目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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松ぼっくり通信電子版
高野台松本クリニックの院長、松本不二生(ふじお)先生が体にまつわるあれこれを書いた松ぼっくり通信。読めばカラダに役立つ、読むサプリです

高野台松本クリニック 177-0035 練馬区高野台1-3-7NFプラザⅡ三階 
℡03-5372-7773

(整形外科・リハビリテーション科・漢方外来

松ぼっくり通信

松ぼっくり通信 2017年 5月号

やわらかい医学

お医者さんになるための勉強では大変たくさんのことを覚えさせられるので、これだけ覚えたら病気のことなら何でもわかる気がしました。ところが実際になってみると、わからないことだらけで毎日の仕事で考えこむことがいっぱいあります。年をとって「やわらかあたま」でいるのは難しいかもしれませんが、柔らかく考えないといけないことが医療にも世の中にもいっぱいあると考えています。

1 わかっている病気はどれくらいあるか

 病気の名前を数えたら2万種類を超えるそうです。これを全部覚えている医師はいないと思いますが、覚えていたらどんな人を診てもすぐに診断ができるのでしょうか?そうだと考える人がいるかもしれませんが、お医者さんは「とんでもない!」と答えるでしょう。病気の名前は時代とともにどんどん変化していて、数年で考え方がガラッと変わり、同じ病気でちがう診断名に代わることはまれではありません。かつて太っていることは健康の証でしたが、いまはメタボと呼ばれ病気の仲間入りをしています。むかし、長生きは喜ばしくみんなで祝うものであって、年をとったら病気のデパートみたいに思われることはありませんでした。

 また、心身の不調は誰にでもあるもので、何とかやりくりしながら自分なりの生き方を全うできればまあ良し!と考えるなら、今よりも病院にかかる人はずっと少なくなり、医療費もこれほど増えなかったかもしれません。コレステロールや血管年齢などまったく気にしないで暮らしている人が世界にたくさんいることを考えると、医療の進歩も手放しで喜べない気がします。

 命を救うことから、生活の質を高める医療へ。考え方はすばらしいけれど、医療だけでは生きることの「幸福感」は得られません。医学が進み病名が増えていることがほんとうにみんなの幸せにつながっているのか。難しいけれど気になる問題です。

2 診断が決まれば治療は簡単?!

 「赤」のなかに朱色や桜色ははいるでしょうか?「オレンジ色」は赤?それとも黄色?微妙な色合いであるほど色の判定は難しくなります。同じ赤でも、鉛筆の赤線は消しゴムで消えるかもしれませんが、赤マジックだったら消すことはできません。例えて言うと診断はこんな感じです。はっきりした診断のこともありますが、多くの場合は微妙な色合いで、濃淡も様々です。対処の仕方もちがってきます。同じ診断であっても、薬できっちり直す場合、様子を見るだけですむ場合があります。手術は不必要なことも、必要なこともあります。診たての微妙なちがいで、お医者さんの判断が分かれることもあるでしょう。やればやるほど難しくなるのが診療の現場であり、それを大変だと思うか、だからこそやりがいがあると考えるかで医者としての伸びしろが決まってくるのだと思います。

3 ロボットドクターができたら

 山本周五郎の「赤ひげ」のように、腕は確かで人情味にあふれ、酸いも甘いもかみ分けたロボットドクターができたら?24時間働きづくめで文句を言わず、本人(ロボット)は酒もたばこも〇〇もやらないが、人の弱さには思いを寄せることができるかんぺきなドクターです。こんなドクターだったら、顔が鉄人28号やマジンガーZだったとしてもきっと人気が出るでしょう。検査結果を見れば、瞬時のうちに診断を付け、年寄りや子供にわかりやすく説明する機能も付いています。チェスや将棋で人間を負かすコンピューターが出てきた現在ですが、人工知能の研究は爆発的に加速していますから、さほど遠くない未来にこんなロボットができるかもしれません。人間のドクターが、ロボットができない仕事だけに時間を振り向けて、ゆとりをもって仕事ができたらどんなにいいかと思います。でも人間と全く見分けがつかないアンドロイド・ロボットができたら、人間のお医者さんはいなくなるかもしれませんね。

4 柔らかく考える医療

 講演会や学会に出ると若いころに教わった診断や治療法ががらりと変わっていて驚くことがあります。さすがに自分の専門領域はなんとか追いついていますが、内科や眼科など学生以来勉強していない分野ではギャップは大きく、大学で研究をつづけ新しい診断・治療法を探り当てたお医者さんに敬服します。でも、開業医であることはよかったと思っています。今の時点でコンピューターやロボットの医療ができない理由は大きくわけて二つあります。

