目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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松ぼっくり通信電子版
高野台松本クリニックの院長、松本不二生(ふじお)先生が体にまつわるあれこれを書いた松ぼっくり通信。読めばカラダに役立つ、読むサプリです

高野台松本クリニック 177-0035 練馬区高野台1-3-7NFプラザⅡ三階 
℡03-5372-7773

(整形外科・リハビリテーション科・漢方外来

松ぼっくり通信

松ぼっくり通信 2021年 5月号

リハビリ できること・できないこと

 クリニックのホームページにも載せていますが、「リハビリをしてほしい」と相談を受けてもお受けできないことがあります。健康保険の仕組み、適応の有無、設備・人員の問題やリハビリそのものの限界など理由はさまざまですが、お役に立てないと判断したら正直に伝えています。でもどうしてなのかわかりづらいですよね。今回のお話です。

1 リハビリって?

 一言で言うと「元気になる手助けをする」ということです。うちのクリニックでは、ストレッチ・マッサージ、かんたんな体操や筋トレの指導、姿勢や歩き方のチェックなどがメインとなっていますが、元気にするきっかけになるならほんとうは何でもいいのです。病院によっては電気や牽引器などの物理療法や、PT(理学療法士)さんの運動療法が中心のところもあるでしょう。  ただ世過ぎをするからには、お上の声を聴かなければなりません。医療に関する法律・規則を守り、指導も受けています。私たちの場合、筋肉や関節を中心とした手技療法に重きを置いているので、形の上では「消炎鎮痛処置」(医療費明細書の項目)をしていることになります。できることはしているつもりですが、公定治療費が安価な分①短い時間でも効果が出るように細かく分けて治療②患者さんができることはしてもらうためにストレッチやマッサージの指導をする、といった工夫をしています。

2 リハビリの得意分野

  • かたいものをやわらかく、縮まったものは伸ばす・・・手技療法(マッサージ・ストレッチをふくむ)でできることです。細かい説明は省きますが、これでかなりのことができます。やわらかくてしなやかなからだは健康の要諦と言えるでしょう。良くなったら、自分でストレッチに取り組みましょう。

  • 弱ったものを強く・・・筋トレや体操です。ただし、教えることはできても、やるかやらないかは患者さんしだいで、指導力が問われます。とくにご高齢の方では苦労するところです。リハビリはやったらやっただけ結果が出てきます。努力が実を結ぶ分野。

  • カンを取り戻す・・・姿勢・歩行・動作指導、およびその反復練習など。中枢神経系に良い動きができるように刺激を与えます。ここはもう少し時間がかけられたらいいのに…と思っています。

  • 発想の転換・・・押してもだめならひいてみる。こうしなきゃと思っていることをほんとうにそうなの?と考えてみる。がんばっていたのを肩の力を抜いてみる。この手がダメならあの手を使ってみる。やわらかい発想でつらい時期を乗り越えると意外と元気になるものです。

  • できること、できないことを明らかにする・・・根性!努力!ですべてが解決するわけではありません。故障の具合、年齢、収入や住環境など、条件に合わせてできることを探します。あきらめるのではなく、一歩でも幸せに近づく道を探す。むずかしいけれどこれがリハビリの本道です。

3 困る相談とは

 これはちょっと⁈と思う相談を挙げてみます。

  • 疲れたので、もんでほしい・・・健康保険で禁じられています。自費の治療院に行ってください。

  • 希望の治療をしてほしい・・・診断上ベストの選択をします。医学的にむりな(有効でない)治療だと判断すれば、そう伝えます。

  • マヒを治してほしい、むかしの状態に戻してほしい・・・気持ちはわかるのですが、やはりできないことはそう伝えるしかありません。ただし、いままで見落としていた点を見つけて症状を軽くする、動きやすくすることはできるかもしれません。

  • くすりやマッサージで歩けるようになりたい・・・自ら汗をかくことは、リハビリで欠かせない部分です。筋力をつける、体力をつけるのは絶対にくすりやマッサージではできません。が、意外と多い相談です。

