腕の痛み・しびれ
朝起きたときにどちらかの腕がしびれていることがあります。横向きのかっこうで、しばらく寝返りをしないでいるとなるようです。こういうときは仰向けになり、体の力を抜いて様子を見ているとしびれが取れてきます。腕の痛み・しびれはよくある相談ですが、ときには脳や内臓の病気が原因のこともあるため、症状以上に心配されて来院する方が多いです。しびれ・痛みがあるときのかんたんな見分け方をお話ししましょう。
1 手を動かすことができるか
しびれがきつくても手をしっかり動かすことができるなら、ひとまず安心です。たいていはくびから手関節にかけての末梢神経の圧迫が原因でおきるしびれで、緊急の治療は必要ではありません。
反対に、しびれはまったく感じないが指をちゃんと動かせないときは要注意です。比較的よく目にするのは橈骨神経麻痺で、指を伸ばす筋肉に力が入らないため物をつかむことができなくなります。上腕の外側に神経が圧迫されやすい部位があり、寝ているあいだに圧迫が続くと麻痺が生じ、別名「睡眠まひ」と呼ばれています。酔って寝たときに多いのも特徴です。多くの場合数週間で回復します。
きわめてまれですが要注意なのは、脳こうそくの「純粋運動型」で、しびれはないのに手が動かせなくなります。この診断はプロでも迷うことがあり、MRIなどの検査が必要です。脳梗塞ではスピーディな治療で完全に治ることがありますから見分けが大切です。
2 むくみ・腫れ・熱の有無
しびれも痛みも目に見えるものではないため、むくみ、腫れや熱など客観的な証拠集めをします。むくみのあるところでは神経の働きが弱って感覚が鈍くなります。神経の通る場所に炎症や腫れがあれば、神経が圧迫されて痛みやしびれが起きます。
診察の時には、関節の動きを調べたり、左右を比較しながら慎重に触診していきますが、患者さんが自分ではっきりとわかる腫れやむくみがあったなら、痛み・しびれと関係があることが多いです。反対にどこを触ってもまったく異常を感じられない場合は、原因がほかにある可能性を考えたほうがいいでしょう。神経痛が代表例で、頸椎の故障のほか、帯状疱疹などのウイルス感染症でも神経痛が起きますから注意が必要です。
3 動くと症状が変わるか
大ざっぱに説明すると、動かしたら痛みが変化するものは骨、関節や筋肉の故障か、頸椎に原因のある神経痛のどちらかです。動かしても痛みが全く変わらないものは、ウイルス感染症、脳やせき髄の病気、心臓や肺などの内臓疾患などを考えます。
動かして痛み・しびれが変化することがわかったら、さらに細かくどこをどう動かすかを診ていきます。ここがポイントで、私たちがふつうに動いているときには、体のいろいろな部分を同時に動かしていることが多いのです。ほかの部分は動かさないように注意しながら、ある関節だけを動かして調べるのはなかなか難しく、プロの領分だと思います。ですから、みなさんは「じっとして痛い場合は要注意!」と覚えておくとよいでしょう。
ただし、痛み・しびれの自己分析は意外と難しいです。たとえば、患者さん「一日中痛いです!!」、わたし「ほんとうに24時間、何をしていてもずっと痛いのですか?」「はい!」、「ではこのかっこうではどうですか?」「いいえ、痛くありません!!」といったやりとりはめずらしくありません。痛みがおさまるのに時間がかかる場合、痛みの程度が強い場合は一度プロに相談したほうがいいかもしれません。
4 良くなるには
痛み・しびれはつらいものですが、症状そのもののつらさが5割、残り5割は「この先どうなるのか、いったいいつまで続くのだろう、何か悪い病気が隠れているのではないか?」という不安感からきているように思います。「何日で治りますか?」と聞かれると答えにくいものの、たいていの相談は「なんとかなる」と考えています。
治るスピードは人それぞれであり、故障の程度・症状が出るまでの時間(ときにはかなり長い場合がある)といった局所の問題のほかに、疲労・食事のバランス・睡眠の質・ストレスの影響などわかりにくいが全身に影響を与える要素や仕事内外での体の使い方のちがいでも変わってきて、十人十色といってよいでしょう。
今の症状を軽くするためのクスリ、早く良くなるためのストレッチや姿勢コントロールの練習など、必要に応じて治療を行っています。心配な病気の可能性があるときはさらに検査を追加したり、病院への紹介状を書くことがありますが、かなり稀なことであり、ほとんどはからだの回復力が働いて痛み・しびれが改善していくものです。
ねりまインクワイアラー 127 ダイエットの科学
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