 ひとつはまだまだ検査だけではわからない小さな故障があるということ。問診や診察でしか見つけられない問題があり、触診や視診など五感を使った診たてが効果を発揮します。これは最前線の医師の独断場でしょう。

 もうひとつは患者さんの反応がそれそれちがうということ。理論的に正しい治療が必ずしも効くわけではないことを臨床医は知っています。また正しいことを指導されたら、患者さんがすぐに納得し実行するわけではないこと。相談の裏側に思いがけない心配や事情が隠れていること。患者さんの言葉は必ずしも正確ではなくて、言い足りなかったり、ときには嘘が混じることを知っています。はっきりした道筋が見えないところに道をみつけていく。そこがおもしろいところであり、新しい発見の糸口をつかむのもまた臨床医なのです。

 

ねりまインクワイアラー 125 カラオケバトル

 みなさんが一番苦手で、やりたくないことは何ですか?わたしはカラオケです。人前で歌うと考えるとぞっとします。なのに、テレビのカラオケバトルはよく視ます。歌うのが好き!というレベルをはるかに超えて、長時間のきびしいトレーニングを積んだ歌い手たちが、技巧の限りを尽くして競います。民謡、ミュージカルやオペラなど、出身の畑が変われば歌い方もまったくちがうのに、表現力がすごい!これは、のどと声帯のスポーツです。見た目はちがいますが、選手たちは一流のアスリートと言っていいのではないでしょうか。

松ぼっくり通信 2017年 4月号

トレーニングで元気になるこつ

  こども時代、巡回図書館(本を乗せたトラック)が月に一回やってくるのを楽しみにしていました。シャーロックホームズや少年探偵団シリーズを夢中になって読み、本を読みながら電柱にぶつかるほど本好きで、運動は苦手、図体はでかいがおとなしくて少しのろまな少年だったわたしですが、中年からは運動にはまっています。今回はトレーニングのお話です。

トレーニングの三原則

1 過負荷の原則 いつも同じことをしているとからだはどんどん慣れてしまいます。慣れてしまえばトレーニングの効果はなくなるので、今よりもちょっとだけきついことをする。これを積み上げていくと、思いもかけなかいくらい効果が上がるのです。


2 特異性の原則
 何を鍛えたいのか?目的をはっきりすることが大切です。持久力を上げたいのなら、長い時間運動を続けるトレーニングが必要です。瞬発力を上げたいのなら、短時間で素速く動く練習をします。体幹を鍛えたいのなら、見た目は地味でも腹筋・背筋に効く練習を続けます。目的をはっきりさせること。漠然と運動を続けるだけでは、すべてに中途半端で効果を実感できなくなります。 いつも同じことをしているとからだはどんどん慣れてしまいます。慣れてしまえばトレーニングの効果はなくなるので、今よりもちょっとだけきついことをする。これを積み上げていくと、思いもかけなかいくらい効果が上がるのです。

3 可逆性の原則 苦労して技術を磨き、体力を向上させても、そこからなにもしなければどんどん落ちてしまい、下手をすれば全く振り出しに戻ってしまう。患者さんに「むかし取った杵柄は存在しませんよ」と説明していることがらです。

むかしの普通はじゅうぶんきつい

 江戸時代の初期、石神井川は現在のように王子の先で隅田川に流れず、上野の不忍の池に向かって流れていました。文京区の小石川は、そこを流れていた石神井川の別名だったと言われています。当時も練馬は大根の産地で、取れた大根を大八車に山積みに載せて石神井川沿いを進み、浅草の漬物問屋まで1日がかりで運んでいたのだそうです。おおよそ片道20km、往復40kmを1日で往復し、おそらく若い衆が2・3人でやっていたのではないでしょうか。ハイキングが好きな人は、雁坂峠をご存知でしょうか。江戸時代、秩父で生産した蚕玉をいっぱい詰めた竹カゴを担ぎ、村の若い衆は標高2000mの峠を超えて山梨の塩山まで歩いて運び、貴重な現金収入を稼いでいました。崖沿いの道を一歩誤れば急峻な谷に転落しかねません。このようにむかしは、いちいちトレーニングなどと言わずとも「きつい」ことをするのは日常茶飯事でした。今のように楽に暮らせるのはすばらしいことですが、それだけでは体力が落ちてしまいます。