4 柔軟に粘り強く

 大学にいたころ、わたしは脊髄損傷の治療の研究をしていました。脳やせき髄の中枢神経系は一度傷つくと戻らないと言われていましたが、それを何とかできないかと考えていました。でも現実には治らない患者さんを多く見送るうちに(もっと何かできないのかな)と考えるようになり、リハビリの世界に目を向けるようになりました。当時高名だったドクターが「リハビリはネバー・ギブ・アップ!です」と言ったのに感動し、紆余曲折を経て今に至りました。

 小さいクリニックですが、現在の仕事は気に入っています。医者としての戦闘力はおそらく何倍も高くなっているはずです。毎日の外来で見つかる小さな課題を、これからも粘り強く探求していくつもりです。

ねりまインクワイアラー 169 コロナこれから

 コロナ対策がいろいろおこなわれていますが、若い人たちの生活・収入・学業・楽しみを強く押さえつけている印象です。外来で相談を受けていると、屋内閉じこもり、運動不足や交流の制限で調子を崩している人たちもいます。なんとか乗り越えてほしいですが、早晩方策の再検討・改善が必要と思います。

松ぼっくり通信 2021年 4月号

靴の苦労とじょうずなおつきあい

 だいぶ前のことですが、靴で苦労したことがあります。安売りの靴店で買った革靴を履くと、10分も歩かないうちに痛みが出ました。冠婚葬祭のときしかはかないのでしばらくしんぼうしたのですが、ついにがまんできなくなって新しい靴(ブランド品)に買い換えました。するとびっくり!全然痛くありません。今でもその靴を履いていますが、靴ってこんなにちがうのだと改めて実感しました。今回のお話です。

1 うおのめ、たこ、いぼ

 うおのめ・たこは靴の中であたるところにできます。ほんとうにぴったり足に合う靴を履いていればできないはずですが、歩き方のくせのためにできることもあります。まわりに人のいない場所で、路面が平たんなところを選び、10mほど目をつぶって歩き、足裏の感覚に集中します(自信のない人は止めてください)。かかと→足うら全体→親指つけ根の順番に体重をかけるのが自然な歩行パターンです。

このパターンがくずれると、力が集中してかかるところにうおのめやたこができてきます。よくあるのは指のつけ根(とくに2・3番目)足うら側のたこで、親指側にうまく体重がのせられないのが原因です。うおのめ、たこが痛いときに、わたしは靴の中敷きに穴をあける方法をおすすめしています。痛いところの下に小さな穴をあけて圧を逃がすと、すぐに痛みがなくなります。むかし東京マラソンの前にうおのめが痛くなったとき、このやり方で無事マラソンを完走しました。

イボはイボウイルスの感染で起きますが、うおのめとまぎらわしいことがあります。痛みが強いときはお医者さんに相談してみてください。

2 足うらの痛み

 足うらの痛みのほとんどは脂肪クッション、足底腱膜や筋の痛みですが、先日かかとの骨挫傷(目に見えないヒビ)の人が二人受診しました。どちらも武道をやっている人で、練習でかかとを強く打ち付けるのが原因だったようです。

 靴底のクッション性が乏しい靴、短期間の体重増加、長時間の立ち仕事、運動量の増加がきっかけになることが多いです。歩幅を大きくとり、かかとを地面に押し付けるように歩く人はかかとなど後ろ側の痛み、ヒールのある靴で指のつけ根側を地面にたたきつけるような歩き方をする人は前側の痛みが出ることが多いです。

 どちらの場合も骨盤の動きを意識して歩くと、歩行が滑らかになり痛みが軽くなっていきます。歩き方については、ユーチューブなどの動画が参考になると思いますよ。

3 うす底・厚底

 スポーツ(特にランニング)をする人にとって、スポーツシューズの選択はとても大事です。最近のはやりは厚底シューズで、猫も杓子も…と言いたくなるくらい各社から販売されています。靴マニアとしていろいろ試した印象は、

