目白ヨシノ治療院

目白ヨシノ治療院は新宿区下落、目白駅から徒歩3分、マニュアルメディシンを用いたマッサージ、手技治療,リハビリの専門治療院です。病院では特に問題のなかったつらい症状、日常生活で困る痛み、肩こりや腰痛、首の痛み、またはよく分からない目の奥の痛みや頭痛など機能障害に関する問題の治療を行っています。

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ブログ

松ぼっくり通信 2016年11月号

実践ウォーキング

ウォーキング(歩行)の効用はむかしから言われていますが、気晴らしとして歩くのか、ダイエットあるいは体力増進のためなのか目的によって歩き方はちがいます。自分にあった歩き方を見つけるためのアドバイスです。

1 ウォーキングはスポーツ?

  楽しみながら体を動かすことができればそれはスポーツです。弓道やアーチェリーのきつさはウォーキングと同程度ですが、スポーツと認知されています。ふつうの歩行(時速4キロ)で運動強度が3メッツ(基礎代謝の3倍)くらい、ソファに腰かけてテレビ鑑賞をしている時が1.5メッツですから、じっとしているときの2倍は動いていることになります。いっぽう、階段を上ると7メッツ、ランニングで9~11メッツぐらいなので、ランニングと比べれば1/3~1/4のきつさです。言い換えると、ランニング30分と同じカロリーを消費するためにはウォーキングで1時間半は歩かなければいけません。のんびりと景色を眺めながら歩いたり、犬と一緒に散歩すれば時速2キロくらい、ランニング30分と同じカロリー消費のためには3時間以上歩かなければいけない計算です。犬といっしょに走っている女性をみかけたことがありますが、あれなら相当な運動量でしょう。歩くスピードが時速8キロを超えるとランニングよりきつくなる(カロリー消費が上回る)ことがわかっています。のんびりとジョギングしている人やゆっくりとした自転車を追い抜くスピードですから、歩くといえどかなり速いといえます。

以上を考えると、しっかりとからだを動かしカロリーを消費したいならランニング、安全に、体に負担をかけずに動きたいならウォーキングが良いと言えるでしょう。

2 知っておきたいこと

 ウォーキングに向く靴があると聞くと、歩くのに向かない靴なんてあるの?と不思議になります。ちょっと昔の田舎では、はだしで歩き回るのは珍しくありませんでした(私も経験があります)。でもそのころの道は草の生えたあぜ道や土の道(集落の道はそれがあたりまえ)だったので、足には優しかったのです。今の道はアスファルト舗装がほとんどですからはだしで歩くには硬すぎます。長く安全に歩くには適度なクッションと体重がうまく分散できるような中敷きや足を保護できる外革が必要です。現代の道路を長い時間歩き続けるためには、スポーツシューズ(ウォーキング・ランニング用)をはくのが現実的と思います。

 ところで歩くとき、自分の歩幅はどれくらいか知っていますか。100メートルを150歩の割合で歩くと一歩は約67センチ(100➗150=0.67)となるように、決められた距離を何歩で歩くか知ることで自分の歩幅を計算することができます。一般には身長の3〜4割の歩幅ですが、後に述べるパワーウォークでは4〜5割まで歩幅が伸びます。むりに歩幅を伸ばそうとすると身体のかなり前方で足が着地することでブレーキがかかって足や膝に無理がかかり、故障しやすくなります。股関節から先は余計な力を抜くようにして、自然な振り出しで足が着地するようにすれば疲れにくくスムーズな足の運びができるはずです。

3 目的別のウォーキング

ダイエット 短時間でできるだけ多くのカロリーを消費するためには楽であるよりも「たくさん汗をかく」ことが必要です。そのためには、手足を大きく動かしてできるだけたくさんの筋肉を使う必要があります。これがパワーウォークと言われるもので、慣れてくると軽いジョギングと同じか少し速いくらいまでスピードが上がります。脂肪の燃焼を促進するために息がきれない程度のペースで、毎日30分以上歩くのがコツです。

体力増進 持久力をつけたいのなら長く歩くことを心がけます。足腰のバネを強くしたいのなら階段や坂道など起伏のあるところを歩きます。上半身の筋力をつけるにはノルディックウォーキングが最適でしょう。両手にスキーストックに似た杖を持ち、上半身の筋力も利用して歩きます。最近では高齢の人が「転ばぬ先の杖」代わりに使うこともあります。以前山道を十数時間かけて歩いたときには両杖の効果を実感しました。山道を歩くトレッキング、楽しみを兼ねてのハイキングも効果的です。

気晴らしとして 雲を眺め、鳥のさえづりを聞き、花を愛でる。いつもの散歩道から少し足を伸ばしたり、電車で降りた先で歩いてみる。美味しいと評判のパン屋さんやお菓子屋さんを目標に歩いてみる。何をするかは人それぞれです。楽しいと感じることが脳を活性化させ、食欲が増し、寝つき良く寝覚めもすっきりさせてくれるでしょう。気が向いたら、3分だけ速歩で歩いてみましょう。これがインターバル速歩と言われるもので、気軽にできるのに筋力・心肺機能の向上が得られる方法です。むずかしく考えず、まずは歩いてみましょう。何をするか、何をしたくなるかは感じるままに、自由にやればいいのです。

松ぼっくり通信 2016年10月号

 あなたのウィークポイントはどこ?

