介します。

2ストレッチの種類

大きく二つに分かれています。一つは静的なストレッチで、静かにゆっくりと筋肉を伸ばす方法です。一般的なストレッチ法で、先に挙げた真向法もこれに入ります。
もう一つはダイナミック・ストレッチと言って、動かしながら行うストレッチ法です。細かく分けるとリズミカルに動かす方法(バリスティック・ストレッチ)やPNFなどいろいろあるのですが、動かしながらストレッチをするという点で共通するやり方です。 ストレッチといえば静的なストレッチだと誰もが思っていたのですが、ここ十年で話が変わってきました。

3アンチ・ストレッチ派の逆襲

永いこと、ストレッチは体にいいということに誰も疑問を持つことはありませんでした。ところが少し前から静的なストレッチをスポーツの前(試合の直前)に行うとパフォーマンスが損なわれるという主張が出てきました。調べると確かにその通りで、静的なストレッチを行った直後は瞬発力・筋力が下がることが明らかになったのです。
そこで「ストレッチは体に良くない」という意見が出てきましたが、これはちょっと極端だったようです。スポーツをする直前に静的なストレッチを行うのは良くありません。しかしリズミカルにからだを大きく動かすダイナミック・ストレッチをスポーツの前に行えば、ウォーミングアップになると同時にからだの柔軟性向上に役立つことがわかってきました。
では、ゆっくりとからだを伸ばす静的なストレッチは不要なのでしょうか?いえ、そんなことはありません。はじめに書いたように筋肉痛の改善につながるだけでなく、姿勢のくずれを治し、腰痛や肩こりを軽くします。手足が楽に動かせるようになりますから、スポーツの動きが上手になり、けがや故障も少なくなります。つまり日ごろはゆっくりとしたストレッチを行い、運動の前には大きく体を動かすダイナミック・ストレッチをするのがベストです。

4ストレッチの注意点

ストレッチに慣れてきたころ、足を大きく開いて前屈するストレッチ(真向法第3法)をしているときに腿の付け根にぶちっと衝撃が走り、肉離れを起こしてしまいました。ちょっと痛いくらいのほうが効くと書きましたが、なにごともやり過ぎは禁物です。筋肉の柔軟性は日々変化します。からだの反応を感じながら加減して行いましょう。
ストレッチを続けていたのですが、あるとき太ももうらの痛みがでてきて、座ったり走っているときに自覚するようになりました。ストレッチをさらに懸命にやっても、むしろ痛みが強くなった気がしました。考えた末、ストレッチを3か月ほど止めてみました。なんと!これで痛みが完全に消えてしまったのです。からだの仕組みは複雑です。良かれと思ってすることが必ず体のためになるとは限りません。アタマをやわらかく使うこともだいじです。
若々しさを感じさせる動き、はずむような身のこなしはどこから生まれるかというと、体中の筋肉が文字通りバネのようにはたらいて、力を瞬時にためて即座に放す!動きをしているからです。ゆっくりしたストレッチだけではこの機能を鍛えられません。けがや病気で体力が低下した人がリハビリをするとき、ストレッチや筋トレだけでは回復がいま一つなのはこれが理由です。私もリハビリ中ですが、やわらかく機能的な筋肉にするためにダイナミック・ストレッチをもっと取り入れねばと考えています。

 

ねりまインクワイアラー 156 ホーソン効果

 1924年、アメリカのある工場で照明の明るさが作業効率に与える影響の調査が行われました。作業場を明るくすると効率が上がりましたが、ものの試しに前より暗くしてもやはり効率が上がったのです。

この一見なぞのような現象は、工場の名前をとってホーソン効果と呼ばれています。ヒトはどんな形にせよ、注目されるとがんばって結果を出します。ある病院で金属のバンドを手くびに巻いたら患者さんの転倒事故が減ったという報告を聞いて、これを思い出しました。日本の有名なテーマパークで、実際にこの効果を職員管理に活用しているそうです。

松ぼっくり通信 2020年 2月号

動きを味わう

立つ。すわる。歩く。走る。誰もがあたりまえにやっている動作にも、意外なくらい個性があります。動きの個性の中には、ときにからだの故障につながるものがあります。そこで一度自分の体の動きをしっかりと味わってみると、新鮮なおどろきがあるかもしれません。

