高野台松本クリニックの院長、松本不二生(ふじお)先生が体にまつわるあれこれを書いた松ぼっくり通信。読めばカラダに役立つ、読むサプリです。
超高齢化社会に向かって
令和18年(今から12年後)に3人に1人、令和47年(41年後)には2.6人に1人。何かというと、高齢者(65歳以上)の予想比率です。私が医者になりたての頃、90歳以上の患者さんを診るとき「イヤー、すごいですね!」と話していましたが、今は(あー、また90台の人ですか)と思ったりします。でも自分もほどなくお仲間入りなので、他人ごとではありません。これからを考えてみました。
1 世の中がガラリと変わる
これほどの高齢化社会は人類史上初めてで、日本はさらにそのトップを走っています。だれも経験していないのですから、本当にどうなるのかはだれにもわかりません。でも数年単位で劇的に変わるテクノロジーが日常生活の細々としたところに影響を及ぼし、極端な人手不足が仕事を根本から変えるでしょう。AI(人工知能)やロボット化が進んで人間が今までやっていた仕事のかなりを肩代わりするでしょう。いまの高齢者さんの孫世代が暮らす未来世界では、社会のしくみや考え方ががらりと変わって世代間のギャップはとんでもなく大きいはずです。「わたしの若い時には・・・」という経験談は役立たずの世の中になりますが、これからの高齢者は今までの世代が絶対味わえなかったミラクルな毎日を過ごせるかもしれません。何歳になっても新鮮な経験は必要、一日一日を楽しんで暮らしていきたいですね。
2 最高の時代
80歳代で年代別ボディビルダー選手権に優勝した方の記事を読みましたが、ご本人は130歳まで生きて記録を作りたいとお話しされていました。若いころとはちがって日本食をしっかり食べる、トレーニングは量より質、けっして無理をせず、ウェイト(重り)は軽めにゆっくりやるそうです。その分野でトップになった人がトライアンドエラーをくりかえしオリジナルプランを作るやり方は、だれにとっても参考になると思いました。
皆さんは君原健司さんをご存じでしょうか?1964年の東京オリンピックにマラソンで出場されたのですが、以前あるマラソン大会で走る姿をお見かけしました。現在は82歳、今も走られているようです。一流選手でも長く走り続けている方はまれなので頭が下がります。
先日トレラン(山の中のマラソン)に参加した時、60歳以上は20人だけ、さすがに減ってきたなーと思いました。長く何かを続けるコツは、「とにかく続けること」だと思います。レベルが落ちても、ヘタになっても続けていればいいことがあります。何日も筋肉痛が残りますが、飯がうまく、自然の中で動くと生き返った感じがします。年が進めばどこかでやめることになるでしょうが、その日までは楽しんで続けようと思いました。
長生きだけをとるならば、今は最高の時代です。だから「どう生きるのか」がだいじになりますね。
3 人間らしさの原点
SF小説「地球最後の男」(映画化されました)を読んだとき、自分がもし地球で最後の人間になったらどうだろう?と考えました。食料はあちこちに残っているから心配ありません。車やガソリンもたっぷりあるのでどんなところにも出かけられます。ビデオや映画は見放題です。でもどこに行っても誰もいません。けんかをする相手もいないけれど、話したり悩みを打ち明ける相手もいません。遠い将来、自分が死ぬまでひとりぼっちが続くのです。
おそらくこの状態に耐えられる人はほとんどいないのではないでしょうか。つまるところ人間らしさの根っこは「他人とコミュニケーションがとれる」ことなのでしょう。ことばでも、身ぶりでも、顔の表情でもいいから相手に何かを伝えることができる。そして相手から反応が返ってくる。これが人間らしさの基本ひとつめです。
そしてふたつめは「移動できる」ことです。移動することで食べる・排泄など基本的な生体機能を確保できるし、あちこち出かけてコミュニケーションを行えるからです。
4 未来に備えてできることをしよう
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最後まで歩けるからだを作ろう・・・長いこと患者さんを診ていて、まめに体を動かしている人はやっぱりちがいます。運動とかスポーツとか名前はつかなくても、とにかくマメに体を動かすことです。むだ足、遠回り、徘徊(家に帰ってね!)大歓迎。能率無視で歩数をかせごう。
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身の回りでいいことを・・・何でもいいので、誰かの役に立つことをしてみよう。ゴミ拾い、ちょっと声かけ、ちいさなお手伝い。そこからコミュニケーションが生まれます。
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働けたら働こう・・・3人に一人が老人の時代だから、できる人は働きましょう。人手不足のお助け、お小遣い稼ぎ、健康維持(体を動かす、日に当たる)、誰かの役に立てると実感できます。
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未来ををおっくうがらない・・・スマホはもちろんのこと、これからAI(人工知能)、ロボット、自動運転のクルマなど身の回りにやってくる最新テクノロジーがめじろ押しです。年だからと言わずどんどんチャレンジしてみよう。
ねりまインクワイアラー 200 警察もの
ミステリー小説が好きですが、なぜか警察物を読んだことがありませんでした。ところがはまった!今野敏さんの「隠蔽捜査」シリーズ、ユニークなエリート官僚が主役です。最新刊が待ち遠しいです!