  • 厚底はたしかに楽。だが走り方(動き方)のくせをカバーしてくれる分、くせの修正にはマイナスかも。厚底は本番用にとっておき、ふだんはうす底で練習したほうがいいのかもしれません。

  • うす底は自然な足の運びを練習するには好適。けがからの回復中(私のように)の人はこっちでまずカラダ作りをするべきか(ちょっと反省中)。

  • 速い人用の厚底は、F1レーシングカーのようなもの。はきこなすにはかなりの体力強化が必要。

  • どんな靴であれ動きづくりが大切で、ゆっくり軽い動きからはじめて徐々に慣らしていく。あわてて結果を求めない。といったところです。

4 どんな靴が合う

  • いいものはいい・・・履いた瞬間気にいった(履き心地が素晴らしい)ならたぶん合っています。

  • ギミックにまどわされない・・・高性能の素材とか新技術の搭載など宣伝文句に惑わされない。履いただけで速くなる(故障知らずになる)シューズはありません。

  • 足の痛い人・・・一般のシューズで足の問題をすべて解決することはできないけれど、中敷きや別売りのインソールを工夫するとかなりのことができます。それに医療用のものよりずっと安あがりです。

  • 値段もだいじ・・・ある程度の値段は品質保証と考えてください。いろいろ試してみましたが、安いのにはそれなりの理由があります。

  • 靴はへたる・・・どんなに体に合ってお気に入りの靴でもかならずへたります。へたった靴が原因で足の痛みを訴えることは珍しくありません。痛みが出てきたら靴の買い替えを検討してください。

ねりまインクワイアラー 168 緊急事態宣言

 コロナウイルスの感染のピークを減らし、医療のひっ迫を避ける。これが緊急事態宣言の目的です。しかし今までのやり方では十分な対応ができなくなっているようです。医療に偏りすぎず、経済とバランスをとって新しい方針を打ち出せるのか。これからが注目と思います。

松ぼっくり通信 2021年 3月号

疲労と元気のあいま

 最近疲れやすくなったと相談を受けることがあります。疲れやすくなったと感じるのは、年のせい、運動不足のせい、あるいはストレスのせい?なかなかわかりにくいですね。今回のお話です。

1 精神疲労と肉体疲労

 慶弔に関わらず何かの式典や行事に出るのは疲れますが、まったく行ったことがない場所や知らない人ばかりだったりするとさらに疲労感が強くなります。このように同じ場所で同じ空気を吸っていても緊張感が強ければ疲労しやすく、リラックスできれば疲れにくくなります。これは脳の疲れ=精神疲労で、脳の調子が良いかどうかで疲労にどれだけ耐えられるかが決まってきます。

2 年をとると疲れやすいのか

 肉体疲労はわかりやすいです。ふだん以上にたくさん歩いたり、重いものをたくさん運んだ時の足のだるさやあちこちの筋肉痛を誰もが経験しています。筋肉内のエネルギーが枯渇したり、筋肉や腱のダメージが重なると、神経を伝って脳に連絡があり、(休んだほうがいいよ!)と言ってくるのです。しかし最後に判断するのはやっぱり脳なので、脳の調子がいまいちだと肉体疲労も強く感じることになるわけです。

 となると、脳を元気に保つことが疲れを癒す早道です。長年患者さんたちの相談をうけていても、気持ちに張りがある人はやはり疲れにくいと思います。

 脳の機能自体は、からだのほかの部分と同じく年齢の影響を受けます。神経細胞の数が減り、一個一個の神経細胞も年をとります。だから若い人と全く同じというわけにはいかないでしょう。でも脳のすみずみまでしっかり働かせて手入れを行っていれば、脳の老化を防ぎ、活性化させることができます。筋肉をいっぱい使うと筋肉の血流量が増えるのと同じように、脳をいっぱい使えば脳の血流量が増え、脳細胞が元気になっていきます。