1 動きの個性とは

一番わかりやすいのは鉛筆やはしの持ちかたです。わたしは左利きですが、同じ左利きでも字の書き方は千差万別です。それと比べれば右利きは一見皆同じに見えますが、鉛筆を握りこんだような持ち方から軽く親指と人差し指でつまんだ持ち方までさまざまです。立っているとき、やや前屈みだったり反り気味だったり、背中のカーブが平べったくなることもあります。歩くときに骨盤が回転して足がスッと前に伸びる人もいれば、腰が固まったままで歩く人もいます。椅子から立ち上がるとき、からだの姿勢をあまり崩さずに立ち上がる人、一度からだを前に倒してから腰をそらして立つ人、必ず何かにつかまって立つ人などさまざまなやり方があります。

どんな動き方でも問題がなければいいのですが、エネルギー効率が悪いと疲れやすくなり、関節や筋肉に負担がかかれば故障しやすくなります。

2 仕事や暮らしの影響

人間があらゆる作業を自分でやっていたころとちがい、生活がとても楽になりました。いまは歩かずにバスや電車が使えます。水汲みに行かずに水道水が使えます。ガスコンロで煮炊きができます。電気を使って照明や風呂焚きをします。他の人がやった仕事に頼って現代的な生活が送れますが、自分の仕事は(からだの動かし方から見れば)ほぼ同一作業の繰り返しになります。

繰り返し作業で使い方が少ない部分は筋肉が弱くなり、関節がこわばります。使いすぎた部分は関節が腫れたり筋肉の故障がおきます。座り仕事では身体中をおおっている筋肉や靭帯のバランスが崩れがちで、腰痛・肩こりなどの不調がおきます。

3 動きを味わう

なんらかの不調を抱えている人はたくさんいます。そのすべてが筋肉からくるわけではありませんが、無意識に力を入れる習慣があることで、筋肉の故障を起こしていることは珍しくありません。

そこでからだをゆっくりと動かして、筋肉に力が入ったりぬけたりする感覚を味わってみましょう。たとえばゆっくりと歩きながら、この瞬間ひざはどう動いているのか、ふくらはぎの力は抜けているのか入っているのか、骨盤の動き、足の動き、腕の振りのリズムを感じます。「動く」という大きなくくりを一回捨てて、なにもかも初めての感覚で見直してみます。

おそらくはじめはよくわからないはずです。ゆっくり動きながらわずかに関節の角度を変えたり、足のつき方を変えたり、手の振り方を変えたり・・・微妙な動きを感じるには練習が必要です。

ここがかたいかな?力が入っているかな?と思ったら、わざと力を抜いてみます。寝転がってその場所をゆっくりと動かしてみます。思ったより軽い力で動かせるかもしれません。

よくあるのは脊椎の微妙な動きができなくなった状態です。背骨は小さな骨の集まりで本来は細かく動かせる仕組みがあります。ある一ヶ所だけに気持ちを集中してそこを動かせるか試してみましょう。数より質です。少ない回数で構わないのでその動きを味わいましょう。参考に「痛みのない暮らしのための筋再教育」著者クレイグ・ウィリアムソンさんのビデオ(右のQRコードを利用してください)を紹介します。いかに微妙な動きなのかよくわかると思います。

4 味わうと変わる

みなさんのからだをスマホに例えるとけっこう高性能なのですが、どういうアプリを入れるかで使い勝手はずいぶん変わります。いまあなたが使っている「運動アプリ」はだいぶ古いかもしれません。カラダは変わっていきます。赤ちゃん〜中高年、生活スタイルそれぞれに合わせてバージョンアップが必要です。動きを味わった感覚が、脊髄・脳に伝わり、運動プログラミングの修正が行われます。ゆっくりと動き、身体中にはりめぐらされた神経組織を使って動きの再調整を行う。「感じることは、すなわち生きること」だから、あたりまえと思っていた身動きにもう一度スポットライトを当てると、毎日の生活も新鮮に感じられるはずです。あせらず、ゆっくりとからだの動きを味わいましょう。

ねりまインクワイアラー 155 チーズダニ?

私が好きなチーズの一つ、エダムチーズはなんとチーズダニ(コナダニの一種)がつくことで熟成されるのだそうです。ミモレットも同じ、ちょっとびっくりですね。ダニがチーズの表面につくと独特の風味を作り出す発酵が進むのでしょう。念のため、市販品は表面を取り除いていてダニは付いていません。

松ぼっくり通信 2020年 1月号

無理なくモミモミ、おうちマッサージ

 マッサージというと、みなさんはどういうイメージを持つでしょうか?世間的には慰安的なマッサージやクイックマッサージのイメージが強いのではないでしょうか。私もそう思っていて、医者になってからも長い間その思いを払しょくできませんでした。