しびれた、さあどうする?
しびれの相談はめずらしくないのですが、奥が深くてなかなか説明がむずかしいです。今回のお話です。
1 だれにでもしびれは起きる
私の実感では、しびれの相談が十あるとすると九割がたはほっとくか様子を見るだけで済むもの、残り一割は調べたほうがいいものです。先日マラソン大会に出たとき、脱水が原因で指が腫れてしびれました。ゴールしてからたっぷり水分補給をしたらしびれが治りました。そのほか競歩の練習で腕をいっぱい振ってしびれたり、長時間のランニングで坐骨神経痛(しびれ)が出たりいろいろなしびれを経験しました。
救急外来に勤務しているときよく診たのは過換気症候群の患者さんで、からだじゅうがしびれ、息が苦しくて救急車で担ぎ込まれます。本人にすれば苦しくて死にそうなのですが、患者さんの口に紙袋をあててゆっくり呼吸させる(今は古いやり方)とすぐに治りました。私自身なったことがあって、あの切迫感・恐怖感はよくわかります。
デスクワークなどあまり体を動かさない人たちの中にも手足のしびれを感じる人がいます。厳密な意味でのしびれ(神経障害)ではなく、脳やせき髄の検査をしてもはっきりした異常は見つかりません。ここからは私の意見なのですが、おそらく慢性型の過換気症候群(習慣的に呼吸が浅い)だと考えています。細かい理屈は省きますが、深い呼吸の仕方を覚えてもらうとしびれがなくなってくるようです。
正座を続けて足がしびれるのはかなりの人が経験していると思います。腕を上げた格好や横向きで長く寝たりして腕がしびれた人もいるはずです。どちらも神経が圧迫されるために起きると言われています。細かく診ていくと、手足のあちこちに神経のウイークポイント(骨のすきまや筋肉の中で神経が圧迫されやすい部位)があり、相談を受けるしびれの多くはこれが原因です。
2 これは要注意!しびれ
つぎにほっといたら×のしびれを考えてみましょう。
● 脳から来るしびれ・・・脳梗塞や脳出血でしびれが出ることがありますが、たいていは運動まひなどほかの症状が合併します。
● せき髄から来るしびれ・・・神経の経路に沿ってしびれが出ます。痛みが伴うことが多いですが、しびれだけのこともあります。多くは椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が原因ですが、三浦雄一郎さんのせき髄血腫のようにめずらしい病気もあります。
● 神経そのものの炎症・・・脳・脊髄・末梢神経それぞれに炎症(難病指定のことが多い)を起こす病気があります。しびれる場所がだんだんと変化していきます。肩から腕に激痛がおきる神経痛性筋萎縮症もたまに経験します。
● 糖尿病・リウマチ疾患など・・・糖尿病で有名なのが手袋・靴下型のしびれです。太もも前方の痛み・しびれがでることもあります。そのほか小さな枝神経の故障があるとあちこちにしびれが生じます。
● 栄養不足・・・意外に多いのがビタミンB1の欠乏症です。足首から下の感覚が鈍くなります。白米中心の食生活で少食だとなりやすいです。ビタミンB12の欠乏症もちらほら見かけます。胃の手術後、胃酸を抑える薬の常用、動物性食品の摂取不足(ベジタリアン、少食の人)がある人でしびれ・歩きづらさがあったら可能性があります。