 ただし、一か所だけを集中して使いすぎると無理が来るのも筋肉と似ています。だから脳の幅広い機能をまんべんなく使うこと、そして疲労をためないことが大切です。

3 線維筋痛症と慢性疲労症候群

 この二つは今の医学ではまだよくわかっていない病気です。繊維筋痛症は体中の節々が痛くなるとともに、疲労感やさまざまなからだの不調が起きます。慢性疲労症候群では通常よりはるかに強い疲労感が続くほかにも体中の痛みなど多彩な不調がおきて、日常の生活をすることが困難になります。

 どちらも原因がよくわからず、手探りの治療が行われていますが、いろいろな調査が行われて運動をすることはある程度役に立つことがわかりました。きつすぎず、本人にできる範囲で、少しづつ行っていくことがだいじです。原因不明ながらストレスが少なからず関係している病気なので、やはり脳の疲労=精神疲労が発病の一因なのかもしれません。

 近年こういった一見謎のような病気が増えてきたことと、ストレス過多な現代生活には何らかの関係があるようです。ストレスは有り過ぎても無さ過ぎてもよくないので、そのバランスをどうやって保つか。ここに疲労とうまく付き合う秘訣があります。

4 疲労と回復のバランスを

 脳をまんべんなく使い、脳のすみずみまで新鮮な血液が行きわたり、老廃物が除かれ、栄養分が届く状態にする。使えば疲れは出てくるが、ため込まないようにする。一か所だけ集中して使うと壊れやすいので、同じことばかりするのは避ける。ちょっと疲れがたまったら、しっかりと休養を取る。こうすれば脳の健康が保たれ、やる気が失われず、毎日元気よく暮らすことができます。そのためにだいじなことを整理してみます。

  • 使う(ストレスのかかる)ところは幅広く・・・脳にもからだにも言えることです。一か所に集中して負担がかかることを避けましょう。いつも同じことをぐるぐる考え続けたり、すわりっぱなしで長時間仕事をするなどをさけ、間に休憩を入れ、気晴らしをしたり散歩をしましょう。

  • 使っていないのはどこか考える・・・体を動かしたり、人とおしゃべりするなど、脳の広い範囲を使う機会を作りましょう。前はしていたが最近はやらなくなったこと、前からやってみたいと思っていたことなど、新しい経験をとり入れるのもすばらしいです。

  • 睡眠時間や食事をたいせつに・・・起き抜けにすっきりとしていれば、多少眠りが浅くても目が途中で醒めてもオッケーです。食事は幅広くいろいろなものを食べましょう。

  • ちょっとだけ無理を・・・人は楽に馴れるものです。ときどきいつもよりがんばってみてください。適度な疲労=適度なストレスは人生のスパイス、良いトレーニングになります。

ねりまインクワイアラー 167 コロナワクチン

 効くのか効かないのか。副作用は?といろいろ心配になりますが、最近のワクチンは作り方から一新されています。体の事情(病気・アレルギーなど)が許す方は、ワクチン接種をお勧めします。

松ぼっくり通信 2021年 1・2月号

良い姿勢のみつけかた

 姿勢がだいじだとよく言われますが、どんな姿勢がいいかにはだいぶ誤解があるようです。今回のお話です。

1 「良い」ってどういうこと?

 だれにもあてはまる良い姿勢がある。こう思い込んでいませんか。目鼻立ちがみなちがうのと同じように、体つきも千差万別です。ひょろっとした人もいれば、全体にまるい感じの人もいます。せぼねや手足の骨も形は千差万別なので、人とちがうからおかしい!ということはありません。

 良い姿勢とは「その人にとってもっとも無理がなく、骨や筋肉に負担がかからず、疲れにくい姿勢」のことです。だからどんなに人と違っていても、自分にとって快適で楽に動けるのならそれがあなたのベストの姿勢だといえます。

 友人や家族から「背中が丸くなった」とか「年寄くさい」と言われても、あなたが気持ちよく動けているのならそれでいいのです。見た目でいろいろ言われても、それは余計なお世話だと考えましょう。

 ところが知らず知らずのうちに余計な力が入って、姿勢が崩れることがあります。この姿勢では、世間に対して身構え、肩を怒らせ、胸を反らしあごを上げます。私は強い、負けないぞ!ゴリラの威嚇ポーズを思い出すとイメージがわくはずです。 2 「イケイケどんどん!」姿勢