 しかしながら、クリニックでたくさんの患者さんを診つづけているうちに考えが変わってきました。 腰痛や肩こりに限らず、ちょっとした体の痛みの相談のうち、かなりの数が筋肉に原因のある痛みであって、マッサージやストレッチで良くすることができるのを実感したからです。 でもクリニックで治療できる時間は限られますから、やり方を患者さんに覚えてもらって家でやってもらうと大変効果的なのです。 

 自分でするマッサージをセルフマッサージと呼びますが、力が弱かったり手の関節症があったりでやりづらい人もいます。そこで指の代わりにマッサージ用の道具を使ってみると便利です。使い勝手を見ていきましょう。

(ホームページ:詳細は高野台松本クリニック www.takanodaimatsukuri.com にのっています)

1 テニスボール

 テニスボールを使った手製マッサージ器。左はテニスボール2個を並べて靴下に入れたもの(ここでは筒状包帯で代用)で、寝転がったまま背中のアチコチに置いて痛いところを指圧します。背骨の両側を同時にできるのが便利です。右はテニスボールをストッキングの先に入れたもの。使い方はこんな感じです。

 ストッキングの取っ手を手で持って高さを調整すれば、上から下までマッサージが簡単にできます。足を使って体全体をゆらすように動かせば、ボールがゴロゴロ動いて本格的なマッサージができます。

 セルフマッサージのコツはやりすぎないことです。え!これっぽっち?くらいがちょうどいいのです。そのかわりこまめに一日に何回かやることです。その場で効果を期待するのではなく、2、3日たってからちょっといいかな?と思うくらいでいいのです。毎日続ければ効果が積み上がり、すばらしい結果が生まれるかもしれません。

2 マッサージ棒

 一見すると妙な形のマッサージ棒。杖の持ち手に似ていますが、実際に使ってみるとこの形が便利です。

 三つの取っ手それぞれの形がちがっていて、真ん中あたりを手で握って押します。足裏など厚みのある部分にもシッカリと力をかけることができます。
 指の関節に負担をかけることなくしっかりと力をかけることができるすぐれた道具だと言えます。指の痛い人や女性にもおすすめで、プロのセラピストで手を痛めた人はこのタイプのマッサージ棒を使うことを検討してみてはいかがでしょうか。

 日用品にもマッサージに役立つものがあります。スクリュードライバーのグリップの部分、傘の取っ手、麺棒やスリコギなどですが、角がやや鋭角で使い方によっては皮膚を痛めるかもしれません。このように家にあるいろいろな道具もマッサージに使えますが、使い方にはこつがいるようです。 最後にだいじなことを一言。痛みを感じるところと、押して痛いところは一緒ではありません。押して痛いところは、自分が痛いと思うところよりやや近位(体の中心に近い場所)に見つかることが多いです。そこが痛みの原因部位なのです。マッサージをするときは押して痛いところに行いましょう。

 

ねりまインクワイアラー 154 誤った記憶

 テレビ番組「料理の鉄人」の名セリフ、「私の記憶が正しければ・・・」は懐かしいですが、人の記憶ほどあやふやなものはないことが最近の研究でわかってきました。記憶とはユーチューブの動画みたいなものではなく、小さな記憶の断片で構成されています。言ってみればレゴのブロックのようなもので、あとから好きな形に脳が積み上げていきます。その時々の状況に合わせて組み立てるから、出来上がりも異なります。ですから、みなさん、「言った!」「言わなかった!」の口争いはやめましょう。自分が本気で正しいと思っていても、そもそも記憶は不確かなのですから。

松ぼっくり通信 2019年 12月号

医療のすきま

お医者さんの専門は内科、外科、小児科、産婦人科などに分かれていますが、最近ではさらに細かく分かれて聞きなれない専門がどんどんできてきました。医療がどんどん精密になり、一人のお医者さんがすべてをカバーしきれなくなったためですが、それがいいこともあればこれは?と思うこともあります。今回は若かったころの経験をもとに少しだけお話ししましょう。

1 もとは全部一つだった

朝9時から夜6時まで昼休みを除き、びっちり授業。これが基本で、実験や実習があれば完了するまでなので、夜8時過ぎまでかかることも。夏休み冬休みは小学生なみ。それも補習や追試で削られます。解剖実習の追い込み時は徹夜する猛者もいました。これが6年間続くのが当時の医学生の生活で、今はもっときつくなっているはずです。とにかく覚えることが多いのが医学部の特徴です。知識はどんどん増えるのに、人間の能力は以前のままです。むかしは一人のドクターがあらゆる病気を診ていたのが、今の高い医療水準をたもつためには分担が必要になってきたのです。