そのほか、 内臓の病気、がん、トリガーポイントのような筋肉の故障でもしびれがでることがあります。
3 しびれとのつきあい方
● 生活に支障のないしびれだったら、とりあえずのんびりかまえましょう。食事内容や睡眠に気を配り、運動やストレス発散を行いながら様子を観ましょう。多くのしびれは自然に消えていきます。
● 痛み、筋力低下、歩きづらさ、手先の細かい作業がしずらいなど、しびれ以外に症状があるときは一度お医者さんに相談してみてください。
● 「しびれ」にはいろいろな感覚があって、人によって全然違うことを言っている気がします。自分のしびれがどんな感じなのか(ズキズキ、ちくちく、ぴりぴり、何かがくっついている、だるい、動かしにくい、力が入らない、つかれる、ふらふらする他)、どんなタイミングであるのか(24時間連続、ときどき、たまに、一回だけ、何かをしているときだけなど)、どこらへんに感じるのかを説明できるようにしましょう。しびれは目に見えないので、あなたのことばがたよりです。ここをきちんとやらないと、正しい診たて・治療に結びつかない可能性があります。
ねりまインクワイアラー 199 ブギウギ
朝ドラ「ブギウギ」おもしろいですね。主人公役の趣里さんは子供のころからバレリーナを目指していましたが、足のけが(踵骨剥離骨折)でキャリアをあきらめざるを得ませんでした。でもあんなに踊れてるのに?!と思いますが、それだけ厳しい世界なのでしょう。私の趣里さん押しひとつめは、自分も同じけがをしたのでその苦労がよくわかること。もうひとつはお母さんの伊藤蘭さん(元キャンディーズ)が高校の同窓だからです。
今どきの手術
じっさいに手術をやっていたのはだいぶ前で、最近の事情を聞くと驚くことがあります。一方、基本はやっぱり同じだな~とも思っています。皆さんが(手術が必要なのかな?)と思ったときのアドバイスです。
1 生きるための手術、元気になるための手術、実験的な手術
大きなけがや病気で命を助けるために手術をする。たとえばやぶれた大血管を治したり、重要な臓器を守るために手術をするのは外科医冥利に尽きます。やるときはやるしかない!ので迷いもないし、あとはベストを尽くすだけです。
整形外科医の私の場合、そういう場合もなくはなかったのですが、機能を復活・改善させるためにメスを握ることが多かったです。あるとき電車の中で声をかけられて、「先生のおかげで歩けるようになった」と言われたときはうれしかったです。命を救うわけではないけれど、それが良くなったら患者さんの人生が変わる。これも大事な手術の目的だと思います。
もうひとつ、今ある治療法では良くすることができないとき、一般的な方法ではないけれど治る可能性があると考えて手術が行われるときがあります。そこに至る前にさまざまな研究や実験(動物で同じ治療をするなど)をして検討を行い、病院の倫理審査委員会をパスし、患者さんやご家族の同意を得て行われるもので、大学病院や一流病院で行われます。患者さん+医学の進歩のために行われますが、当然リスクも存在します。
ここでは、私の経験から機能を良くするために行う手術について考えてみたいと思います。
2 手術しか方法がない?