実際には写真のようにもっと目立たないポーズですが、ストレスに負けず立ち向かおうとするとき、無意識にこういった姿勢となりがちです。土俵上での力士の姿勢が典型的です。戦う前の準備状態をあらわす姿勢ですが、全体に筋肉に力が入っていますから、長く続けると疲れやすいし、体のあちこちがこったり痛くなったりします。

厳しい世の中、ときにはこういう姿勢も必要です。企業戦士の姿勢。でもずっとこれだとくたびれてしまいますよ。

3 「かしこまってござる」姿勢

  できるだけ目立たないようにしたい。だから目線を落として姿勢が合わないよう、うつむき加減になる。自己主張をせず、背景に溶け込む感じ。「イケイケどんどん」とは逆の意味で、世の中を生き抜く処世術をあらわす姿勢です。

 家父長制が強かった昔、女性はこういった姿勢の方が多かった気がします。いや、今でもそうかもしれません。控え目、従順、やさしい感じ。男性で言うなら、ワンマン社長にかしずく秘書のイメージです。もっと快適な姿勢に比べると、ぜんたいに小さく縮こまろうとするので、これはこれで疲れやすいのです。

 伝統的な日本社会で美徳とされてきた慣習にぴたりと一致する姿勢。でもこれが習慣となれば、腰痛や肩こりの原因となりますよ。

4 良い姿勢とは流れる水のごとし

 良い姿勢とは、決して固まったまま動かない姿勢のことではありません。むしろ変幻自在な身のこなしと考えたほうがいいかもしれません。

姿勢は年齢で変化する・・・背骨はたくさんの骨がつながってできていますが、骨の間には軟骨(椎間板=写真の黒い部分)がはさまっています。年齢を重ねると、軟骨はどんどん厚みを減らし、背骨全体の湾曲が増して背中が丸くなっていきます。だから年を取って背中が丸くなるのは自然なことです。若い時より背中が丸くなったら、楽な姿勢=良い姿勢も丸くなっていきます。ときどき背筋を伸ばすのは構いませんが、いつでもまっすぐにしようとすると、かえって背中がつかれてしまいます。

かんぺきな姿勢でも疲れる・・・一番快適な姿勢であっても、長く立ち続けたり座り続ければ、やっぱり疲れてきます。姿勢を保つために働いている筋肉にすればずっと力を入れ続けていますから、疲れないわけがありません。だから疲れないためには姿勢をときどき変えたり、動き回ったり、寝転がったりすることが必要です。

姿勢のお手本は就学前の子供たち。じっとするのが苦手で、いつも動き回っています。学校に行ってじっとすることを教わる前ですから、体が感じるままに行動しています。どの子も自由に動き回っているとき、その姿勢・身のこなしは見事なものです。子供たちを見習って、大人の私たちも、もっと自由に、もっと身軽に動き回ることです。

ねりまインクワイアラー 166 男らしさ女らしさ

 マスクをしているのでリップはつけないという女性が増えているそうです。在宅勤務が増えて、会社の在り方や暮らし方にもいろいろなアイデアが生まれています。男らしさ・女らしさの見直しもその一つ。男だって男っぽくふるまう必要はありません。コロナがきっかけになり、もっと自由な生き方ができるようになるといいですね。

松ぼっくり通信 2020年 12月号

めずらしい相談

 ふだんの仕事では腰痛、五十肩や骨折・ねん挫などを扱うことが多いのですが、ときにはあまり出会わないめずらしい相談を扱うことがあります。今回は今までの経験から印象に残ったケースをお話しします。

1 お腹が痛くて立つことができない

 半年間大学病院に入院していた方のお話です。右のわき腹が痛くて入院し、たくさんの検査を受けましたが原因がつかめません。最後に整形外科の外来に受診した時に、たまたま私が診ることになりました。