2 話を聴く

いまとちがって研修医はほぼ無給、そのため夜間救急のバイト代で暮らしていました。診療技術はおぼつかなく、できる検査も限られひやひやの毎日で、腹痛や胸の痛みを訴える患者さんが来ると大変、あわてて当直室で医学書のページをめくります。

そんな中でひとつ学んだことがありました。よく聴くと患者さんの話にヒントが隠れているのです。だから外来では話を注意深く聴くことを心がけました。

ある日背中の痛みを繰り返し訴える年配の女性の話を聴いているとき、身動きに関係なく痛みが出ることに気がつきました。内科に相談するも戻され、また相談しては戻され…最後に膵臓の病気が見つかりました。

腰下肢痛で診るもじつは大動脈瘤、股関節痛の原因が特殊な腸ヘルニアだったなど、問診・触診で運よく診断できた経験が続いたので、しだいに診断学にのめりこむようになりました。なかでも痛みを扱うぶ厚い医学書に出会ったことが大きな転機となりました。

3 びっくりの経験

外科医のトレーニングや研究とは別に、触診や手を使う診断治療を扱う本を少しづつ読み始めました。そこには一般の医学書とはちょっとちがう世界が広がっていて、ほんとにこんなことがあるのかな?と思うような経験例が多数書かれていて、半信半疑ながら興味をもって読み込んでいきました。

そんなある日、大学病院の外来に内科入院中の患者さんが廻ってきて、たまたま私が診ることになりました。右のわき腹痛で半年の間入院している方でしたが、当時考えられる検査をすべて行っても痛みの原因が突き止められませんでした。そこでほとんど期待せずにまあ整形外科にも診させておこうということになったようです。

よくわからないがとにかく触診が大事!と思った私が胸のある場所を軽く押すと、患者さんが「痛い」と言います。そこでもう一回押したとたん、ぼこん!と衝撃がして患者さんが「ぎゃ!」と叫びました・・・意図せずに行ったこの一押しで患者さんの痛みは全快し、内科のドクターも私もよくわからないまま患者さんは無事退院しました。

4 医療のすきま

これは決定的な出来事で、難しい手術をこなす有名なドクターになるという野心がなくもなかったのが、地味にこつこつ患者さんを診る今のスタイルを求めていくきっかけとなりました。テレビドラマに出るようなすごい病気やけがを扱う世界は(それほど劇的ではないにせよ)実際に存在します。しかし、一般の外来では、有名な病気と病気のはざまに名前もつかない小さな故障があって、意外な症状が現れることも知ってもらいたいのです。

そして小さな故障は小さいだけにみつけにくいです。命にかかわる故障ではありませんが、症状から深刻な病気と見誤ることがあります。とくに痛みの診たてには小さな故障が混じっていて、診断が混乱しがちです。こういう小さな故障は医師の専門の中心ではなく隅っこのほうにありますから、どうしても注目されにくく、ときに忘れられがちです。たとえば整形外科では骨折、スポーツ医学、骨粗しょう症や骨腫瘍は専門の中心ですが、病名のつきづらい腰痛や肩こりははじっこのほうと言えるでしょう。顎関節痛にいたってはどの科のお医者さんも専門と思っていない節があります。同じことが医療のすきまのあちこちで起きているかもしれません。すきまの診療はたいへん地味なのですが、やってみると結構おもしろく、それなりに技量も必要です。もっと多くのドクターに関心を持ってもらいたい。そう願っています。

 

ねりまインクワイアラー 153 ねりまちてくてくサプリ

スマートフォンにいれるアプリの一つです。スマホを持ち歩くだけで一日の歩数をカウントしてカレンダーにのせてくれます。キャンペーンを行っている期間、目標歩数に達すると賞品をもらえるみたいなので、今度やってみようと思います。ちょっとウォーキングでもしようと思っている方は試してみるといいですよ。

松ぼっくり通信 2019年 11月号

力を抜く

数十年ぶりの強さの台風で家にこもっているので、ちょっとむずかしいことを書いてみましょう。表題のように余計な力を抜くことはとても大事です。うまく力が抜けているだけで痛みが消えてしまうこともあり、そもそも体が故障しにくいのです。でも、力を抜くということはほんとうに難しい。私の体験談を交えてお話しします。