機能を復活させるために手術を考えた場合、まず考えなければいけないのは「ほんとうに手術しか方法がないのか?」です。安全で、肉体的・精神的に負担が少なく、効果的な治療法が望ましいのでできれば手術をしたくないと考えるのが人情ですが、じつはお医者さんたちだって同じです。できれば切らないですましたい。冷静を装っていても、やはり人の体にメスを入れるのは心の負担になります。いや、そういう気持ちを持つ医師こそ外科医になるべきであって、何人切った!と得意になるような人は外科医失格です。そんな医師はいないと信じたいのですが、長くこの業界に暮らしていて、そんな人は絶対にいない!と自信をもっては言えません。
だから患者さんたちも自分なりに調べることが大切です。手術以外に方法がないのか信頼できる情報を集めたり、複数のお医者さんに聞いてみたり、最後に決めるのは自分だと考えてください。自分の意見を強く押し付けたり、あまりに突飛な意見だったり、すすめる方法に利害関係を持っていないかなど、慎重な判断を行いましょう。
私の場合、かかとの手術を受けたとき、まったく迷いはありませんでした。専門分野なので、この手術は必要と知っていたし、信頼できるお医者さんに任せたので安心して手術を受けることができました。
3 大谷選手の場合
大リーグで活躍する大谷選手がひじを傷め、2回目の手術を受けました。トミージョン手術(じん帯再建術)+人工じん帯を使う特殊な手術だそうです。24歳で1回目の手術ですから5年しか持たなかったわけですが、大リーグにチャレンジして二刀流の大活躍、ホームラン王になるまでよく役に立った!とも言えます。プロとしてかけがえのない時期、時速150キロで球を投げ続けることができたのですからもとは取ったのかもしれませんね。あたらしい手術がどれくらい持つのかわかりませんが、年間ウン十憶円と言われる収入がこれから数年続くだけでも大きな違いになるでしょう。
でも一般の人だったら数年しか持たないかもしれない手術を受けるのがいいことなのかよく考えないといけません。人工股関節の場合今は20年以上(かそれ以上)持つと考えられていますが、ひざはもうちょっと短いようです。そのほかの関節ではさらに期間が短くなります。手術によるからだの負担を考えると(壊れたら直せばいい!)という考え方は危険です。
リハビリも大変です。大谷選手にはきっと専属のセラピスト・トレーナーがついて、文字通り血と汗と涙のトレーニングが続くことと思います。それでも復帰しようとする意志と実行力はまさにプロの鏡ですが、一般の方がそこまでやるか・必要があるのかは?です。
4 手術を考えたとき
健康保険が整った日本では割合気楽に手術が受けられますが、整形外科のように機能を良くする手術法の場合、絶対的適応(誰が見ても手術しか手立てがない状態)があることはまれです。また手術でなにもかもがすぐに良くなるわけでなく、完全には治らなかったり、長い安静期間が必要だったりもあり得ます。急場の治療ではありませんから、たっぷり考えて判断されることをお勧めします。
ねりまインクワイアラー 198 バッテリー問題
EV(電気自動車)が古くなったとき、バッテリーをどうするかが問題です。リユース(再利用・転用)かリサイクル(分解して資源利用)か。これを解決しないとEVの将来は危うくなりかねません。
見えないものをみています!
嗅覚・視覚・聴覚・味覚・触覚の五感のうち、医学の世界ではどうしても視覚にたよりがちです。今回は、見えないものを見る技法についてのお話しです。朝ドラ「らんまん」で主人公の友だち、波多野くんが叫んだ言葉を表題にしてみました。
1 物質をみわける
大昔、ギリシャのアリストテレスは世界が「土・水・空気・火」の4つですべてできていると考えていました。世界が何でできているか?目で見てわかるわけではないためこれは長いことなぞのままでした。ところがいろいろな物質を砕いたり、焼いたり、煮たり、溶かしたりをくりかえすとだんだんと不純物が取り除かれ、最後に単一の物質(たとえば金)が残ることが知られてきました。こうやって根本的な物質(元素)が発見され、じみ~に化学実験をくりかえしてちょっとずつ物質の組成(たとえば水は酸素と水素でできている)がわかってきましたが、タンパク質やホルモンのような複雑な物質だとこのやり方ではむり!もう一工夫が必要でした。たとえば左図のビタミンDの化学構造式、目に見えないのにどうやってこんなことを調べられたのでしょうか?