 ではどうすればいいのか。まずはいつもの生活の中で、ときどきちょっときついことをやってみる。この「ちょっときつい」がキーワードです。エレベーターではなく階段を上ってみる。いつもより速いペースで歩く。カートを使わず、かごで買い物をすれば、腕の筋トレになります。日常の中にトレーニングをちょっとだけ取り入れることがコツです。

狙いを定める

 体重を落として、コレステロールの数値を下げたいのか。ウエストを引き締めてカッコ良くなりたいのか。マラソン・登山・テニスができるようになりたいのか。転ばないからだになりたいのか。トレーニングで何を目指すのか?をまずはっきりさせましょう。やせるなら有酸素系の運動を増やし、筋肉を増やしたければ重めのウェイトを使って少ない回数で練習します。スポーツを上手にやりたいなら、スポーツに特化した体づくりをしなければなりません。筋肉は多ければ多いほどいいわけではないし、持久力向上のトレーニングをやればやるほどいいわけではありません。すべてにオッケーのトレーニングはありませんから、狙いを定めて行うことが大事です。

トレーニングは人生そのもの

 スポーツマンでなくてもトレーニングの考え方は応用できます。ピアノを上手に弾きたいのにギターの練習をする人はいないし、憧れの学校に入りたいなら苦手の科目を勉強するはずです。営業の成績を上げるために接客トークを磨いたり、コックさんが新しいメニューを開発したり、みんな目標をはっきり絞ることでやるべきことが見えてきます。上手くできるようになっても練習を怠れば技術は落ちてしまうし、さらに上手くなりたければもっと練習することも必要でしょう。でも、がんばりすぎてからだを壊したら元も子もなくなります。

トレーニングは自分のためにやるものであって、誰かと競争したり、比べあう必要はありません。また、年齢に関係なく誰もができます。あなたのトレーニングはあなただけのもので、目的や結果もほかの人と異なります。自分の出発点からの進み具合だけが重要です。こうして考えると、トレーニングは人生そのものと言っていいかもしれませんね。

ねりまインクワイアラー 124 音声自動翻訳機

 視覚障害のある人や語学の勉強のために文章を読み上げる装置はすでに利用されていて、使ってみるとけっこう便利です。またiPhoneのSiriのように日本語で質問すると日本語で答えてくれる機械もあります。人間と話せる機械があるなら、日本語の意味を汲んで英語を話す機械もできるのでは?と思って調べてみると、Googleなどの海外勢だけでなく日本でも相当研究されています。2020年の東京オリンピックまでに実用化・販売される見通しは高そうです。世界中の人が東京にやって来て、どんな言葉でしゃべっても翻訳機を使えば自由に会話ができる。そうなったらすごいと思いませんか!

松ぼっくり通信 2017年 3月号

わかりにくい考えと向き合う

あたりまえだと思っていたことがちがうと言われた。自分の考えた理屈と全然あわないのでついていけない。聞いたこともないので判断に困る。予想もしない話を聞かされた時、こういう風に感じるのは人間の本性です。直感や経験をねじふせて理論や理性だけで判断することは、私たちの得意分野ではありません。

ではありますが、それではまずい!場合があることをお話しします。

1 「母親たちの救い主」ゼンメルワイスのはなし

  19世紀中ごろのオーストラリア・ウイーンの出来事です。産科医のゼンメルワイスは、同じ病棟で分娩を行った女性のうち産褥熱で亡くなる人の割合が、助産婦の介助に比べ、医師の介助のときに10倍も高くなることに気づきました。当時の医師は別室で素手のまま解剖を行い、特別に手を洗うことなくそのままお産の介助をするという習慣があり、ゼンメルワイスはこれが原因ではないかと考えました。そこで試しに医師がお産の前には必ず石炭酸で手を洗うようにしたところ、産褥熱による死亡率が劇的に下がったのです。産褥熱の原因を医師が手を洗わないからとした発表はセンセーションを引き起こしました。発表の内容は筋道の通ったものだったのですが、医師たちの反発は大きく、ゼンメルワイスは仕事を追われたばかりか肉体的な暴力がもとで命を失いました。

 まだ細菌の発見以前であり、何が産褥熱の原因になったのか完全に説明できなかった点もあげられますが、なによりも医師が患者を殺したことになるという主張がどうしても世間の感情に受け入れられなかったのです。