1 「力をぬく」ことは脱力ではない。

脱力発作という特殊なてんかんでは崩れ落ちるように倒れてしまうのですが、普通の人はここまで脱力することはできません。神経系には姿勢や動作をコントロールしている無数のシステムが働いています。車を運転する人はハンドルとアクセル・ブレーキだけ意識していても、現在のコンピューター化した車では複雑な制御が行われているのと同じです。すなわち「力を抜く」とは、なめらかにハンドルを回し、絶妙のタイミングでアクセル・ブレーキを踏むことと考えるとわかりやすいと思います。最高の動きをするためには不必要な筋肉の緊張を取り去るが、なおかつスムーズに力を抜いたり入れたりすることが「力を抜く」意味だと考えてください。

2 技を磨くということ

私の経験をお話しします。あるとき何気なくネットを見ていると、一輪車のブログを見つけました。50歳を超えると一輪車に乗れないと書いてあったので、「?」と思ってさらに調べると70歳で乗れるようになった人もいることがわかりました。

それならということで一輪車を購入したのですが、いざやってみるとサドルにまたがるのも大変で、手すりに両手で必死につかまり、なんとかペダルに足をかけたものの前後左右にぐらぐら動いて手を放すどころではありませんでした。そんな状態から始めて雨の日も風の日も手すり磨きをつづけたある日のことです。手を放してペダルを回すことがほんの2,3メートルだけどできました!そこからだんだんと距離が延び、電柱一本ぐらいの距離は走れるようになったものの、今度は息が上がって続きません。疲れてそれ以上は進めませんでした。

そんなある日、ふっと体が軽くなる感じがして、息が上がらずに50メートルくらい走れました。そこからは順調、長い距離も平気、楽に曲がり、坂を上り下り、軽くジャンプもできるようになったのです。ここまで来てやっとわかったのは、それまではがちがちに力が入っていて、ずっと息をつめた状態だったのですね。最初からリラックスしていればもっと早くから乗れたのに…と思いましたが、あとの祭り。いきなり力を抜くことはできないようです。

最近のことです。競歩を数年前から続けて最低限の動きはできるようになったものの、速く歩くと息が上がって続きません。ある日、ユーチューブを見ていたら競歩しながら笑ったり話をしている人がいるぞ!と気付きました。そんなことができるのなら、もっと楽をしてもいいんじゃないか!そう思ったのです。じゃあタコのようにやわらかくなって、お尻をフリフリ歩いてやろう。思いっきりくねくね変な格好で歩いてみました。あれ?この感じ、これなら長く歩けそう。街のウインドウに映る姿は意外にも悪くない。競歩っぽい。この感じがわかって、かなり歩くのが楽になってきました。

3 力を抜くじゃまをするものと対策

自分の経験、スポーツ医学やボディワークの知識から力を抜くさまたげになることをあげてみました。

  • からだができていない  一輪車になかなか乗れなかったのは、体幹の筋力が弱かったことが一番の理由です。私たちの筋力はごく普通の生活をしているだけで落ちていき、とくに体幹の衰えは著しいです。年をとったら筋トレは必要です。

  • 早く結果を出そうとする  はじめから速く歩こうとしたのがいけませんでした。じっくり歩型を身につけるよう教わったのに、忍耐心がなさすぎです。こういった余裕のなさも力みの原因になります。またそれぞれのスポーツで筋肉の使い方もちがいます。筋力だけでなく神経系を慣らしていく練習が必要です。

  • 姿勢メーターの目盛りが狂う  一輪車・競歩ともに姿勢はまっすぐがいいのに、実際は背中が反り気味になっていたようです。からだを積極的に動かさなくなると、位置感覚の目盛りが少しづつ狂ってきます。まっすぐ立っているつもりでねこぜやそり腰になっている人は珍しくありません。鏡やビデオを利用して修正しましょう。

  • 人の目が気になる  気にしないようでも気になっているものです。対策としては、まずあまり人気のないところで練習し、上手にできるようになったら人の目に触れて場数をこなすといったところでしょうか。競歩の場合、ランニングマシン上で目をつぶると歩きに集中できました。ほかの競技でも基礎トレやシャドウ・トレーニングのときに応用できそうです。

  • 思い込みを消す  なんとなくこうあるべきだと決めつけていることがあるはずです。ためしに真逆のことをやってみるのも手です。競歩でもがんばって歩くという思い込みを消すことが必要だったのです。

ねりまインクワイアラー 152 マッサージ棒を使おう

自分でするマッサージはおすすめなのですが力が弱かったり、指の関節痛があったりで難しい人もいます。そんなとき、スクリュードライバーの頭、かさのとって、すりこぎなどつかみやすく先が丸くなったものを使ってマッサージするといい感じです。自分でやるから痛みの加減ができて安全です。もう少しいいものが欲しいと思ったら、市販のマッサージ棒を使ってみましょう。ネットで検索するとたくさんみつかります。