そこでレントゲン(X線)が登場します。応用してX線解析装置や電子顕微鏡といった機械が作られ、目で見たかのように物質の複雑な構造がわかるようになったのです。そして様々な発明につながりました。いま私たちが乗っているクルマ、持っているスマホ、住んでいる家、飲んでいるクスリなど、すべてはこの成果をもとに始まっているのですよ。
2 昔と今
明治のはじめ、東京の医学校を卒業した新米の医師たちは、医療器具や薬などを買いそろえてから地元へ戻り、各地で医院を開きました。診察の時、まず顔色、目の結膜や舌を見て、脈をとり、おなかや手足を触り、体温を測ったり、聴診器で胸・腹部の音を聞きました。まだレントゲンのない時代ですから、後は尿や便の色や調べるくらい、今のお医者さんだったら診断の手立てが少なすぎてたいへん心細い思いをしたはずです。その分、手を使った診察をいっしょうけんめいにやったと思います。
今と比べたらたいした薬もなく、栄養や休養に気を配り、患者のそばで見守りはげます。なにもできないことも多かったはずですが、患者さんのそばにいる時間は長くとれたはずです。
現在、レントゲンは言うに及ばず、MRI,CT、超音波ほかたくさんの診断機器があり威力を発揮していますが、そのぶん昔ながらの診察がおろそかになっていないのか。目で見るのみならず、聞いて触ってみる。古臭いやり方のように見えて、それでしかわからないことがあると考えています。
3 触診でわかること
指先には微小なセンサーがたくさん集まっていて、これをフルに利用するといろいろなことがわかります。経験上温度差は0.1度単位で感じ取れますし、目で見ただけではわからないむくみやこわばりも触れるとわかります。こつはできるだけ軽く触ることで、これが初心者には難しいのです。
また動きの「質」を感じると、痛みの原因が骨、じん帯、筋のどれなのか、あるいは全然関係のない内臓や神経からの痛みなのかおおよその判断をつけることができます。これは整形外科の診療にはものすごく役に立ち、レントゲンを撮る前段階でほぼ痛みの原因が見当つくこともまれではありません。
レントゲンやCT/MRIなど現代医学の最新機器を使ってもわかりにくいことが実はたんとあります。触診の初心者のときにはわからなかったことが、慣れてくるにしたがってだんだんとわかるようになる。イメージでいうと脳の中の診断プログラムがどんどんバージョンアップされていく感じです。もともと人間の体には精細なセンサーが集まっているのですから利用しない手はありません。手を使うことでまさに「見えないものを見ている」感じになるのです。
4 触診が活かされる場面とは
診断機器のようにデータが分析・加工されると利用しやすくなりますが、そのぶん雑多な情報が無視され、ほんとうは重要な情報が見逃されることがあります。生の情報を扱う触診が得意な分野はこんな感じです。
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よくある症状の中からあぶなっかしいもの(ひょっとしたら深刻な病気かも?)をさがしだす。
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想定外に対処する。生情報の強みがここに生かされます。頭で考えずに肌で感じるのですから。
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もやーとしたはっきりしない相談の診察。御用聞きが街の隅っこまで出歩く感じで、小さなヒントをみつけられるかもしれません。
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山の上、電車・飛行機内などできることが限られる場面で、急場の処置をするとき効果を発揮します。
ねりまインクワイアラー 197 夏の運動不足
連日の暑さで家から出なかった方も多いようですが、そろそろお外に出ましょう。週に2,3回、少し長めのお散歩から始めてください。慣れたらチョット速いかな?くらいのスピードまで上げてみましょう。
なにが正しいか考えよう
当時の常識がまちがっていて、新しい考え方のほうが真実だとわかったとき、すぐに受け入れる人はまれです。「太陽が地球を回っているのではなく、地球が太陽を回っているのだ」という考えがひろく受け入れられるようになるのには数世紀の期間が必要でした。しかしスマホやネットがあたりまえになり、ものごとがガラッと変わるスピードが速くなった今、新知識についていくのがたいへんです。新しいことと向き合うヒントをお話しします。
1 コロナはただのかぜ?ワクチンは有害?