2 常識は経験則に過ぎない

 これほど劇的ではありませんが、最近では傷の消毒について考え方が大きく変わってきました。わたしが学校を出たころは、傷にはヒビテンやイソジンなどの消毒薬を塗るのが一般的で、医師でこれを疑う人はいませんでした。ところが、近ごろは傷そのものに消毒薬を直接塗ると健常な組織を傷めるので塗らないほうが良いという考えが主流になっています。また抗生物質の使い方も変わってきました。以前はとりあえず感染予防に抗生物質を処方するのがふつうでしたが、今では予防的投与はできるだけ少なくして耐性菌を作らないことが大事だと考えられています。医学の世界だけでなく、世の中のあらゆる分野で昔の常識と今の常識がちがっていることはめずらしくありません。わたしたちがあたりまえと思っていることのかなりの部分は、「みんながそう思っているから、わたしもそう思っている(気になっている)」のです。たいていの場合、それでうまくいき誰にも文句を言われないのですが、環境、気候、経済や科学の進歩など新しい変化により今までの常識が通用しなくなる時があります。それに最初に気づき、声をあげられる人こそほんとうに考えている人です。常識にとらわれず、事実から推論を組み立て、新しい考え方を生み出せること。私たちはできているでしょうか?

3 本能やカンばかりではまずい

 まだ飛行機が発明されて間もないころのことです。四枚羽の複葉機が一般的で、エンジンが非力なため操縦は難しく、墜落も珍しくありませんでした。墜落の一番の理由は離陸直後のエンジンストップで、パイロットはあわてて引き返そうとします。危険を感じたら基地に引き返そうとするのは自然な反応ですが、回旋することでさらに失速し、墜落する事故が後を絶ちませんでした。飛行機の物理学を理解していれば、エンジンが止まった時はそのまま真っ直ぐに滑空して前方の空き地のどこかに不時着するのが一番安全で、パイロットは本能に逆らってそのまま飛び続けなければなりません。人間の本能は役立つことも多いのですが、このように論理的に(つまり理屈っぽく)ふるまわないとマズイ!という場合があります。学校で習ったリクツは実生活に無縁だと思っている人はどこかで損をしている可能性が高いです。 

4 プロを活用する

 スマートフォンやネットを使っている人は多いですが、そのしくみがわかっている人はめったにいないでしょう。それでもふつうに使えているのはいざというときに専門家がいるからです。平安や鎌倉時代なら一人でカバーできる技術は広範囲にわたりますが、情報が爆発的にあふれた現代に本当の専門家になるためには、かなり狭い領域を深ほりしていくことが必要です。専門馬鹿は問題ですが、専門家を尊重することも学ばなければなりません。プロ(専門家)の意見はときにあなたの直感や常識に反することがあります。期待した答えではない可能性もあります。それは深い専門知識があってのことで、ちょっと聞いただけでなぜかはわからないかもしれません。自分の知識だけで専門家の良し悪しを判断するのは慎重にすべきです。わたしも自分の仕事以外はまったくの素人ですから、何かわからないことがあったらネットや本で調べるとしても、最後はきちんとしたプロに相談することが必要だと考えています。

 

ねりまインクワイアラー 123 重力波

 アインシュタインが予言した物理現象の中で最後まで確認できなかったのが重力波です。物と物が引き合う力=重力は物と物の間にある空間のゆがみによって生じます。このゆがみは一種の波のようなもので、空間を伝わっていきますが、今まで観測することができませんでした。近年重力波を検出できたという報告が続いており、ノーベル賞の取沙汰もされています。何の役に立つのかな?今のところ誰にもわかりませんが、無重力装置やタイムマシンの発明につながるかも!と期待しています。

松ぼっくり通信 2017年 2月号

筋肉痛とつきあう

 よくある話ですが、「筋肉痛が原因」と説明されて、「じゃあ、ほっといてもいいんですね?」と聞いてくる患者さんがいます。なかにはもっと深刻な病気があると思って受診したのに、筋肉痛と言われてがっかりする人もいるようです。いいえ、筋肉痛なら治療がいらないということではないし、軽くあしらっているのでもありません。また、なかなか取れない頑固な痛みが筋肉痛の場合もあります。誤解の多い「筋肉痛」の話です。

1 ほっといてもいい筋肉痛とは

運動不足なので久しぶりにハイキングに出かけたら、帰ってから二三日は体のあちこちが痛かった。こんな経験は誰でもあります。からだはふだん使っている状態に合わせて体を作ります。たくさん動いている人にはたくさん動いても大丈夫なように骨や筋を強化していきます。あまり体を動かさない人では、今の暮らしに耐えられるくらいの強さにしかならず、いつも以上の運動をすると筋肉や腱の組織にダメージが生じ、痛みを自覚します。一般的な筋肉痛とは、こういった2・3日で治る軽いダメージのことです。