 最初に気がついたのは、寝ている間は患者さんがまったく痛がらないことでした。ところが立たせると痛みが出て20秒と立っていられません。このように動作や姿勢で痛みがはっきり変わるときは原因が骨や筋肉にあることが多いのです。調べていくと右胸の肋骨に触ると痛いところがあったので、少し押してみました。ギャッと患者さんが叫んだのでヒヤッとしましたが、その直後から患者さんの痛みは消えて、1週間後に患者さんは無事退院されました。 このように基本的には小さな故障なのに検査で原因をつかみにくく、深刻な病気と誤認される場合をときに経験します。こういう故障を「体性機能障害」と呼びますが、その原因を考え続けたことが今の診療スタイルにいたるきっかけとなりました。

2 72時間止まらないしゃっくり

 仕事がらしゃっくりを診ることはなかなかないのですが、このときは内科の先生が困ったらしく私の外来に廻ってきました。三日間夜昼かまわずしゃっくりが続き、患者さんは食事ものどを通らず夜もまったく眠れず憔悴しきっていました。(どうすればいい?)と迷いましたが、以前くびの付け根にある神経を圧迫するとしゃっくりが治ることがあると聞いたことを思い出しました。患者さんに説明して、くびの脇にある神経の位置を両手で圧迫して数分経つと、しだいにしゃっくりが収まっていきました。

 しゃっくりの原因は横隔膜の筋けいれんです。だから横隔膜につながる神経を圧迫することでけいれんが落ち着いたのです。

3 くびの激痛

 くびを全く動かすことができない、ちょっとでも動かそうとするとあたまから背中にかけて激痛が走る。からだが弱っている人だとまったく身動きできず、救急車で病院に運び込まれる。こういうケースは今までも経験していましたが、あるときあたまの付け根にある関節を調べれば原因を見つけられることに気がつきました。環軸関節という特殊な関節に炎症が起きるとこういう症状になるのです。

 ふつうのレントゲン検査でうつりにくい場所なので触診が命なのですが、見つけてしまえば治療はわりあいかんたんです。ふつうの消炎鎮痛剤がよく効きます。

4 おなかがでんぐりがえる

 ときには患者さんの話を聞いてもよくわからない、すぐには話が呑み込めないときがあります。このときも「でんぐりがえる」ってどういうこと?と最初思いました。

 ところが患者さんのお腹を見るとびっくり!おなかがぐりぐりと動いていてでんぐり返るという意味がわかりました。これはディストニアという症状で、脳の病気や薬の副作用で出ることがあります。患者さんの内服薬を調べて、疑わしいと考えた薬を休薬していただくことにしました。2週間後、おなかはまったくでんぐりがえらなくなりました。

5 踊り続ける女性

 医者になってまだ日が浅いころのお話です。おかしな様子の人がいるので救急外来に来てほしいと連絡を受けました。行ってみるとベッドに女性が腰かけているのですが、右手だけを動かして激しく踊っているように見えます。

 一瞬(これは変わった人なのかな!)との考えが頭をよぎったものの、患者さんはきわめて真剣で、受け答えもしっかりしていました。話を伺うと、病院のトイレを使用中に突然症状がはじまったそうです。聞いた瞬間、脳の故障!を疑いました。

 そのまま神経内科に紹介、やはり脳出血ということで入院となりました。リズムの速いダンスのような動きをバリスムと呼びます。脳の基底核(中心部)に問題があると起きる症状の一つです。トイレでいきんだことが発症のきっかけになったのでしょう。

 こうやって昔の経験を書いてみると、やはり問診と診察が大切だと感じます。忙しいとついおろそかになってしまいがちですが、これからも話を聞く・体を診るをていねいにやっていかねば!と改めて思いました。

ねりまインクワイアラー 165 ビタミンDふたたび

 北海道をはじめとしてコロナの第3波が懸念されています。冬場はウイルスの生存時間が長くなることと、日光に当たる機会が少なくなりビタミンDの体内合成が減ることが問題点として挙げられています。免疫機能を高めるビタミンDの合成のため、できるだけ肌に日光を浴びるようにしましょう!