21世紀の時代に、まさかこれほど新型コロナという伝染病が広がるとは!長らく医学では伝染病をどう克服するかが大きなテーマでした。一般的な見方では伝染病は世界の一部の地域に残るばかり、ふだんの生活には関係がないように多くの人が感じていたはずです。でもこわがらずにやることをやれば、ある程度の感染予防や症状の悪化を防げることもわかってきました。当初ワクチンがないために恐れられた新型コロナウイルスですが、きわめて短期間でワクチンが作られ、多くの人に接種することである程度流行を抑えることができました。これまた短期間で抗ウイルス薬が作られたのもビックリでした。伝染病治療・予防の歴史から見れば、これはすごいことです。
反面、新ワクチンで健康を損ねたり亡くなった方がいるのも事実です。世の中のすべてと同様、絶対的に良いものや悪いものはありません。良いほうだけを取り上げるのも、悪いほうだけ見るのもまちがったやり方です。コロナの存在を否定するのも、過度にこわがって人との接触を避けようとするのも?と思います。
テレビやネットを観るとき、この情報は事実なのか、あるいは誰かの見解なのかをしっかり考えることがたいせつです。そして一次情報(生のままのデータ)まで自分なりに調べらればさらにいいと思います。
2 長生きをするほど幸せなのか?
医学のもう一つ大きなテーマはいかに人間の寿命を延ばすかでしたが、これはほとんど達成されているように思います。ただし、「健康に」という付箋付きで考えると、長寿が必ずしも幸せか疑問に考える声も出てきました。さすがに江戸時代のように60を過ぎれば定年(命が定まる≒そろそろ寿命)と言われるよりは今のほうがずっといいと私も思います。ですが、毎日を充実して生きるには明晰な心とじょうぶな足腰が必要で、単なる長命だけでいいのかとも考えます。
認知症になったり、足腰が立たなくなったりするのが、生活習慣から来るのか素質からくるのかはまだはっきりとしませんが、少なくとも(医師の手を借りずに)自分で工夫し対処できる期間をなんとか伸ばしたいものです。そうすることで生きている一瞬一瞬が宝物となるように暮らしてみたい。みなさんも長生きの意味をとらえなおし、長さ以外のなにかで命を測ってみませんか。
3 痛みには原因がある?
医学生のころ、痛みの発生回路について教わり(ホントに電気回路みたい!)と思いました。それからうん十年がたち・・・最近の痛みの考え方は「痛みには原因があることもないこともある。脳が痛いと感じたなら、それが痛みなのだ。」ということになっています。
え?と思いませんか。でも、長いこと痛みを中心として診療を行ってきた経験からはなかなかうなずける説明なのです。心の痛みってほんとうなのですね。からだに何の異常もないのに(医者から見て不可解な)痛みを訴える人をたくさん診てきました。診たての不十分さもあるかもしれませんが、精密な電気回路のようなからだの仕組みからは理解しにくい痛みはやはりあります。そしてよくわからないきっかけで良くなったり、悪くなったりするのです。
良くしてなんぼの臨床医ですが、理屈に合わない経験をすると心が乱れます。そして医学はみなさんが思っているほど整然とした世界ではなく、まだまだ謎にあふれています。かたくなりがちな頭をやわらかくして、なんとかついていきたいです。
4 さて、あたらしい考えについていくには
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積み重ねられた事実があれば受け入れる・・・一歩一歩まちがいがないか確認しながら事実を積み重ねていく。その結果が世間の常識と異なるように見えてもきちんと検証できていればまずは受け入れてみる。
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声が大きいから、有名な人が言うから、正しいと思わない。
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昔から言われていても正しいとは限らない。逆に新しいから本当とは限らない。
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「専門家」が本当に専門家なのかは慎重に判断しよう。人が聞きたいこと、自分が言いたいことを言うだけの人かもしれません。
- わかりやすいことが正しいと限らない。反対にむずかしいから正しいとも限らない。かんたんなことをむずかしく言うほうがありがたがられますが、むずかしいことをかんたんに説明するほうがほんとうはたいへんです。
ねりまインクワイアラー 196 山酔い(軽症の高山病)
先日家族で富士山に登りました。わたしは平気でしたが山酔い(頭痛・食欲不振)になる者もいて、やっぱり富士山はたいへんだ!と思いました。なりやすさには脱水・年齢のほか素質も関係するそうです。