 さらにきついダメージが残ると、1・2週間筋肉痛が消えないことがあります。これがDOMS(ドムス=遅発性筋痛)で、筋肉にかかる負担が強すぎて筋肉細胞がところどころダメになっている状態です。ダメになった筋肉細胞は壊死しますが、そばにある予備細胞が発達してもっと強い負担にも耐えられる筋肉細胞に変わります。これを続けていくといわゆるアスリート体形になり、ボディビルダーのように極限まで筋肉を増大させることも可能なのです。DOMSも基本的に体の修復システムの一部ですから、うまくいっている限りお医者さんが関わることはありませんが、ときに痛みが残ることがあります。

2 筋肉痛が長引いたとき 

からだの修理が進まなかったり、修理するたびにじゃまが入ったりすると「いつまでも痛みが残る」状態になります。

栄養のアンバランス、睡眠不足や過剰なストレスなど治癒のメカニズムを阻害する理由はたくさんありますが、筋肉の場合、運動方法の過ちが治りを遅らせる大きな理由になります。オーバートレーニング(運動のやり過ぎ)、ミスユース(誤用、フォームの問題や誤ったトレーニング法)やディスユース(使わないと弱くなること)があると、故障した部位がなかなか回復せずいつまでも痛みが続きます。痛みの個所を調べると、筋肉内にひきつれやしこりが残り、引っぱられたり押されると痛むようになります。こういうときにストレッチやマッサージが効果を発揮します。

3 肩こりは筋肉痛?

 ただし、はり・こり・筋肉痛の診断は意外とむずかしいです。例えば肩こりの治療でマッサージを受けたがなかなか良くならないという相談は多いのですが、調べてみるとくびの骨(頸椎)やせなかの骨(胸椎)に故障が見つかることがあります。神経のつながりではり・こり・痛みを感じるが、筋肉そのものは硬くなっていません。くびや背中の治療で症状が取れてくると、患者さんも納得してくれるようです。同じように太ももやふくらはぎに痛みがあって、筋肉を押すと痛むという相談はたくさんありますが、腰のヘルニアや脊柱管狭窄症がほんとうの原因であることもめずらしくありません。ほんとうのこり・筋肉痛なのか、神経痛なのかで治療法はちがってきますから、「こったから、押すと痛むから筋肉のマッサージ!」と決めつけないことです。

4 筋肉痛とつきあう

 はじめにお話ししたように、体を日ごろ動かしていない人が久しぶりに運動することで筋肉痛になるのはあたりまえであって、むしろトレーニングになった!!と思っていいでしょう。若い人・運動を定期的にしている人ならDOMS(遅発性筋痛)のレベルまで追い込むのもありです。でも運動不足や高齢の人は?私の経験をお話ししましょう。生まれて初めてフルマラソンを走った後の1週間、筋肉痛のために階段が登れず、横断歩道を渡り切れず大変困りました。それなりに練習を積んでこうなるのですから、人によっては筋肉痛と疲労で寝たきりになることもあると思います。ちょっとしたはりや痛みを感じるくらいならオーケー、でもやり過ぎには気を付けながら体を動かしていきましょう。

ねりまインクワイアラー 122 マイナースポーツは究極の遊び

 今まで紹介したもの以外にも、世の中に知られていないスポーツはいっぱいあります。どこかの街角で、ごく親しい友達だけでする遊びでも、それなりのルールがあって楽しく参加できるならそれはスポーツです。どれだけ上達してもやっていない人にはそのすごさがわからないし、有名人にもお金持ちにもなりません。体力や反射神経の向上に役立つかもしれないけれど、それはおまけです。きつかったり難しくなくてもスポーツになりますし、ボッチャのように体力より頭脳勝負のものだってあります。ポケモンゴーも、将棋や囲碁も広い意味でスポーツです。

 楽しくて好きなことをみつけてチャレンジしているなら、あなたも(マイナー)スポーツマンというわけです。

松ぼっくり通信 2017年1月号

 「老い」に負けない5箇条

 年の初めにはみなさんに元気を与えられるお話をしたいと思っています。最近は自分でも年かな?と思うことがあるので、ちょっと切実な気持ちで書いてみました。

 