 あたまのてっぺんからつま先まで、すべてかんぺきな人はいません。おなかをこわしやすかったり、かぜをひきやすかったり、ぎっくり腰になりやすかったり人それぞれがウイークポイント(弱点)を持っているものです。弱点を知っていれば、予防できることをやったり早めに薬を飲んだりできます。だからウイークポイントを知っていることは強みにもなるのです。

1 ウイークポイントがある理由

 大きく分けると二つ理由があります。一つめは生まれ持った素質です。わかりやすい例は背の高さです。大ざっぱに言えば背の高い家系の人は背が高くなりやすく、背の低い家系から背の高い子孫は生まれにくいと言えます。では背の高いほうが体質的に優れているかというとそうではなく、背が高いからこそなりやすい病気やけががある一方、背が低いほうが有利な点もいっぱいあります。平均より背が大きい人はやや動きがおそいことが多く、瞬発的な動きを必要とする運動(卓球や体操など)には向きません。身長を生かせるスポーツ(バスケや高跳びなど)には向いています。このように生まれ持った体の素質には必ず利点と弱点があって、長い目(人生そのもの)で見れば何が弱点で利点なのかわからないことは珍しくありません。

 二つめはけがや病気などであとから加わった弱点です。からだの故障が「治った」としても、顕微鏡レベルで体中をくまなく探し回れば、かならずどこかに痕跡が残ります。肺炎が治ったとしても肺組織や胸膜に癒着が残りますし、胃潰瘍が治っても胃壁には瘢痕が残ります。ボクシングなどの格闘技では、繰り返し脳震とうをおこしていると脳の微細な神経組織や血管にダメージが残ることがわかっています。クリニックでよく診ている打ち身や捻挫でも、ほんとうにすっきり治っているかといえばそうではありません。ていねいに調べれば微小なこわばり(癒着)やしこり(瘢痕)は残っているものです。車をこすったり少しへこまして修理工場にもちこめば、板金や塗装できれいに直してもらえるはずですが、新車にもどらないのと同じです。長い人生、まっさらな新車で走り出し、どんなに気を付けて運転し事故一つ起こさなかったとしても、ずっと新車のままでいることはできません。エンジン・タイヤ・サスペンション・電気系統などふつうに使っていても、壊れることがあります。使い方、車固有のくせや自然の損耗があり、どこかで故障してくるのがふつうです。 

2 よくあるケース

 Aさんは17歳のときに腰痛があり、病院で第5腰椎分離症と診断されました。腰椎分離症は疲労骨折の一種で早い時期に治療すればきちんと治るのですが、痛みが出てから長い時間たっており骨はつかないかもしれないと言われました。大学を出て就職するころには腰痛は出なくなっていましたが、デスクワークで残業が続いたり、休みがなかなか取れず疲れがたまっているとまた腰痛が出るようになりました。病院でMRIを撮ったところ椎間板ヘルニアがあり、むかしの分離症と関係があると言われました。その後もときどき腰痛が出ましたが、くすりやマッサージで良くなりました。ところが50歳代になってから、5分以上歩くと下肢全体に痛みが出るようになったため、病院で診察を受けたところ、腰部脊柱管狭窄症の疑いがあるということで、再び検査を受けることになりました。

 腰椎分離症、椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症。長い間にAさんの腰痛の診断名がころころ変わったように思えますが、腰の一か所にウイークポイントがあり、そこが年齢とともにいろいろな故障をおこしているのです。同じように、若いころに膝の半月板を傷め、年齢とともに変形性関節症に変わっていく場合、はじめはくびの椎間板ヘルニアやストレートネックだったが、年齢が上がってから神経根症や脊髄症と診断される場合などもあります。

3 ウイークポイントとのつきあいかた

攻める 幕内力士の千代の富士は右肩を何回も脱臼し、その影響で上腕の筋断裂もおこしました。このままで力士生命にかかわると考えた彼は医師のアドバイスもあり、脱臼が二度と起きないように上半身の筋肉を徹底的に鍛え上げました。その後の活躍は皆さんがご存知の通り、強い横綱として名をはせ相撲協会の理事長まで勤めたのです。こういう「攻める」リハビリは誰にでもできるものではないと思うかもしれませんが、腰痛や肩こりなどではとても良い方法です。ストレッチや筋トレを忍耐強く行い、弱点を補強し、症状を出にくくするのです。

守る 痛いことをひたすら避けて様子を見る。消極的な方法ですが、治る力をうまく引き出せれば有効な方法です。肩の故障のかなりの部分はこのやり方が適しています。こすれたり擦り切れたりして痛む場所をそっとしておけば治る力が働きます。すりきずにばんそうこうを貼るのと同じです。ただし「痛い部分を守る」のであって、全身を守るのではありません。痛い場所を守りつつ、ほかはできるだけ動かすようにしないと全身の体力が落ちてしまいます。

 実際の診療では攻めも守りも必要です。攻守所を変えて柔軟に対処できるかが腕の見せ所で、リハビリやスポーツトレーニングの奥義はそのへんにあるのだと思います。

松ぼっくり通信 2016年9月号

  •  人間はおさかなだった

 小さいころの怪獣好きから恐竜の本に夢中になり、博物館の恐竜骨格に感動しました。すこし大きくなると生き物の進化の本を読むようになって、小さな単細胞の原始生命から地球上のあらゆる生き物が生まれてきたという不思議さに胸をときめかしました。いまでも生物と進化論の話は私のフェイバリット(お気に入り)ですが、進化がわかればお医者さんの仕事もわかります。医療に役立つ進化の話です。

肩はえらぶた、うではむなびれ

 人間と魚の先祖が大昔には同じだったことはたしかなのですが、どんな形をしていたのかはっきりしたことはわかっていません。ですが右図のようにほぼ今の魚に近いかっこうであったようです。えらぶたが外側に大きく張り出して、そこにむなびれがつながっている様子を想像すると、人間の肩~うでにどこか似ているような気がしませんか。じつは長い進化の歴史の中で、えらぶたが肩へ、むなびれが腕へ変化したと考えられています。親から子への変化はきわめてわずかであっても、何億世代も小さな変化が続くとほとんど信じられないくらい形や機能が変わってしまいます。えらはなくなったもののえらぶたは肩となり、水をかいていたむなびれはものを握れる腕に変わっていったのです。

おしりとかかとは遠くて近い

 魚よりもずっとむかしの御先祖のピカイアはミミズのようなナメクジのような姿をしていました(図2)。

Wikipediaより

 人間の先祖もおサルまではしっぽがあり、むかしの尾びれの名残だったのですが、いまは尾骨になっておしりの中にたくしこまれています。

ピカイアやミミズの場合、あたまからしっぽ?までが短いふし(節)に分かれていて、基本的に同じ節をたくさん並べて体ができあがっています。人間のからだははるかに複雑ですが、おどろくことに皮ふ表面の神経配列はこの体節構造のままになっています(図3)。これを見ると肩から手にかけて、腰から足にかけて帯状に線が引かれているのがわかります。肩と手、おしりとつま先はそれぞれ遠く離れていますが、神経の配列は同じグループです。この神経の配列を知っていると神経痛などの診断・治療がわかりやすくなります。

横隔膜は肩の筋肉

おなかと胸の間には横隔膜という筋肉があり、呼吸をするときにだいじな働きをしています。横隔膜は哺乳類にしかなく、鳥や(おそらく)恐竜では代わりに気嚢(きのう)という構造を使って呼吸をしています。横隔膜があるから肺をしっかり動かしてじゅうぶんに酸素を取り込み、長い時間動き続けることができるのです。この横隔膜、肩の筋肉の一部だったという説が有力です。人間のからだでは横隔膜は肩よりずっと下にあるのに、どうしてそうなるのでしょうか?進化の流れで見ると、肺は魚のうきぶくろと同じで、もともとはのどの途中にあるくぼみでした。これが複雑に発達して肺に変化していくときにからだの後ろのほうに移動していったのです。横隔膜も一緒に移動して、とうとうからだの真ん中まで降りていきました。だから、肩と横隔膜の神経は今でもつながっています。肝臓、肺や心臓など横隔膜のそばにある臓器に故障が起きると横隔膜が刺激を受け、肩が痛くなるのはこのためです。

進化が分かれば病気もわかる

 腕が痛いのにどうして五十肩だと言われたのだろう?手や背中がしびれるのにくびが原因なのはどうして?ひざや足首が痛くて病院に行ったのになぜ腰を調べるのだろう?お医者さんの診察はなぞのようで、よくわからないことがあるはずです。わからない理由の一つは体の中のいろいろな臓器や神経の配置・配線図が複雑で、ふつうに考えればとんでもないところでつながっているからです。でも今では配線のかなりの部分はわかっていて、お医者さんのトレーニングでこれを頭にたたきこまれます。後はきちんと診察・検査をして配線のどこに問題があるかを突き止めれば、オーケー!となります。

 そして治療にも役立ちます。腹式呼吸がどうして健康にいいのか、横隔膜がどうして哺乳類で発達したのかを考えればよくわかります。からだの仕組みの「なぜ?」を知ることは、すなわち進化を知ることと同じ。そう言っても言い過ぎではないでしょう。