1 受け入れることはあきらめることではない

 20代以降は基本的に老化のプロセスが進行していますが、急に故障がでても自然治癒力がはたらいて「なんとかなる」ことがほとんどです。でも完璧にもどるのではないことも理解しましょう。故障がなくても、からだがなし得る最大のパフォーマンスは落ちていきます。例えば最大心拍数は毎年二拍ずつ下がっていきますし、100メートル走のスピードは年齢が上がるごとに落ちていきます。誰にもこういった老化の影響がでることはさけられません。

しかし、平均的な暮らしをしている人ならば相当な伸びしろが残されているのも事実です。ジョギングを続ければ体は軽くなり、息切れしそうな階段を駆け上れるようになります。ダンスを続けていけばはじめはぎこちなかった動きが滑らかになり、羽が生えたような軽やかな動きができるようになるでしょう。あせらずにストレッチやヨガを続けていたら、だれでもからだは柔らかくなります。バーベルをほとんど持ち上げられない人が地道に続ければ、必ず持ち上げられる日が来ます。何歳からでもその気さえあれば人には伸びしろがあります。あきらめずに続けていく。若い人と同じにはいかないけれど、今の自分ができることをする。老化を理解しながらも、あきらめないで続けていくことです。

2 発想は柔軟に

 野球やテニスをずっと続けてきたが、肩を痛めてサーブや投球がちゃんとできなくなってしまった。ランニングを長年やっていたが、走ると膝が痛むようになった。こういった相談は珍しくありません。こまかい診断は省きますが、一時的な休養、練習内容の調整、動作やフォームのくふう、ストレッチや筋力強化などの補強やクロストレーニング(ほかの運動を取り入れること)など、運動再開に向けてできることはたくさんあります。

 自分が望むようなレベルで練習や競技ができないから、そのスポーツと全くちがうことに挑戦するのも手です。ほかのスポーツに限らず、音楽や絵画などの芸術活動、園芸やボランティア活動に参加するのもありです。まったく料理や洗濯をしなかった人がそれに挑戦してみることも立派です。自分はこうである、こうしなくてはいけないという思い込みにとらわれている人は、いちどそこから離れてみることです。心が自由になると、結果的にからだも楽になり健康にも良い効果が生まれます。 

3 健康番組とあなたの健康は別物

 テレビや雑誌の健康番組は見るとおもしろく、「へーそうなんだ!」と引き込まれます。番組制作のプロはやっぱりすごいですね。でも中身をすぐに自分にあてはめることはやめましょう。あれはあくまでもショー番組です。おもしろい切り口をとらえることと、一人一人の健康に責任を持つことはまったく別の仕事です。同じくネットの内容も慎重に吟味してください。わかりやすい主張がいいとは限りません。宣伝や偏った意見のほうが目立つし数が多いものです。自分は影響を受けやすいと思う人は、テレビの健康番組やネットの記事を見ないほうがいいかもしれません。

4 怒らない

 五千年前のエジプトの碑文に「今の若いものは…」と書いてあったそうです。いつの時代も年寄りは怒りっぽいイメージがあるようです。でも、そんなに怒らなければいけないことってあるのでしょうか?じつは怒っているのは、自分がイライラしているからでは?苦手だったり、自分が理解できないことに直面したり、忙しくて手が回らなくなったりしたときに怒る習慣ができていませんか。怒る前に相手の立場になって考えていますか?私自身も反省するところ大です。感情的に怒ることは脳の回路がショートしたのと同じであり、あなたの脳(そして心)にもよくありません。怒らずに考えることは、脳の機能訓練・リハビリととらえましょう。

5 「幸せ」だけを追い求めない

 脳の中にはエンドルフィンという「幸せホルモン」があって、これがたくさん作られると人は幸せを感じます。体のほかの部分と同じように、活発に働くタイミングと休養するタイミングが交互に訪れることで脳のバランスが保たれています。言い換えれば、いい時と悪い時が交互に訪れるのが正常な状態です。風の中に花の香りを感じたり、いつもよりおいしく料理が出来上がったり、美しい景色に出会ったり、小さな幸せを見逃さないようにしましょう。五感を刺激するために外に出かけましょう。足が疲れるからこそ、行った価値があります。苦労したからこそ、やった価値が生まれます。受け身ではなく、自分から働きかける。人に言われるのではなく、自分で面白いものを見つけていく。「いやだ」「やったことがない」「いまさら」と言わないで、新しいことにチャレンジしていきましょう。